そろそろバイモが満開になっただろうか。一つの茎にたくさん蕾をつけ、それが下から開いていく。一番上の蕾が開くときが満開の時。
妻女山の駐車場に車を停める。あっという間に葉桜になってしまったけれど、バイモの満開を見たい人が訪れているのか、数台の車が停まっている。稜線をたどるハイキングコースも気持ち良い季節になったから、やってくる人も増えたのだろう。展望台に登ってみると、千曲川の向こうに桃畑が見える。今日は黄砂のせいか霞んでいるのが残念だ。
私たちは粘菌探索コースを、と言ってもただの藪歩きなのだけれど、のんびり歩く。落ち葉が積もった藪の中はまだ茶色が強く、歩くことができる。これから緑が濃くなってくるとおいそれとは藪の中に踏み込めない。
そんな冬の名残りを残す季節は、粘菌にとってもまだ活動しにくいのか、新しい姿を見つけることは難しい。ガサゴソと道無き道の斜面を辿って登っていく。粘菌ではなさそうだが、かわいい小さな菌がぽちぽちと顔を出している。キノコもいる。もう少し経てば粘菌も出てくるのかな。
目の高さに赤く揺れているのはミヤマウグイスカグラ、満開だ。さらに高いところに山桜が白い霞のように広がっている。足元にはクサボケも赤く光っている。シロヤブケマンは歓迎してくれるかのように道の端に続いている。花の姿を見ると春爛漫という感じだ。
花を見、話しながら陣場平まで歩く。バイモが淡いクリーム色の風になって揺れているのが遠くから見える。なんとも言えない淡い透明感のある黄緑色の広がりだ。全ての蕾が開き切ったかのように、丈高く凛としている。
奥の方でこの群生を守っている林さんが、やってきた人に説明しているのが見える。満開のバイモを見にくる人が多いのだろう、今見える人も林さんの説明に耳を傾けているようだ。
うっすらとクリーム色が葉の色と溶け合って広がっている様は、派手ではないけれど心地よい空間となっている。花は皆下向きに俯いたように咲いているが、下から覗き込むと花の内側は編模様になっていて、別名アミガサユリの名が頷ける。たくさんの花の中に時々花びらが多い個体が見つかる。私も9枚の花びらが重なっている花を見つけた。
今日はバイモの群生地に顔を出すというキノコを探すことも目的の一つにしてきたのだが、なかなか見つけられない。林さんと話していた女性たちがやってきて「あ、ここにキノコありますよ」と大きな声。数本のオオズキンカブリタケが見つかった。スッポンタケに似ているが、春に出てくる気の早いキノコだ。
満開のバイモも見た、珍しいキノコも見た、さて、もう少し先へ行ってみよう。アケビの花が揺れている下を通って山道を登っていく。
タチツボスミレらしいスミレがたくさん咲いている。林道と別れて天城(てしろ)山を目指して行くと、大きな木の周りに何頭もの蝶が群がっている。ルリタテハが多いが、他の蝶も、ハナバチのような昆虫もいる。木の周りには独特の良い匂いがしている。この木に集まっているようだ。しばらく見ていたが、蝶は木の下の樹液が出ているあたりにやってきてはまた飛び上がって近くの木の幹で羽を休めている。「よほど美味しいんだね」「みんな集まってきて、休んでいるね」。
私たちもしばらく木の匂いに包まれていたが、天城山目指して登る。山頂に坂山古墳がある天城山は、最後が急登だ。ぐんぐん登って三角点のある山頂に到着。
さらに先へ進むと鞍骨山に至るのだが、今日は黄砂で見晴らしも良くないので、ここから戻ることにした。少し降ったところで軽いランチタイムとしよう。
満開の桜の下を歩いて千曲川が見えるところで腰を下ろす。周囲には山椒の木がとても多い。伸びてきた芽をいただいて、自然のアロマを満喫する。煎餅やクッキーなどの軽食だけれど、気分は最高。のんびりと山の懐で過ごせる時間を心から楽しんだ。