4月1日、地附山公園の開園。午前に用があったので、昼近くなってから出かけた。昨年秋以来の公園駐車場まで車をあげる。登る道から見下ろす長野盆地はもったりとした霞に覆われて視界がほとんどない。
コブシが見頃なのではないかと、旧道を上がり始めたら、管理の西澤さんが作業中だった。少し立ち話の挨拶をして、私たちは上へ向かう。
公園の東端には大きなコブシの木が枝を広げているが、今その枝は純白の花で飾られている。ほのかに甘い匂いが漂っている。コブシを見上げながら公園を横切り山道に入ったが、土曜日もあってか、開園を待っていた人達がたくさん訪れていた。シートを広げてピクニックの子供連れも多く、半年ぶりに賑やかだ。
今日は開園一日目だからか、愛護会の人たちが作業をしている。看板を取り替える横を挨拶して通り過ぎた。3組に分かれて作業しているそうで、どこかにイケさんもいたらしいが、もう帰ったかもしれないねと言われた。
今日は公園ルートに敬意を表して、最もオーソドックスなコースを行くことにした。カエデの新芽が膨らんで赤く色づいている。森がほのかに赤く染まっている感じだ。ダンコウバイは咲き始めの明るい黄色から実りに変わる濃い黄色に変わってきている。
公園のソメイヨシノはまだ蕾だったが、花数の少ない清楚な感じのチョウジザクラの仲間がポツリポツリと開いている。下向きに咲く花は華やかというには静かだが、とても可憐で美しい。
チョウジザクラの変種で日本海側に咲くオクチョウジザクラがあるが、その区別がなかなかできない。数年前から気になっていたが、勉強不足でまだはっきりしないままだった。家に帰って調べようと、写真を撮った。
粘菌も探しながら歩いているのだが、なかなか見つからない。里は桜が開花してすっかり春だが、山の中はまだ冬の名残に浸っているのだろうか。
山頂を踏んで帰ることにした。
翌2日、開園を目指して公園へ向かう。やはり山は朝出かけるのがいい。公園から山道に入っていくところでイケさんに会う。久しぶりの挨拶をして一緒に歩き出す。「最近は粘菌にハマっちゃったよ」と笑い、「どうやって調べてるの?」と真剣な顔。数少ない粘菌の図鑑を買ったことを伝えると自分も買おうと笑う。
木の芽の膨らみを見ながらゆっくり歩いていく。目はキョロキョロ、どこかに粘菌隠れていないかな。そして道の端に積まれている枯れ木の下に、見つけた。ハチノスケホコリの子実体。ハチノスケホコリは秋から冬に多いそうだが、この姿は活動中だね。イケさんはキノコのエキスパートだから菌類の専門語にも詳しい。夫と話が弾んでいる。
さて今度は木の花の様子を見ながら行こう。昨年見そびれたシデザクラ(ザイフリボク)の蕾を、イケさんが指差して教えてくれる。蕾が膨らんでいるのが見える。楽しみだ。
ザイフリボクはまだだけれど、チョウジザクラの仲間がポツリポツリと咲いている。昨日家に帰って、調べてきた。3人で小さな木の周りに頭を寄せ、そっと触ってみたり、花の根元に目を近づけたりしている姿は、よそ目に見ればおかしかっただろう。だが、本人たちは真剣。
でも何本見てもみんな同じに見える。オクチョウジザクラだろうと言いながらも自信がない。しばらく歩いて、ちょっと大きな木に会う。花色が白っぽく、まだあまり開いていない。この木はどこか違うねと3人で木の周りに寄っていく。
「あ、これはチョウジザクラ」。「今までのは何だい」「あれはオクチョウジザクラ、ほら、触ってみて」「ほんとうだ、粘りがある」。
私たちは子どものように、わいわい言いながら花を眺め、柄からの膨らみにさわり、萼に目を凝らした。近くにオクチョウジザクラの木もあったので、比べると分かりやすい。だが、まだまだ不勉強だ。花が語りかけてくれるようにならないとね。
さて、家で勉強してきた成果は・・・。萼筒の膨らみとねばつき、萼の縁の鋸歯、花びらの大きさなどで見分けよう。オクチョウジザクラは花柄が長め、萼筒は膨らみが少ない、ねばつかない、萼には鋸歯がなく毛が少ない、全体に花びらが大きめ。 私たちは一つひとつ調べ、違いを確認できたので大喜び。ゆっくり山頂へ向かった。
山頂で休憩をしてから山を降りよう。帰りはパワーポイントを通る。ハナヤスリが芽吹いている。ツノハシバミの花はそろそろ終わり、ミヤマガマズミ、ニワトコの花芽が膨らみ始めている。
カエデの林の中にイヌシデとアカシデがたくさん混じっているのをイケさんに教えてもらう。木の幹を見るだけで分かるからすごいね。「私たちももっともっと木と仲良くなりたい」と話しながら公園へ戻った。