ババ馬鹿と笑われるのを覚悟で、いくつかの水辺と、日帰りで楽しめる温泉について記しておこう。私と夫の日常では日帰り温泉に出かけることはほぼ考えられない。半月あまり逗留の孫が温泉好きというので、公共交通機関、または自分の足で移動できるところで温泉を楽しんだ。そしてそこには水辺があった。
2月後半にやってきた孫と、電車で行くことができる温泉をいくつか候補に挙げ、どこか一ヶ所行ってこようと計画。温泉外湯巡りというのをしてみたいと言う孫の希望が叶うかどうか、日帰り温泉がいくつかある戸倉上山田温泉へ行ってみることにした。しなの鉄道に乗れば思ったより近い。出かけるのが遅かったので、行きはタクシーを利用した。まだ春休みの混雑には早かったのか、一つ目の日帰り温泉は空いていたので、露天風呂などもゆっくり楽しむことができた。
風呂上がりに冷たい飲み物を飲んで、まだ時間が早いからもう一つ行ってみようと話した。歩いて数分の二つ目の日帰り温泉は賑わっていた。地元の人が集まってくるようで、顔馴染みらしい老人がチケットを渡してさっと入っていく。ロビーでは賑やかな話し声が聞こえている。
二つのお風呂を堪能したので、帰りはのんびり川沿いを歩いて駅まで行くことにする。千曲川にはサギやカモがたくさんいて、川辺も賑やかだ。鳥を見ながら帰った。
長野市内には千曲川や犀川などの大河も流れているうえ、盆地なので、周囲の山から流れ落ちる支流がいくつもある。加えて農業用に縦横に張り巡らされた水路も残っていて、歩いてみると深い堰や取水口、分水口なども見ることができる。孫たちが来ると毎回のように見に行く川の立体交差もある。水の流れには不思議な魅力があって、そばに佇んでいるだけで時間を忘れることもある。そっと水に手をつければ流れ続ける水の無限の力をもらえるような気がする。そんな水の魅力は無意識のうちに感じていることかもしれないが、水辺が好きな小さな子どもは多い。
冬場はまだ雪に覆われることもあって、長野では水辺に立ち入れないところもあるが、春めいてくると裾花川の白い崖を見に出かけることが多い。裾花川沿いには日帰りの温泉施設もあって、以前にも孫と行ったことがある。10日の午後は用があったので、孫と二人で裾花川のほとりを散策した後、別れた。孫は一人温泉に入り、私は用のあるところへ向かうことにした。
雲が多く、風が強いその日は、流れが激しく感じられた。たくさんのカモが見られると思っていたが、カルガモとハクセキレイが一羽ずつ同じ距離を保つように動いているだけだった。もう少し暖かくなるとハヤブサの姿も見られるだろうと話すと、孫は目を凝らして崖の方を見つめていたが、見つけられなかった。
川上に進んでいくと川辺が青く光っている。オオイヌノフグリが一面に咲き広がっている。水鳥はあまり見られなかったけれど、青い絨毯を楽しむようにとても大きな猫が日向ぼっこをしていた。猫が好きな孫が見つけたが、その堂々とした姿にびっくり。大きな猫はゆっくりオオイヌノフグリの坂を登って行った。
3月半ばになって、高校を卒業した孫が二泊三日の予定で我が家にやってきたが、私たちが用で出かける予定の日というタイミング。孫二人は電車で行ける戸倉上山田温泉にもう一度行ってこようと相談して、新幹線に乗る私たちと長野駅で分かれた。二人は一つ目を先日の温泉で過ごし、二つ目はまた違う温泉へ行ってきたそうだ。家に帰ってみんなで囲む夕食の話題は温泉のこと、そして「今日もカモやサギがいたよ」と、賑やかだった。
高校卒業の孫が帰って数日、長逗留した孫も帰る日になった。今回は体調不良で、あまり一緒に遠出ができなかった夫もようやく元気を取り戻したので、最後の日は美味しいものでも食べに行こうと車で飯綱高原から戸隠方面を走った。
正月に家族が行った飯綱高原のレストランに行ってみたのだが、残念ながらお休みだった。霊仙寺山から飯縄山の中腹をぐるりと回って飯綱東高原を走り、大座法師池を過ぎて戸隠で蕎麦を食べる。帰りには雪が溶けてきた大谷地湿原を散策し、まだ氷が張っている大座法師池の水辺まで降りてみる。冷たい水に手を浸して、「ひゃ〜冷たい」と叫ぶ孫の笑顔を目に焼き付けた。