土曜日曜は人が多くなるので、出かけるのは平日にと思っている。そうは言うものの、天気模様を見たり他の用もあったりして、いつも平日に山へ行くというわけにもいかない。日曜日の朝なら道路もさほど混まないだろうと、市内を抜けて旭山まで行ってみることにした。最近手に入れた粘菌のミニ図鑑にはまって、少しでもたくさんの粘菌を見てみたいとワクワクしている夫につられて、私も粘菌探しの山歩きだ。
旭山観音堂までの道は車で一度、歩いて一度、登っている。今度で3度目だ。駐車場に車を停めていると、観音堂の扉が開いているのが見えた。お祭りかな、山登りの私たちが車を停めておいていいかなと、そこにいる人に聞いたら、祭りではなく毎週日曜日はお堂を開けているのだそうだ。お参りしてから歩き始めた。
リンゴ畑に実ってきた赤いリンゴを見ながら林道を進むと、右へ遊歩道の看板が出ている。この看板には文字が重なって見えるからとても読みにくい。相変わらず、何が書いてあるかわからない。
旭山の北斜面の崩れているところを補修しているのか、工事中の立ち入り禁止看板が立っているが、工事は進んでいるのかわからない。工事中の看板を左に見て山道に入る。南側の斜面にはチカラシバやススキの穂が揺れていたが、山道は北側を巻いていく森の中だ。コバノガマズミの赤い実が光っている。アキノキリンソウが黄色い花穂を伸ばしている。
道の両端にはびっしりとセンボンヤリが株を揃え、たくさんの穂がツンツンととんがっている。春の花は小さくて可憐だけれど、秋の花はすっくと伸びているが先端は蕾のままのような閉鎖花、茶色い種を丸く広げる。
時々オトコエシやリュウノウギクの花が見えるが、あまりたくさんはない。ノコンギクか、薄紫の菊の花があちらこちらに咲いているのが嬉しい。
山頂への道は倒木の恐れがあるからと、通行禁止、迂回路への看板が出ている。山頂は山城跡らしい平坦な広場で、ここには人の手が入っている。彼岸花の花が終わって、葉が出始めている。フユノハナワラビがあちらこちらに穂を伸ばしている。
山頂までの森ではあまり大きなキノコが見えなかったが、稜線に出るとカラカサタケがいくつも傘を開いている。独特の模様とすっきりと背の高い姿はかっこいい。ベンチに荷を置いて、山頂周辺をひと回りする。もちろん粘菌探しだ。あんまり成果はない。旭山は乾いている。
一回りしてから東の展望広場に行こう。巨岩が重なる道を少し降っていくと目の前に善光寺平が広がる。この山のもう一つの楽しみは電車が見下ろせること。ただ、今日は少し霞んでいるから、展望は今ひとつみたいだ。
車両センターを見下ろしたり、走ってくる電車を待ったりする夫を残して、私は周辺を散策する。ホコリタケがポコポコと顔を出している姿がかわいい。しかし、他のキノコはあまりないようだ。日当たりが良いところなので、粘菌も隠れているようだ。崩れかけた倒木の皮を剥くとその中に糸を張ったように育っているのがある。
30分ほど展望広場でのんびり過ごして、降ることにした。霞んでいたのがちょっと残念そうな夫は、粘菌だけでも見つけようと倒木を見ると後ろへ回って覗き込んでいる。そのかいあって、変形中の粘菌(変形菌というのかな)をいくつか発見した。色も形もさまざまで、見れば見るほど面白い。
しかし、実は肉眼ではその形がしっかり見えないほどの微小なものが粘菌の大部分なのだとか。
そして、カメラもピント合わせが難しい。ようやくピントがあったかと思ってもシャッターを押す時の微妙なブレが命取り。三脚で固定しないと無理かなぁと、残念そうな夫の呟きだ。
さて帰ろうか。ツル草のしげる斜面を見上げながら林道を歩く。森の木陰にはまだ大きなオヤマボクチが咲いていた。
何種類かの粘菌、変形菌らしきものを見つけたので、帰り道の足取りは軽い。家に帰ってお昼を食べながら、ゆっくり撮ってきた写真を眺めよう。