青空が広がって絶好の行楽日和が数日続いている。私たちは「タノちゃん効果」とニンマリしている。友人のタノちゃんは強力な晴れ男、そのタノちゃんとキミちゃんが須坂のクラフトフェアに出店するためにやってきた。
土曜日、日曜日と二日間、行ってらっしゃ〜いと見送って、日中は山歩きをした。一日目は裏山を歩いてきたが、二日目は須坂まで出かけることにした。お店をのぞいてから、近くの臥竜山を散歩してこよう。もちろん電車に乗って。
「クラフト&アートフェア」は百々川沿いの須坂アートパークで行われている。友人たちが出店するのは3回目か、森の中に広がる気持ち良いところだ。コロナ禍で数年お休みだったから久しぶりだ。
子どもたちが楽しそうに体験コーナーに集まっているのを見ながら、私たちは山へ向かう。百々川を渡ると目の前に臥竜山が見えている。竜ケ池の裏側に当たる南側の登山口から登り始める。まず観音橋から左へ登り、須田城跡に行ってこよう。
ペンギンが好きな孫と一緒に歩いたのはもうずいぶん前になるか。小学校を卒業した春休みにやってきて、しばらく遊んで帰った。3月末の臥竜公園はまだ寒く、弁天島にはマンサクが綺麗に咲いていた。私たちはそれまでにも一度臥竜山に登っていたが、孫と歩くとまた違った視点で楽しめるから面白かった。
今回はクラフト市の開催されている百々川岸から歩いてきたので、臥竜山の南の鞍部、観音橋の下から一気に山に入った。最初に観音堂がある。そこからは急な山道、緩やかな回り道など、自由に選びながら登って須田城跡に着く。鎌倉時代から戦国時代までこの辺りを支配していた須田氏の出城と言われている。標高は臥竜山と並ぶ471mだが、樹木が茂っているので見晴らしはあまり良くない。
祠の屋根だけが置かれたような城跡は、わずかに平らに開かれている。端に置かれたベンチで休憩しよう。日差しは強いが、木の影に入れば涼しい。あちらこちらにツリバナの実が揺れている。紅葉と呼ぶにはまだ早いけれど、微かに淡いトーンに変わりつつある森の木の葉に陽の光が反射して揺れている。
小さな山だけれど、散歩がてらに訪れる人が多いのか、休んでいる間にも数人の男女や子ども連れが登ってきた。登り着くとぐるりと一回りしてまた降っていくのが面白い。
私たちもそろそろ次へ行こうか。以前登ってきた動物園前(城山口)へ降るのはやめて、来た道を戻る。観音橋から先に進んで三等三角点がある臥竜山山頂を目指す。
観音橋の南から登ってきたが、北へ降れば竜ヶ池のほとり、昇竜口という勇ましい名前の登山口に出る。
私たちはまっすぐ登っていく。東に出っ張った松尾台まで行くと、今度は北に向かって登っていく緩やかな稜線だ。稜線には少し曲がった松の大木が見られるが、これは須坂市天然記念物の『根あがり、ねじれ松』らしい。教育委員会の看板にその成因が書いてある。表層の泥岩層が薄く根が深く張れない、表土が浅いので成長が遅い、年間を通して南東の風が吹くなどの理由で根あがりとねじれの現象が起こるようだ。樹齢三百年ほどの松が多いそうだ。
途中に中竜の四阿があり、野鳥の写真ブックが置いてある。森と池がある臥竜公園には水鳥も訪れるし、オオタカなども住むようで、自然色が濃いところだ。後ろに深い山が連なっているということもその理由だろう。
山頂からは北アルプスが見える。戸隠、飯縄、黒姫、妙高などの山々も大きく聳えている。間に広がる善光寺平、千曲川の緑地帯が横に伸びている。田んぼは稲の実りで黄金色に染まり、豊かな里の風景だ。
山の写真を撮っていた夫が「おっ」と言いながらカメラを構える。電車が見えたらしい。戸隠と電車、どうやら上手く撮れたらしい。
さて、降りは斜面につけられた登山道、散策コースにはなっていないけれど、かなり踏み固められた道、通る人も多いのだろう。マルバフジバカマの白い花がたくさん咲いている中をゆっくり降っていく。
降りたところは竜ヶ池のほとり、臥竜山公園の正面口に近い。以前は北口に降りたが、今日は昇竜口に出た。博物館の前に『金箱』という食堂があるので、そこに寄り道をする。団子に、おでんやラーメンなどもあるようだが、今日はソフトクリームを食べよう。須坂ソフトクリームと書いてある。香ばしいチョコの香りを楽しみながら、須坂駅までのんびり歩いた。