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298 ハクウンラン 北軽井沢散歩(群馬県)

2022年8月5日(金)


友人からの電話で、久しぶりに北軽井沢を訪れた。軽井沢と言えば日本有数の別荘地、自然の豊かさと生活の便利さがうまく手を取り合っている雰囲気は、歴史を感じさせる。広い別荘地の間の道を散策しても気持ち良いし、軽井沢植物園はもちろん、雲場池、野鳥の森、鬼押出し、白糸の滝などと、周辺には自然に触れ合えるところも多い。冬にはスキーもできる。などと、あまり知らないから自分が行ったところだけを並べているのだが・・・。

photo:こんな花見つけた:北軽井沢
こんな花見つけた

photo:フタリシズカ咲く:北軽井沢
フタリシズカ咲く1992.6.27

自然が豊かな軽井沢だが、どこか都会の喧騒を引きずっている感じも否めない。だが、山をぐんぐん登って群馬県に入るあたりの北軽井沢は一気に自然色が濃くなる。深い森の草むらに隠れたような小さな小屋が道路からポツリポツリと見えていて、本当に隠れ屋に来たような気がする。


photo:季節は巡り:北軽井沢
季節は巡り

photo:北軽井沢の秋19941029:北軽井沢
北軽井沢の秋 1994.10.29

北軽井沢の友人の家には30年も前から出かけて、4、5人の仲間が春秋の数日を遊んだ。自然の中を散策したり、夜を徹して語り明かしたり、まだみんな若かった頃だ。足を伸ばして湯の丸高原、万座から志賀の方まで出かけたり、江戸時代の浅間山大噴火の悲劇を伝える鎌原観音堂を訪ねたり、わずかな休日をあちらこちらと動き回っていた。

photo:春爛漫19950527:北軽井沢
春爛漫 1995.5.27

その頃住んでいた太平洋岸の自然とはまた違った山の空気、高原の草いきれ、深い森の気配などに浸って、再び仕事に向かう元気をもらっていた。

photo:紅葉と実りと19951014:北軽井沢
紅葉と実りと1995.10.14

photo:トウゴクサバノオ右下19960525:北軽井沢
トウゴクサバノオ右下 1996.5.25

夜っぴて話し込んでも、翌日は森の中を歩いた。春にはエンレイソウやタチカメバソウなどの姿が目を惹き、もっと小さなフデリンドウも一面に咲いていた。ヒトリシズカもフタリシズカもここで見た。

仲間たちの仕事の都合で、北軽井沢へ行くことができたのは、春は5月後半か6月、秋は9月後半か10月だったから、見ることができる花々は同じだった。それでも、その年の気候によって少しずつ違う姿も見ることができるのが楽しかったものだ。

photo:北軽井沢から見る浅間山
北軽井沢から見る浅間山

初めて行った時は上信越自動車道がまだ軽井沢まで伸びていなかったので、関越自動車道の前橋ICから山越えして行った。真っ暗な二度上峠を越えて行く道は、日常から遠くへ運んでいってくれる道のようにも思えた。

北軽井沢から見る浅間山は見慣れた姿と異なる形で煙を吐いていた。その形は毎回同じで、その当たり前さがなんだかホッとさせてくれたものだ。

仲間たちが多忙になるにつれ、北軽井沢への小旅行は遠のいていった。


photo:愛妻の丘
愛妻の丘!? 2014.4.29

私たちが長野へ引っ越すと、友人が北軽井沢からやってくるようになった。そして私たちも時間に追われない北軽井沢行きを楽しむようになった。忙しかった頃より季節に縛られないので、違った季節の北軽井沢の自然に触れることができた。

長野からは菅平を越え、一回降りてからまた鳥居峠を越えていく。群馬県に入ると高原野菜の畑の中の道をひたすら走っていく。

そこに向かったのはふとした気まぐれだった。山道ばかり走ってきたからちょっと違う景色を見てみようと横道に入って行ったら畑の真ん中に広場があった、『愛妻の丘』。このネーミングはなんだ、ここは嬬恋(つまごい)村だからか。ゆったりとしたキャベツ畑の真ん中に広がる空間、浅間山が目の前だ。田代湖の水面が光っている。駐車場は広いけれど車は我が家の愛車だけ。のんびり休んでから北軽井沢へ向かった。こののんびり感が嬉しくて何回かここで時間を過ごしている。

photo:ワチガイソウ:北軽井沢
ワチガイソウ

photo:カタクリ:北軽井沢
カタクリ

photo:ヤマエンゴサク:北軽井沢
ヤマエンゴサク

photo:カキドウシ雨粒が光る:北軽井沢
カキドウシ

春が来た北軽井沢 2014.4.28

近くの田代湖にも寄ってみたことがある。湖畔に行ってみたかったが、道は高いところを回っていて、木々の隙間から水面の揺らめきを見るばかりだった。秋の花が道の脇を彩っていた。

photo:愛妻の丘で20141030
愛妻の丘で 2014.10.30

photo:浅間山と田代湖20141030
浅間山と田代湖 2014.10.30

北軽井沢へのドライブの行き帰りにちょっと寄り道をするのは楽しみだったが、夜は久しぶりの話に花が咲くので、多少寝不足になるからあまり遠出はできない。二度上峠まで足を伸ばしたのは、いつか浅間隠山に登りたいと思ったからだった。昔、夕方に神奈川を出て、前橋ICから暗い山道を走りこの峠を越えた。あれから20年も経っている。真っ暗かった峠には霧がかぶさっていて、久しぶりの峠は真っ白だった。

photo:昔は真っ暗、今日は真っ白20140429:二度上峠
昔は真っ暗、今日は真っ白 2014.4.29

photo:雨粒が光る:北軽井沢
雨粒が光る 2014.9.4

時には雨に降り込められて散歩ができない時もあるが、そういう時は話に花を咲かせるのに忙しい。またある時はテーブルに咲く花を堪能した。友人の甥がレストランのシェフで、その若夫婦がやってきてランチをご馳走になったのだが、その隙のない手早さに料理が苦手な私は目を見張る。そして簡単にできたように見える皿は、驚くほど美味しかった。自然の花だけでなくテーブルに咲く花も見事だった。その後、若夫婦は我が家の近くにイタリアンレストランを開店し、嬉しいことに繁盛しているようだ。

シェフの手料理 2015.9.3


2020年冬、新型コロナウィルス肺炎の感染が日本でも拡大してきた。移動すること、人と会うことが困難になり、気楽に友人に会いに遠出をすることが難しくなった。その後何回かの感染拡大の波を繰り返した今、気をつけながら移動もできそうだという状況だ。

photo:オオマツヨイグサ:北軽井沢
オオマツヨイグサ

photo:クサコアカソ:北軽井沢
クサコアカソ

photo:イヌトウバナ:北軽井沢
イヌトウバナ

photo:ソバナ:北軽井沢
ソバナ

秋めいてきた 2018.8.7


photo:花を探して歩く20180807:北軽井沢
花を探して歩く 2018.8.7

photo:庭の木にリスが20180807:北軽井沢
庭の木にリスが 2018.8.7


友人からの電話で、久しぶりに北軽井沢に向かった。今回は日帰り予定。どの道を通って行こうかと話したが、いつもの菅平高原を越えていくことにした。菅平は夏真っ盛り、大きなシシウドの白、華やかなコオニユリのオレンジ、ヤナギランの濃いピンク、色鮮やかだ。

photo:モミジガサ蕾:北軽井沢
モミジガサ蕾

photo:ヤナギラン、帰りに菅平で
ヤナギラン、帰りに菅平で

「今日はここで途中下車しようか」「菅平まで出ておいで〜と言おうか」などと、たわいのないことを言いながら走る。須坂から上田へ行く国道406は、菅平高原を降りたところで国道144に合流する。私たちはいつもそこから国道144を鳥居峠に向かって再び登り返していた。しかし今回は上田方面に降る国道は通らず、四阿山の中腹を鳥居峠に向かう道を走った。菅平高原線という中腹の道は思ったより走りやすかった。深い森は緑が濃く、木々の葉の隙間からさす日差しは森のお祭りのように眩しく賑やかだ。

photo:鮮やかなフシグロセンノウ:北軽井沢
鮮やかなフシグロセンノウ

朝早めに出てきたので、10時頃には北軽井沢についた。友人の家の庭にはフシグロセンノウ、ソバナ、オトコエシ、アキノキリンソウなどの花が揺れ、もう山は秋なんだと感じる。しばらく話に興じた後、近くの山道を散歩することにした。この季節に親しんできた花にあいさつだ。雨が多かったからかキノコもニョキニョキ生えている。

photo:ハクウンラン:北軽井沢
ハクウンラン

photo:ハクウンラン、こんなに小さい:北軽井沢
ハクウンラン、こんなに小さい

林道は雨にえぐられて深い溝ができている。最近の集中豪雨はこの辺りにもくるようだ。のんびり歩いていてふと道路の矩に目を引かれた。白い花らしいものが隠れるようにのぞいている。近づいてみると、なんと小さい花だろう。真っ白だ。フタバランに似ているね。この小さな花はハクウンラン、初めましてだ。落ち葉に埋もれるようにツンと立っている。

photo:ウバユリ:北軽井沢を散歩
北軽井沢を散歩

新しい花に出会うと心が弾む。しばらく友人の家で寛いでの帰り道、菅平の豊かなお花畑を横目に見ながら走る、私たちの心の中にも小さな花が咲いていた。




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