自粛生活とは言っても、家の中で縮こまっていては却って体調が悪くなりそうだ。しっかりマスクをして、おしゃべりは控え、大きな自然の中をゆっくり歩いてこよう。
気になる山の花はたくさんあるが、土曜日でもあまり混まないところ、そして家から近いところ・・・ということで目指したのは戸隠。
お天気が良くなってくれば鏡池まで足を伸ばしても良いと言いながら、雨具、傘を鞄に詰めている。戻り梅雨という言葉が合いそうな雨模様が続いている。
浅川のループ橋を走り、森林植物園の駐車場に着いたのは8時10分。途中の道路も神社の駐車場も車が多かったけれど、植物園の駐車場は空いている。野鳥の季節ではないのだろうか。いつも賑やかな望遠カメラを持った人たちはいない。花も地味な季節ではある。とはいうものの大きなオニシモツケや綺麗なブルーのエゾアジサイが咲いている。
ヒメザゼンソウはどうなっただろうかと森の中にしゃがんで見ていたら、後ろから声をかけられた。『八十二森のまなびや』の管理の方だ。先日ヒメザゼンソウの場所をお知らせしたら、そこに棒を立ててわかりやすくしたとのこと。でも棒では味気ないと、私たちも知っているガイドの人が笹に変えたと指差す。確かにヒメザゼンソウが咲いていた場所に茶色くなった笹が刺してある。でも、もう花は終わって影もない。また来年のお楽しみだ。
今年は大きなハナビラタケがたくさんあると教えてくれた管理の人に挨拶して、森の奥へ向かう。目的があるようでない森の散策は気ままでいい。土曜日というのに人にもあまり会わない。
雨模様だからか、大きなヤマナメクジがのそっと這っている。10センチ以上あるナメクジは苦手だ。山道を歩いていて傘が食べられているキノコによく出会うが、どうやらヤマナメクジが食べているらしい。
植物観察園には2種類のショウマが満開だ。ようやく見分けられるようになった。夏の花は大型のものが多い。湿原にもメタカラコウやシキンカラマツが綺麗に咲き出してきた。バイケイソウははずれ年に当たったようで、花をつけているものは少ない。針葉樹の下に広がる落葉樹の花はほとんど終わって緑の実を膨らませている。そんな中でノリウツギが花を開き始めているのが目立っている。
森を一回りしてみどりが池に戻ってくると、水鳥が動いている。カイツブリが潜っている近くをカルガモの親子がゆっくり動いている。人が少ない雲の多い森は鳥にとって安全なのかもしれない。
雲が多いので鏡池まで行くのはやめて、一の鳥居を散策してみよう。来る途中で見つけた、ヤナギランを近くで見ようと、中社で車を停めた。駐車場の近くに群落がある。満開だ。かつては山に入れば草原を彩るヤナギランの群落が目立っていたが、最近めっきり見なくなった。多くは鹿の食害によるものらしい。復活できるといいなぁ。
一の鳥居苑地は飯縄山の登山口にも当たるが、雨模様の今日は車が少ない。広い草原の足元にはイブキジャコウソウが咲いている。鼻を近づけてみると香りがする。ジャコウの香りを知らないから、これがそうなのかと話しながら何度か鼻を近づけている。キキョウやオミナエシが早くも咲き出している。秋の花の代表的な存在だ。草の向こうにはユウスゲが儚く立っている。
落ちるようで落ちてこない雨粒を心配しながら歩いているが、森の奥に広場があるので、そこでおにぎりを食べよう。雨になるかもしれないからと、一個ずつ持ってきたおにぎり、やっぱり自然の中で食べるのがいい。
広場の淵には大きな針葉樹が聳えている。あれはなんだろう。ありがたいことに名札がついていた、ウラジロモミだって。秋に高い山へ行くと、紫の大きな球果が目立つ木だ。葉裏を見ると、まさしく白い。
おにぎりやお煎餅を食べてのんびりしたから、森の中を歩こう。イチヤクソウがたくさん咲いている。実になっているものも多い。ベニバナイチヤクソウや、ジンヨウイチヤクソウはもうみんな結実期だ。
散策路の脇にはギボウシがたくさん蕾をつけている。もうしばらくすると満開になるだろう。大きなアズキナシの木の周辺を回ったり、小さな虫に目を止めたり、キノコや粘菌を見つけたりしながらひと回り。
さぁ帰ろうかと車に戻った時は午後1時、この日の雨は夕方からだった。