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四国旅そして眉山 277m(徳島県、香川県、愛媛県)

2020年1月10日(金)〜1月13日(月)

地図・四国周辺広域地図


「四国へ行ってみたいけれど、車で行くには遠いし・・・」、「私も行ったことがないから行ってみたいな・・・」、「大橋もゆっくり渡ってみたいけれど、それは車じゃないとね・・・」。赤ワインをお供に夜の食事をしながら四国が話題になったのは数年前のこと。

「四国くらい僕が連れてってあげますよ」というたのちゃんの一言を、言葉遊びから現実に拾い上げて、私たちとたのちゃんきみちゃんペアーの四国旅が実現することになった。長野と山梨の間でいくつかのやりとりを行った後、年明け早々に私たちは四国へ向けて出発した。


1月10日5時15分、長野の空はまだ暗い。夫と私は3泊分の着替えを車に積んで出発。たのちゃんきみちゃんの待つ家まで2時間半。そこに我が愛車を停め、彼らの車に便乗、8時10分いざ四国へと出発した。

photo・明石海峡、遠かった
明石海峡、遠かった

雪の予報は、ポツリポツリと落ちる夜明け前の雨粒に変わっていたが、明るくなってからは雲が流れ去り、青空が広がった。車窓からは甲斐駒ヶ岳、八ヶ岳の雪をまぶした濃紺のスカイラインが美しい。中央自動車道を南西へ進むと、南アルプスの峰々、中央アルプスも見えてくる。残念ながら西へ進むほどに再び雲が増えてきたので、隠れている山もある。

途中のサービスエリアで、きみちゃんが作ってくれたおにぎりを食べ、車は名神高速道路に入っていく。右には伊吹山が大きく見えてくる。琵琶湖を遠くチラリと眺めながら京都、大阪の賑わいの中を進む。都市エリアになると自動車道路がいくつにも入り組んでいてよくわからない。カーナビを頼りに進んでいく。吹田から海岸に向かい神戸に近づくと六甲の山並みが近い。ポートタワーはビルの林の中に隠れそうになりながら、ユニークな姿が目を惹く。


photo・明石海峡大橋(淡路S.A.にて)
明石海峡大橋 淡路S.A.にて

photo・新町川に満月
満月  

そしてついに明石大橋に到着。神戸淡路鳴門自動車道で、淡路島を縦断するのだが、まずは淡路S.A.で明石海峡の眼福を楽しむ。今日は風もないのか、海は凪いで青く美しい。遠くに紀伊半島も見えると、たのちゃんが教えてくれた。

しばらく楽しんだ後は一気に徳島へ。「ついに四国の地を踏んだぞ〜」と、大袈裟に喜ぶ。この日は徳島市内のホテルに泊まる。午後4時10分、ホテルに到着、まずは部屋で寛ぐ。

photo・おいしい夕食
おいしい夕食

一息ついた後は、近隣のレストランを探して散策。ホテルのすぐ脇は海に注ぐ川、吉野川と並行して流れる細い川だが、ヨットがたくさん係留してある。その岸辺をゆっくり歩く。うっすらと暗くなり始めた空に月が大きく丸い。ホテルでもらった市内の案内を見ながら15分ほど歩き、一軒の料理店に入った。個室で落ち着いている。赤ワインで乾杯!でも、一番運転してきたたのちゃんはお酒が飲めないから・・・美味しいものをいっぱい食べてもらおう。

ここのお料理はどれも丁寧に料理されているのが嬉しいお皿だった。食後は酔い心地で、満月の下をゆうらりと歩いてホテルに戻った。


翌日は今回の四国旅のハイライト、阿波人形浄瑠璃を観にいく予定。だが、その前に一箇所くらいは高いところに行きたいという私のわがままで、眉山ロープウェイを訪ねることになった。サルと並び称されるほど『高いところが好き』という訳でもない(と、本人は思っている)が、3泊もの長い旅、一箇所くらいは山と名のつくところを踏んでみたいというほどの山好きは自認している。

photo・眉山、冬の花
眉山、冬の花

でも、全行程を眺めると時間のゆとりがない。たった一箇所、眉山が可能範囲にあった。足を痛めているきみちゃんには山は無理と思うが、ロープウェイなら大丈夫だろうとの名案・・・だったはず。

ところが、山麓駅の駐車場に車を入れようとすると、『ロープウェイ運休』の貼り紙が。係のおじさんが出てきて点検のため3月まで運休と教えてくれる。でも「車で上がれるよ」と、その道を教えてくれた。

急遽たのちゃんの運転で山道を登る。立派な道は市民に親しまれているようで、ランニングの人、散策の人、犬の散歩の人などに出会った。猫ちゃんの見回りらしき姿にも会った。

山頂は広く、一番端の駐車場に車を停めたら、散策路は結構長かった。ロープウェイの山頂駅の方までアップダウンをゆっくり歩く。ツワブキが一面に植えられていて、綿毛が集まっているのが可愛らしいが、日向の斜面に行くとまだ花が咲いていた。散策路の脇にはツバキやアシビなどの常緑樹が枝を広げ、その向こうにユッカが大きく白い花穂を掲げている様も暖地の風景という感じがする。大きな木を見つけると、たのちゃんのヤンチャ虫が騒ぎ出す。木に登ろうとするのを、相変わらずきみちゃんが「危ないよ」と引きとめにかかる。さて、高いところが好きなのは誰?

photo・木登り
高いところが好きなのは?

photo・山頂からの眺め
山頂からの眺め

photo・眉山山頂
眉山山頂

山頂からの眺めは生憎わずかに霞がかっているが、県庁の大きなビルの向こうに、泊まったホテルを見つけたり、吉野川にかかる橋を数えたり、淡路島や紀伊水道に浮かぶ島陰を眺めたり・・・思いがけず楽しめた。

photo・光触媒作用パネル
光触媒作用パネル

山頂には三角点もあり、迷わずタッチ。周囲に大きく建てられた白いパネルがあり、なんだろうと近寄ると、『太陽の光を利用して空気をきれいにしています』と書かれた貼り紙があり、見かけは味気ないけれど、心意気が嬉しい。『TiO2の光触媒作用』というのだそうだ。寡聞にして初めて聞くが、自然を大切にしようという働きがいろいろなところで動いていることを感じる。白いパネルがもう少し味わいあるデザインにならないものか・・・という思いは残ったけれど。


ロープウェイには乗れなかったけれど、山頂の眺めを楽しんだので、いよいよ人形浄瑠璃を観に行くことにする。阿波十郎兵衛屋敷では毎日2回人形浄瑠璃を演じているけれど、土日祝日だけ太夫の語りと三味線が実演なのだそうだ。平日は録音に合わせての人形遣いになるらしい。せっかくなら、生の語りと三味線で観たいと、今回の休日の旅となった。

photo・阿波十郎兵衛屋敷
阿波十郎兵衛屋敷

11時からの開演に合わせて少し早めに到着。サザンカの生垣に飾られた木造の建物は、人形浄瑠璃『傾城阿波の鳴門』のモデルとなった庄屋、板東十郎兵衛の屋敷跡なのだそうだ。

まず席に案内され、人形浄瑠璃についての短い映像が流された。その後は展示物の紹介。何人かの係員がいて、ていねいに説明してくれる。普段あまり物知り顔に説明されるのを嫌うのだが、ゆっくりと素朴な口調で説明されるので、なんとなく聞いてしまう。それに展示室がこじんまりとして見渡せるのもいい感じだ。

photo・人形と
人形と

説明を聞いた後、人形を持たせてもらった。持ったのは小さい方の人形ということで、3kgほどの重さというが、頭につながる背の棒を持って、目を開けたり閉じたりの操作をし、もう一方の手で、人形の右手を操作しながら動かしているとずいぶん重く感じる。人形の左手は別の人形遣いが操作するそうだ。一人の人形に3人の人形遣いがついて、ようやく人形は生き生きと動き出す。

説明を聞くうちに時間になったので、私たちは席についた。幕が上がると、語りの太夫、三味線奏者も席につき静かに始まった。驚いたことに語りの太夫はまだ幼い声の少女だった。始め少し声が浮いていたが、語るにつれ次第に気持ちがついてきたのか、なかなか感情のこもった渋い語り口だった。

photo・阿波人形浄瑠璃
阿波人形浄瑠璃

後で聞くと、語りの少女は9歳とのこと。大人も一緒の太夫の大会で準優勝にもなった名人だという紹介だった。しかし、やはりまだ声が幼く声量もないので、これからが楽しみというところだろうか。感情を込めた語り口は聞く者の心をとらえる術を持っていると感じた。

最後に人形や演者と一緒に写真を撮って、私たちは屋敷を後にした。


次に向かうのは愛媛の道後温泉。しかしその前にもう一つみんなの頭に浮かぶ映像がある。四国といえばうどん。宇高連絡船の中で食べた讃岐うどんの美味しさを忘れられないと、食べたことがある私とたのちゃんが何度も話したので、後の二人はとても楽しみにしていた。徳島から愛媛へ行く道中で、香川に立ち寄り讃岐うどんを食べようと、期待が膨らむ。

思ったより時間にゆとりがあったので、どこか観光もして行こうかと欲張ったのがいけなかった。走る車の中であ〜だこ〜だと無い知恵を出し合いながら、丸亀城の石垣をみようかと話が落ち着いたのは、丸亀ならうどんも美味しいものが食べられるだろうというみんなの思いもあったから。

photo・讃岐うどん
讃岐うどん

ところが高速道路を降りて、一般道を走ると、見つけるうどん屋さんは傾きそうな建物や、板戸がかしいで閉まっている建物など、何軒も『手打ちうどん』の看板は出ているものの、廃業してしまったお店ばかり。たのちゃんが工事現場のおじさんに聞いてたどりついたお店は、地元のチェーン店らしかった。透き通ったつゆに太い麺はまさしく讃岐うどんだけれど・・・食後にわずか化学調味料の味が舌に残るのが残念だった。最近関東でも流行っているという、讃岐うどんのチェーン店に行ったことがないので、味の違いはわからないけれど・・・。私はトッピングしたワカメが美味しかったのでなんとなく嬉しく、しっかりいただいた。

有名な丸亀城の高い石垣は下から眺め、高速道路に乗った。


高松自動車道から松山自動車道に入り、一気に松山まで走る。めざす道後温泉のホテルに着いたのは4時20分、まだ明るかった。

photo・工事中の道後温泉本館
工事中の道後温泉本館

道後温泉本館は修復工事中なので、一度は今回の旅の目的地から外してみたのだが、脇から入場してお風呂には入ることができるという情報だったので、行くことにしたのだ。今回の旅は3泊4日、その間に一回は温泉に入るのもいいだろうと話していたが、四国の温泉といえばやはり道後ということになった。


話は遡るが、四国旅行が具体的になった時、どのようなコースを組むかで話が盛り上がった。行ってみたいところをそれぞれが言ってみる。その場所を並べれば、小豆島、剣山(言ったのは私です)、大歩危小歩危、四万十川、土佐造りのお店、カルスト台地、しまなみ海道などなど・・・知っているところをみんな並べる感じと言おうか。

photo・道後温泉
道後温泉

関東に住む者のイメージは『四国は四つしか県がない小さい島』なのだけれど、実はとても広い。加えて、山梨から車で行くには往復の時間も大きい。小豆島、四万十川は最後まで魅力的に輝いていたけれど、行程を組むにあたって、難しい・・・と消えていった。

淡路島から入り、四国北部を横断し、しまなみ海道を通って山陽地方を戻るコースは、ただ走るだけでも長い。帰ってきてみれば、よく行ったと褒めてやりたくなる道程だ。


話を元に戻して、道後温泉本館はホテルからは目の前、3分も歩けば入り口だ。私たちは浴衣に着替えてホテルから借りた湯桶ならぬ湯篭を持って出かけた。行ってみてびっくり、行列ができていた。おりから風が強くなってきて、立っていると寒い。こういう時私たちの意思疎通は早い。こんな寒いところで待っていて風邪をひいてもバカらしい、ホテルのお風呂に入りましょ。

photo・道後温泉での夕食

引き返す途中にホテルの別館があり、11階の露天風呂があるということを思い出し、そこに入ってくることにした。

お風呂に入って暖まれば後はホテルに戻ってご飯を食べ、休むだけ。ホテルの食事はタイのかぶと煮、タコのお造りなど、地元の美味しいものが並び、私たちはさらに地ビールを足して、贅沢な夕食となった。


翌朝はもう四国にお別れとなる。しまなみ海道を走って広島県へ、さらに岡山県を通り抜け、最後の一泊は兵庫県に宿をとった。

温泉は朝6時から入ることができる。本館も朝は空いているかもしれないが、外の冷たい風にあたるのは避けて、ホテル内のお風呂を楽しんだ。朝風呂なんて一体何年ぶりだろう・・・。いや、何十年ぶりかもしれない。

photo・道後温泉駅
道後温泉駅

朝ごはんを食べた後、道後の街を歩いてみた。昨日松山に到着した時走っているのを見た、市電の駅が近くにあるからそこまで行ってみようと、ブラブラ歩き。いいよなぁ、ぶらぶらのんびり歩くのは。

この朝の散歩はきみちゃん達と別行動、でもすぐに「ヤァ」と出会う。それはそう、一本道のような商店街だから。朝の見回りの猫ちゃんにも挨拶し、道後温泉駅で古い機関車を見、お遍路さんの白装束に目を引かれ・・・いっときを楽しんだ。

photo・道後温泉駅
道後温泉駅にて

ホテルを出発した後は、松山市内に戻る。伊丹十三(1933-1997 俳優,映画監督)記念館があると教えてくれたのはきみちゃんで、そこを訪ねてみることにした。建物はおしゃれな黒い平屋建て、庭園には十三さんの愛車だっただろう黒い車が、寂しそうにテンと座っていた。私たちは記念館で彼の早い死を惜しんだり、多彩な才能に目を奪われたりして、午前中を過ごした。

photo・十三饅頭も買った
十三饅頭も買った


そしてついに帰り道に。しまなみ海道へ入る前に、いや四国の土地を離れる前にと言おうか、この季節やっぱりミカンを手に入れてから帰ろうと国道を走った。道の駅を目指せ、と。すると、松山の郊外にはたくさん『手打ちうどん』のお店があるではないか。どうして昨日は見つからなかったんだろう。

photo・みかんがいっぱい
みかんがいっぱい

あ、またあったと窓外のうどん屋さんを指差しながら、車は国道196号を北へ登る。左には瀬戸内海が見えている。この辺りは釣島海峡というのだろうか、遠くに島影が重なって見える。そして斎灘が開けるあたりに道の駅があった。ビニール袋にざっくり入ったミカンが並んでいる。

みかんをたくさん買って、しまなみ海道に入る。橋を渡る頃は生憎の曇り空、青く澄んだ海と空をイメージしていたけれど、灰色がかった風景だ。

photo・しまなみ海道を走る
しまなみ海道を走る

そして、走ってみなければわからないけれど、島と島を結んだ西瀬戸自動車道、別名しまなみ海道は思ったより山の中を走っていた。大小幾つもの橋を渡るのだから、もちろん海の景色も開けるのだが、島の中は森の間を縫う道が多かった。

ちょうど中間あたりの瀬戸田P.A.で停車、お土産売り場を眺めたり、渡ってきた多々羅大橋を眺めたりした。

photo・瀬戸田P.A.にて
瀬戸田P.A.にて

photo・お昼はタコ飯と団子
お昼はタコ飯と団子


ついに四国とサヨナラ。自動車道は広島県に入って山陽道につながった。見繕ってきたお団子やタコ飯を食べながらひた走り、夕方5時に兵庫県小野市のホテルに到着した。

翌日の帰路を考えて小野市にホテルを決めたのだが、今回ホテルを探すまでこの辺りの事情については全く知らなかった。ホテルの周辺案内を見ると、小野アルプスというのがあるらしい。低いけれど、岩山もあるようで、そそられる。

ホテルの近くの居酒屋風レストランでこの旅最後の乾杯をして、それぞれの部屋に落ち着いた。館内には大きなお風呂があったので、そこで気持ち良い汗を流して休むことにした。


photo・お昼はタコ飯と団子
ホテルから見る朝焼け

翌朝、東の窓に日がのぼる。空が赤く染まっている。ホテルの窓から赤く染まった空を眺め、「今日は帰るんだね」と呟く。山陽自動車道から新名神、そして中央道を山梨に向かう。雨が降ったところもあったけれど、途中からは青空が広がった。きみちゃんたちの家に着いたのは午後3時。別れの言葉もそこそこに私たちは長野に向かった。

車の中で旅の話が弾む。いざという時のために夫は免許証を懐に忍ばせていたが、結局きみちゃんとたのちゃんの運転に頼った旅だった。

遥か昔、私ときみちゃんが出会った頃、きみちゃんがこう言った。「あなたは免許取らなくていいわよ。行きたいところには私が連れてってあげるから」。その頃小さかった子どもたちと、母子の食事会などをしたけれど、いつも私と子ども達は誰かの車に便乗させてもらっていた。

自慢じゃないけれど、ボーッとしていてバスや電車を乗り過ごすことは日常茶飯事、歩いていて柱にぶつかりそうになり、自転車に乗っていても段差に気づかず大ジャンプをしてしまう私の大ボケぶりを知っていたわけでもないと思うが、危なっかしいとは思っていたのだろうか。

今、「どうしてあんなことを言ったんだろうねぇ」と笑うきみちゃんだが、こうして本当に行きたいところに連れて行ってもらった。いくら感謝しても足りないかもしれない。




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