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アルプスに手が届く? 鷹狩山 1164m(長野県)

2019年11月5日(火曜日)

地図・鷹狩山
鷹狩山広域図と登山道概略図


その日は晴れていた。広がる青空の下、雄大なアルプスの展望を求めて出発した。

関東から長野の近くにやってきた友人のところを訪ねるか、友人に足を伸ばして来てもらうか・・・と、おぼろげな予定を立てていた連休周辺だったが、友人のところと我が家を結ぶ山の中の道が、台風のため数カ所通行止めになってしまった。

再会は来春と約して今回はキャンセルとした。


ぽっかり空いた晴天、しかし時間は少し遅い。私たちお得意の楽ちんコースを選ぶ。大町山岳博物館の裏にある鷹狩山はアルプスの大展望が得られると聞いているので、そこを目指すことにした。


長野から白馬方面へは何度も訪れているが、長野から大町に行ったことはまだない。R19から白馬長野道路に入り、ぽかぽかランド美麻を過ぎるとすぐ左折、大町街道に入る。

急な登りはなく、走りやすい道が大町市街地まで続く。道の両側の山は秋の色に染まっている。山岳博物館へは市街地からひと登りで到着。ここまで家から1時間10分。思ったより近い。山岳博物館は普段は月曜が休館。今日は火曜日だが、残念ながら祝日の翌火曜日ということで休館。

駐車場に車を停めて歩き始めるが、車道を歩き始めてしまったので、山道を見つけられない。ジグザグと秋草の中の道を歩く。幸い車がほとんど来ないので楽ちんではある。かなり登ってようやく山道らしい脇道を見つける。

ここ、鷹狩山は大町市民の憩いの山で、実は山頂まで車で登ることができるそうだ。私たちはこの山を紹介した資料を持っていたが、出がけに私が机の上に置いて忘れてきてしまった。頼りは道路マップのみ。

photo・落ち葉が光る森
落ち葉が光る森

「あの資料を持ってくれば山道に入れたのかもしれないね〜」と、話しながら歩いた。

後の話だけれど、家に帰ってから見たその資料にも細かい地図は載っていなかった。「これを持っていっても同じ道を歩いちゃったと思うよ」と夫が慰めてくれた。


さて、山道に入ると元気になる。木々の紅葉は少し遅かっただろうか、落葉が多い。道に差し込む光に反射して、積もった落ち葉が光っている。

しっとりと足になじむ登山道はときおり林道に飛び出すが、横切ると再び森の中を登る道がある。しばらく登ると、山頂の一角なのか『学びの森』への矢印が立っている。「遊びの森なら行くけど、学びはいいや・・・」と、不謹慎に呟く夫と、植物園の中の山頂への近道をいく。

photo・マツムシソウ
マツムシソウ

ふと足元にきれいな薄紫を見つけて拾う。何の花びらだろう・・・。「あ、これだよ」と、先を歩く夫が見つけて言う。そこには最後のひとひらを残すマツムシソウの花穂が揺れている。薄紫の一枚の花びらは、今朝の露とともに落ちたのだろうか。まだ真新しく可憐だ。


山頂は広場になっていた。森の中には誰もいなかったのに、山頂広場には歓談している人たちがいる。「あ、ランチがあるよ」と、嬉しそうに叫んだ夫だが、平日だからか、『エコーハウス』というレストランは閉じている。

photo・爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳
爺ガヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳

photo・目の前に大きな蓮華岳
目の前に大きな蓮華岳

大町市街は眼下に広がり、その向こうはそびえ立つ北アルプスの岩壁。大きく、手が届きそうだ。

北は白馬から鹿島槍、蓮華を越えて大天井、常念と、一直線に連なっている。遠くは南アルプスの峰々も見えているが、太陽が昇って南の山々は白く霞んできた。燕と大天井の間のスカイラインに小さく尖った三角が飛び出している。あれは槍だね、尖っている!

山頂には4階建ての展望塔が立つ。その向こうに駐車場があり、憩う人々は車で来ているらしい。大きな建物も駐車場も少し興ざめだけれど、足が弱くなった人もこの大展望を楽しめるのはいいかもしれない。周囲の自然に配慮していつまでもこの景観を楽しめる場所にしておいて欲しい。


さて、我が家にやってきた友人がアルバムを見て「うわ〜、恥ずかしい」と叫んだ写真をここで撮った。どんな写真かと言うと、こんな写真です。

photo・山頂・恋人の聖地のモニメント
恋人の聖地

この山頂は『恋人の聖地』と呼ばれるらしく、ハートのモニュメントが立っている。どうしてここが恋人の聖地なのか、調べていないが、食事をした広場の横に網が建ててあったらしい。私は気がつかなかったけれど、夫が見つけた。ヨーロッパなどで橋の欄干にカラフルな錠が取り付けてあるのを見たが、あの仕組みらしい。でも待てよ、橋の錠は鍵を川に投げて永遠の愛を願うらしいが、ここの鍵はどうするのだろう?

まぁ、いいか。私たちは鍵を持ってきたわけではない。何とか若者の足をこの場へ向けようという努力が感じられる。


自然そのままで美しければ、その自然を大切にする人たちがそこを守ってくれるかと言うとそうはいかない。そこに暮らす人たちには生活がある。守りながら経済的にも潤って欲しいというのは当たり前の考えだけれど、難しい。人が訪れて、「いいね」と言って、つなげていかなければ。そしてそこにお金も落とさなければ・・・。私たちのようにたとえ僅かでもと思うのだけれど、あまり経済効果は期待できない山歩きをしているよなぁ〜。

photo・北アルプスをバックにお昼
北アルプスをバックにお昼

と言うことで、恋人の聖地で写真を撮ってきた。恥ずかしくはないけれど、あまり宣伝効果はないなぁ、残念ながら。この雄大なアルプスの展望を前にして、小さな工夫はいらないような気がする。

4階の展望塔の上には望遠鏡があり、槍の山頂をしっかり確認した。東側には長野市の聖山もきれいに見えていた。


photo・展望塔から聖山方面
展望塔から聖山方面

たっぷりの太陽を浴びながらお昼を食べ、私たちは山道を下ることにした。『たかがり小径』の看板を目印に、帰りは森の中だけを歩いて博物館に着いた。森の中は縦横に道が開かれ、よく手入れされているようだ。着いてみれば、そこは博物館のちょっと下になる。取り付きは林道になっているが、車の通行禁止という柵が置いてあった。「ここはわからなかったね」と話しながら、車に向かった。




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