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ノロシ山 844m、舞鶴山(まいづるやま) 660m(長野県)

2018年12月13日(木)


長野市善光寺平は千曲川と犀川が合流する肥沃な土地だったのだろう。その豊かな土地を争って越後の上杉軍と、甲州の武田軍が何度も戦いを繰り返した『川中島の合戦』は歴史的に有名だが、その川中島から松代方面を見るときれいな三角錐の山が見える。その山はノロシ山という名のとおり、武田軍が狼煙を上げた山なのだそうだ。その情報は2時間で約150キロ離れた甲州まで届いたそうだから、高速道路を飛ばすより早い!ことに驚く。


白鳥神社の広い参道

12月に入り何回か雪の予報は繰り返されたが、ちらつく程度、南の方はまだ雪もないだろうと、ノロシ山を歩いてくることにした。

朝の通勤時間帯を避け、少し遅めに家を出る。おにぎりを持って、のんびり歩いてこようと9時半出発。松代には歴史的な建物も多いが、中心地から離れ、山に向かう道に入って行く。細い道を行くと白鳥(しろとり)神社の鳥居にぶつかる。松代藩主は真田氏で、その初代藩主が390年ほど前に建立した由緒ある神社らしい。鳥居をくぐると今は土に埋もれているが石の太鼓橋が残っている。その向こうには広い参道が急な傾斜でまっすぐ登っているが、入り口にはイノシシよけか、柵がある。その扉を開けて参道を登って行く。ちょうどまっすぐ前に太陽があり、木々の梢が虹色に輝き、一面に積もった落ち葉が無数の鏡のように光っている。

白鳥(しろとり)神社と神馬(じんめ)

10分あまり登ると真っ赤な鳥居の白鳥神社に着く。石の階段や灯籠に緑色の苔が映える。今日の無事を願って礼拝し、脇の神厩(しんきゅう)と書いてある小屋をのぞいてみる。ここには木彫りの神馬(じんめ)が安置されている。ケヤキの寄木造りの神馬は、鼻がピカピカ光っていた。

神馬は夜な夜な走り下って田畑を荒らして信仰心を目覚めさせたのだそうだけれど、北風とお日様(※イソップ寓話より)の北風みたいだね〜。私はお日様がいいなぁ〜。


小さなため池

とまぁ、寄り道はこのくらいにして、私たちは神社右の『ノロシ山登山口』という案内を見つけて山道に入って行く。森の中をゆったり歩けるくらいの道跡が続いている。一面落ち葉に埋もれているが、しばらくは迷うほどもなく道らしき跡を辿って行く。右下にため池が見えてきた。水は少ないが、空と木の梢を写している。その上にもう一つため池を見る頃から道が消えてしまった。木の幹の間はどこも落ち葉でびっしり、踏み跡は見えないので、道なのかただの空間なのか分からない。けれど、時々木の幹に赤いテープが巻いてあるので、とにかく稜線に出てみることにした。ひと登りすると、そこは舞鶴山に続く小広い尾根。左の方を見ると一つのピークらしいので行ってみる。

ピークを登り切ると、そこは舞鶴山の山頂だった。年配の男性が荷を下ろしていて、ビックリ顔で私たちを見ている。

「そっちにも道があったのかい?自分は何度も登っているけど、こっちからしか登ったことがないよ」

「あら、私たち道がないところを来ちゃったんですかね」

しばらく話をして、今日はここから帰るという男性と分かれてノロシ山を目指す。後で調べたら、私たちが歩いた西尾根は古墳を経由して行く道だったが、ほとんど人が通らないのか、林の中の落ち葉の海という風だった。

さまざまなキノコ、粘菌?


ノロシ山(舞鶴山より)

舞鶴山からノロシ山までの道はしっかり踏まれていて分かりやすい。倒木が多く、倒れた木にはびっしりキノコがついている。夫の楽しみにしている粘菌らしいものも多く、中には緑色の粉(胞子か?)を噴く奇妙な形のものもあって、自然界は面白い。落ち葉もキノコもうっすらと白く雪を載せている。

ノロシ山の一つ手前のピークを左に巻くように道は続いている。ホオノキの落ち葉は白く大きいので、一面に散っていると雪が積もっているように見える。森は落葉樹が多く、クリのイガも落ちているが、とても背の高い針葉樹もそびえている。巻き道の辺りは杉の森で暗い。

なだらかな森の中の道が、この辺りから一気に急になる。きれいな三角錐のノロシ山に近づいたのだ。緑色の岩が顔を出す急坂には何カ所もロープが取り付けてある。落ち葉が積もっていて木の根や岩が見えないので、ロープはありがたい。

ロープのある坂

大きく山塊を左に回るように登ると、稜線に上がる。左右の谷にはアカマツも多いが、ずいぶん倒れている。南西方向に続く尾根道は傾いた太陽の光を真っ向から浴びる。木漏れ日の向こうに三角に飛び出しているのが目指す山頂だろう。

しばらく行くと山頂の肩、山城らしい地形がわかるが、ここから善光寺平が見える。木の間から見おろせば松代の大きな屋敷群が目の下だ。皆神山がどっしりと腰を広げている。その向こうには尼厳山、奇妙山が近い。

左に広がる善光寺平、そして善光寺平の向こうには黒々とした里山の向こうに白くなったアルプスの山並み。戸隠連峰のゴツゴツとした岩の連なりも目の前だ。飯縄山はてっぺんを雲に隠している。


そこからはひと登りで山頂だ。山頂は木々に囲まれているので、あまり見晴らしはよくない。ここで狼煙を上げたのか・・・感慨深いが、風が冷たくて長居はできない。もう一度肩に降りて、ここで昼にしよう。太い木の間から遠く山並みを眺めながら、おにぎりを食べる。

ノロシ山 844m 山頂にて

雲が流れると、見える山が変わってくる。高妻山がりりしく尖った三角を白く染めている。斑尾山も少し霞んでいるが、見えてきた。あっちもこっちもと指差しながらおにぎりを食べる、のんびりタイムはいい。舞鶴山で出会った男性の他に人の気配は全くない。ただ、ときおり下の街から音が流れてくるのが興をそぐが、街に近い山、仕方ないか。

この白い山の展望も、木の葉が落ちる季節だけのお楽しみとは後で知った。確かに葉が茂ると見えなくなりそうだった。

山頂の肩から善光寺平と北アルプス

座ってゆっくりしていたら、さすがに寒くなってきた。標高はそれほど高くないと言っても、気温は低い。指先が冷えてきた。

思ったより素晴らしい展望に満足して、来た道を下る。登りに巻いてきた途中のピークに登ってみたが、木が多くて展望がなく、すぐ引き返した。

舞鶴山からは最短の北尾根を下ったが、あっという間に白鳥神社の赤い鳥居が見えてきてびっくり。神社に「無事行ってきました」と報告して帰路に着いた。




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