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白駒池、白駒湿原、にゅう 2352m(長野県)

2018年6月21日(木)


山梨に住む友人と「白駒池で合流しよう」と話したのは昨年春。いくつか用が重なって実現しなかった。今年の春、佐久から八千穂高原まで中部横断自動車道が開通したのを聞いて行ってみることにした。

八ヶ岳の麓には夫の妹が住んでいる。妹は長野を時々訪問しているが、私たちは訪ねたことが無く、いつかご挨拶に行きたいと思っていた。良いチャンスだ。連絡して、帰りに立ち寄らせてもらうことにした。

写真1濃霧のメルヘン街道
濃霧のメルヘン街道

7時に家を出たが、それでも道路は混み始めていた。雲が多い湿り気のある空気で、空模様が心配だ。時々わずかな雨粒がフロントガラスを濡らす。初めて走る中部横断自動車道を終点の八千穂高原ICまで一気に走る。高速を降りるとそのまま国道299号線、別名メルヘン街道だ。麦草峠に向かってひたすら登る。どんどん霧が濃くなって、前が見えない。幸い車がほとんど走っていないが、ゆるゆると安全運転で登る。

この道は何度も走ったことがあるのだが、ずいぶん前のことなので、キョロキョロしながら進む。何度か通っている八千穂レイクへの道も、すぐ近くに来てゲートが見えてから「あっ、あれだ」と大きな声を出す。懐かしい。湖面に厚い氷が張っている時も、シラカバが芽吹いた頃も、他に人がいない二人だけの世界だった。

写真2白樺が美しい2月の八千穂レイク
白樺が美しい2月の八千穂レイク

写真3人がいっぱい八千穂高原スキー場
人がいっぱい八千穂高原スキー場

さらに進むと八千穂高原スキー場、ここにも数回訪れている。スキー最盛期で、小さなスキー場なのにリフト乗り場に並んで待ったことを思い出す。

写真4静かな白駒池
静かな白駒池

高度が上がると霧が晴れてきた。薄日も射して、どうやら雨粒は落ちてこない様子。白駒池への入り口に広い駐車場があり、ここは有料。車を停めて、白駒池へ歩き出す。観光バスも停まっているので、人が多いかと思ったが、森が深いからか、それほど感じない。

厚く苔むす森の奥には何者かが住んでいるような気がする。映画で話題になった『もののけ姫』などというのはこういう森がぴったりかもしれない。

写真5コケかキノコかシダか
コケかキノコかシダか

10分も歩けば白駒池の明るい水面が左側に見えてくる。池の前の小屋は改装中だったが、中で休んでいる人も見えた。池のほとりにはゴゼンタチバナが白い花を開き、コバイケイソウが蕾をもちあげている。花を見ながら池の前に佇む。

写真6ゴゼンタチバナ
ゴゼンタチバナ

一息ついてから、池の岸辺に続く道を先へ向かう。この道は池を一周できるそうだが、私たちは途中で右へ分かれ、湿原からにゅうへ続く道に入る。昨日降った雨が激しい勢いで流れ、ゴーゴーと大きな音を響かせている。少し進んだところでは水の勢いが強く、木道の上に溢れてしまっている。ゆっくり、滑らないように水の流れる木道を越える。

写真7白駒池周遊から登山道への分岐
白駒池周遊から登山道への分岐

写真8木道を覆う水流
木道を覆う水流

沢山の人が歩いたのだろう、登山道は大きな岩がゴロゴロしていて、土は流されている。所々に太い丸太が敷いてあるが、昨日の雨水は丸太の回りに溜まっているので、川の中を行くようだ。私たちは滑らないように注意して丸太を渡ったり、脇のけもの道のようなところを歩いたりした。白駒池周辺よりも一段と深いどっしりした森がどこまでも続いている。沢山の倒木が倒れたまま苔むしている。倒れた木ばかりではない、森の立木の幹をも緑の苔が飾っている。

写真10苔むす倒木
苔むす倒木

波立てて流れる急流の脇を越えていくと流れは曲がりくねり、緩やかになる。流れが岩肌にぶつかるところにはモクモクと白い泡が湧いている。水に遊ばれるように飛沫を飛ばしながら流れに乗って動いている。この白い泡は水生植物や落ち葉からの分泌、分解物を元にした多糖類によるものだそうだ。汚染ではなく、自然現象なのだ。

写真11渓流の淀みに浮かぶ白い泡
渓流の淀みに浮かぶ白い泡

どこまでも深い森

写真9どこまでも深い森

写真9どこまでも深い森

写真9どこまでも深い森

写真9どこまでも深い森

写真12ごつごつ道を登る
ごつごつ道を登る

しばらく森を進むと湿原になる。白駒池南方の無名湿原かと思っていたが、木道脇に『白駒湿原』と看板が立っていた。オオシラビソ、コメツガなどの針葉樹の古木を見て来た目にシャクナゲの照り葉が気持ち良い。ワタスゲがわずかに穂を揺らし始めているが、最盛期はこれからだろう。

写真13白駒湿原(佐久穂町)
白駒湿原

白駒湿原を越えていく

写真14白駒湿原を越えていく

写真14白駒湿原を越えていく

写真14白駒湿原を越えていく

写真14白駒湿原を越えていく

湿原を抜けると、道はさらに荒れ模様。けれど、オサバグサが白い花を沢山つけていて嬉しくなる。ミツバオウレンも小さいけれど花火のような白い花を苔の上に咲かせている。中には木の幹から芽を出しているものさえある。

写真15オサバグサ
オサバグサ

写真16ミツバオウレンとコケモモ
ミツバオウレンとコケモモ

どこまで行ってもまっすぐ上に伸びた幹が密集している森、けれど目の高さには若木が薄緑の葉を広げている。暗い森の中には苔やシダ以外の植物はあまり見ることができない。

写真17しゃがみ込んで写真を撮る
これは何だろう

『絨毯のような苔』『緑の裾模様』などと、苔むす森がもてはやされるようになっているが、私たちはブナの明るい森の方が好きだな・・・などと言いながら一歩一歩山道を登り始める。それでも面白い苔を見つけると、ついしゃがみ込んで写真を撮っている。

稲子温泉への道を分けると傾斜がきつくなってきて、水は溜まっていない。けれど、岩と木の根の、ごつごつ道は変わらない。道の脇にはコイワカガミの赤い色が増えてきて、足の疲れを癒してくれる。今日見るコイワカガミは葉がとても小さくて可愛い。これはコ(小さい)イワカガミだと、とても分かりやすい。

コイワカガミ

写真17コイワカガミ

写真17コイワカガミ

写真17コイワカガミ

写真17コイワカガミ

道を縁取るコイワカガミのピンクが濃くなってくると、木々の向こうに空が透けて見えるようになってきた。「稜線だね」「近いよ、きっと」と励ましながら登るが、ここからが案外長い。ようやく「にゅう」と書いてある小広い平らなところに出た。後ろから若い男性が追いついてきた。ほとんど人に会わなかったので、なんだか嬉しい。その男性もそんな気分だったのか、話しかけてくる。山頂はもう少し先のようですねと、スマホの画面を見せてくれる。現在の自分の位置が分かるらしい。夫が興味深そうにのぞき込み、少し話してそのお兄さんは先へ行った。

写真19岩場にツガザクラがびっしり
岩場にツガザクラがびっしり

実は今日は夫の体調が芳しくない。最初の木道の辺りで「少し目眩がする」と言っていた。何回か「今日はここまでにしようか」と聞き、「もう少し」ということでやってきた。山頂まであと少しと聞いて元気が出たようだ。

そこから一気ににゅうの山頂直下に着いた。さっき行ったお兄さんが降りてくる。「上で休もうかと思ったのですが、風が強く寒いので木陰にきました」と言う。岩が露出したにゅうの肩は見晴らしが良かった。大きな岩の上が山頂で、そこには三角点があるだけだと言う。「にゅうと書いた山頂看板が無いんですよ」と、おにいさん。親切なお兄さんに二人の写真を撮ってもらった。

写真20にゅうの肩で
にゅうの肩で(後方・天狗岳)

写真21にゅう山頂から肩を見下ろす
にゅう山頂から肩を見下ろす

夫がお兄さんと一緒に山頂の眺めを楽しんでいる間に、私だけ三角点にタッチしてきた。稜線を周回して行くと言うお兄さんと別れ、私たちは来た道を戻る。さっきまでの体調不良感はどこへ行ったのかというように、夫は快調に降りて行く。目眩も無くなったと言う。ホッとして腹ごしらえ、稲子温泉への分岐点で軽い昼食を食べる。

写真22にゅう山頂にて
にゅう山頂にて

写真23にゅう山頂から天狗岳
にゅう山頂から天狗岳

どんどん下って、岩ゴロの道になった時、「足が!」と夫の叫び声。今度は足の指がつったという。今日はどうやら一筋縄では行かない山歩きの日らしい。靴を脱いで少し休み、ゆっくり下る。ようやく白駒池にたどり着いた頃には、妹と約束した時間になっていた。携帯電話の電波が届くようになったので、少し遅くなることを連絡し、安心して駐車場に向かう。

途中のメルヘン街道は霧も晴れ、白樺の林がきれいに見える。登りでは見えなかったナナカマドの白い花が満開だ。

美しい白樺林の中を降る

ようやくたどり着いた妹の家ではコーギーのポワロ君が思いきり飛びついて歓迎してくれた。




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