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電車に乗って葛尾山(かつらおさん) 805m(長野県)

2017年12月10日(日)


平等という言葉が実はとても不平等な現実の中に浮いているけれど、その中で唯一『時』ばかりは真に平等かと思っていたものだ。ところが、歳を重ねるにつれ、その『時』の流れすらも変化するではないか、時計の針の動きが見えるのではないかと思ってしまう。

あっという間に雪の季節がやってきた。

長野から坂城まで、乗ってしまえば20分ほどの鉄道旅をしてきた。目的は五里ヶ峯、上信越自動車道を走っていると、長い、長い五里ヶ峯トンネルをくぐるが、その上にある山だ。夫が調べて「駅から歩いていけるらしい」と言う。

地図:戸倉

写真3しなの鉄道に乗って
しなの鉄道に乗って

写真4寒川さんのポスター発見
寒川さんのポスター発見

鉄道が好きだけれど、里山の登山口はひなびた所が多く、電車の駅からそのまま歩いて行ける所は少ない。今回も青空を見て、洗濯をすませてからの出発だったので、電車で行くには遅いかと迷った。けれど、なかなかないチャンス、冬至前の早い落日に間に合いそうもなければ途中の葛尾山(かつらおさん)までを楽しんでくればいいと、電車旅にした。

写真6旧坂木宿本陣
旧坂木宿本陣

我が家から長野駅まで歩いて40分弱、ちょうど軽井沢行きの快速に間に合うように出かける。3番線ホームにはしなの鉄道の渋くおしゃれな赤色の車両が待っていた。4人がけの席に進行方向を向いて並んで座る。快速なので、走り出せばあっという間に坂城駅に到着だ。改札に向かう跨線橋にはたくさんのポスターが貼ってあったが、なんと以前住んでいた神奈川の『寒川神社』のポスターがあったので驚く。金ぴかだ。

さて、鉄道旅はともかく、山歩きの始まりだ。駅からまっすぐ一本道を坂城神社に向かう。途中、坂木宿の跡を見ながら行く。旧本陣跡も、博物館になっているらしい。宿場町の面影を残すいくつかの建物を通り過ぎると坂城神社に突き当たる。

写真2岩の連なりを見上げる
岩の連なりを見上げる

坂城神社から登っていく

写真5朽ちかけた鳥居
朽ちかけた鳥居

写真5坂城神社
坂城神社

写真5神社前の案内図
神社前の案内図

写真5境内の土俵
境内の土俵

登山口から数分登ると分かれ道、立派な道標が立っていた。まっすぐ行く遊歩道と、右に折れる近道、私たちは右の近道を行くことにする。道は落ち葉で埋もれている。登り始めから尾根で、両側が崖になって落ちている。斜面はアカマツの林。尾根は広いがかなり急な傾斜で、ざれ場のような細かい石の道だから、滑らないように注意が必要。

写真7遊歩道分岐の看板
遊歩道分岐の看板

写真8意外に急斜面
意外に急斜面

写真9きれいな緑のウスタビガの繭
きれいな緑のウスタビガの繭

しばらく登ると、左右の崖には雪が残っている。天気がいいので、尾根の上には雪はほとんど無く、ありがたい。湿っていると、ざれ場に積もった落ち葉はとても滑りやすくなってしまう。周りは茶色一色、とは言っても濃淡が美しい。そして雪の白。空の青。しばらく登ると、とてもきれいな緑が目に入った。ウスタビガの繭だ。山ではよく見かける物だが、これほどきれいな緑色の繭は初めて見た。衣のように茶枯れた葉を巻き付けて枝からぶら下がっている。

淡々と同じ傾斜で50分登ると、山頂に飛び出す。葛尾城跡805mの看板がある。今まで見えなかった北西方面の視界が一気に開けて、真っ白な北アルプスが横たわっている。左には姨捨山(冠着山)が近く、千曲川を中央に長野まで広がる町並みの上にアルプス、そして右奥には手を伸ばせば届きそうな五里ヶ峯。

photo12山頂からの展望
山頂からの展望(北西方面)・クリックで拡大

写真1八方尾根は真っ白
八方尾根は真っ白

山頂の四阿には芳名帳が置いてあり、毎日のように登る人の名前がある。2千回を越えているそうだ。私たちの名前も記入して、四阿の外の木のベンチに腰掛ける。ぽかぽかして気持ちよい。南東方面の足元には、さっき降りた坂城駅が見えている。夫は電車を撮影しようと楽しそうだ。

写真10葛尾山(城跡)山頂で
葛尾山(城跡)山頂で

写真11五里ヶ峯をバックに山頂で着替え
五里ヶ峯をバックに山頂で着替え

五里ヶ峯まで行ってこれそうだったが、ざれ場の坂道に厚く積もった落ち葉の登山道は下りが滑りやすそうなので、無理をせず、ぽかぽかの葛尾山頂をゆっくり楽しむことにした。

汗をかいたシャツを着替えた夫と、並んでベンチに座り、時々走ってくる電車を見おろしながらおにぎりを食べる。至福の時。

遠く蓼科山、奥秩父が見え、近くには上田の山々、そして、盆地の真ん中を流れる千曲川。大きく蛇行して光る千曲川を眺めた昔の旅人は大蛇がいると思ったかもしれない。昔話の世界に飛び込んだような気がする。

写真13千曲川を見下ろす(東南方面)
千曲川を見下ろす(東南方面)

写真14山頂から坂城駅を見下ろす
山頂から坂城駅を見下ろす

写真15落ち葉に埋もれそう
落ち葉に埋もれそう

ずいぶんとのんびりひなたぼっこをして、今度は少し遠回りになる道を下る。朝別れた分岐まで、落ち葉の積もる道をゆっくり楽しんで下った。

坂城神社の広い境内に入ってみると古い土俵があって、このあたりは江戸の力士雷電の里にも近いのだと思い至った。

坂城駅には懐かしい湘南色の電車が展示されていて、周りを子どもたちが駆け回っていた。のどかな風景だ。

写真16雪の残る急な降り
雪の残る急な降り

坂城駅のホームに大きな丸い掛け時計があり、ふと見ると9時台。そんな筈はないと近づくと、この時計、長針も短針もすごい早さでぐるぐる回っているのだ。「次の電車の時間でピタッと止まるのかな?」「まさか、故障しているんだよ」などと話しているうちに、さっさと今の時間も通り過ぎてしまった。これには笑ってしまった。

いくら『時』の過ぎるのが速くなったと言っても、これでは速すぎる!




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