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どこから見てもわかる蓼科山 2530m(長野県)

2001年7月15日(日) 2022.7記 

インフォメーションのイメージ画像 使用した写真の大部分は当時のフィルムカメラで撮ったプリント写真をスキャンしデジタルデータ化したものです。

photo 富士と八ヶ岳と善光寺平2019.9.7撮影:飯綱山から
富士と八ヶ岳と善光寺平 2019.9.7

晴れた日にちょっと高い山に登ると、展望を楽しむことができる。あまりたくさんの山を知らない私たちだけれど、山並みに囲まれた山頂にのんびり座って、おにぎりを頬張りながらの山座同定は魅力的だ。長野の山から見えるのは北アルプス、八ヶ岳、浅間連山、菅平、志賀などの山々。これは自分がわかる山を上げている。鹿島槍ヶ岳、槍ヶ岳などの独特な山容はまず目を惹く。そしてどっしりと広がる八ヶ岳連峰、その北の端っこにぽっかりと飛び出した蓼科山。なんだか懐かしいような山の形だ。どこから見ても「あれは蓼科山」と指差している。

photo 紅葉の蓼科山
秋色の蓼科山 2019.11.1
北八ヶ岳ロープウェイより

蓼科山に登ったのはもうずいぶん昔のことだ。とにかく忙しい日々だった。土曜日の昼、溜まっていた仕事を片付けて出発した。1日目は諏訪のホテルに泊まった。諏訪湖周辺のホテルは温泉を引いているので、ゆっくり温泉に浸かることができる。


蓼科山と周辺の山々
市町村名、道路名などは2001年当時の名称で記載

photo思い出の道路通行券、スタンプなど:蓼科山
思い出の道路通行券、スタンプなど

翌朝、7時にホテルを出発、大門街道から夢の平林道を走って七合目に車を停める。靴を履き替え歩き始めたのは8時20分。八ヶ岳は人気の山岳地、北から南まで麓にはたくさんの観光施設がある。けれど、私たちはあまり訪れたことがなかった。リゾート地というイメージから、明るい高原や林の中を登り始めると思っていた。

photo :登り始めは針葉樹の森:蓼科山
登り始めは針葉樹の森

ところが、いきなり深い針葉樹の森、暗い程だ。たくさんの苔がびっしりと覆う岩の道をゆく。森の中にはオサバグサがポツリポツリと咲いている。カニコウモリも咲き出したようだ。登山道の淵には小さな艶のある葉がびっしりと広がっているが、そこから伸びている穂はもう実をつけている。コイワカガミの群落だ。

photo :すごい苔だね:蓼科山
すごい苔だね

馬返しを過ぎ、天狗の露地を過ぎる。森の中の道は次第に石がゴロゴロしてくる。マイヅルソウの白い花が森の下を彩る。少し開けるとゴゼンタチバナの花も群生している。ピンク色に咲くイチヤクソウは、ベニバナイチヤクソウだろうか。

花を見つけると元気になる。だがフィルムのカメラだった上に、接眼レンズなどなかったから花の写真はほとんど残っていない。一生懸命撮ってもピンボケになってしまっていたから。

photo :カニコウモリ:蓼科山
カニコウモリ

photo :ゴゼンタチバナ:蓼科山
ゴゼンタチバナ

photo :針葉樹の森から小さな岩の道へ:蓼科山
針葉樹の森から小さな岩の道へ

将軍平に着く。蓼科山荘が建っている将軍平は稜線上になるが、まだ大きな木があるので見晴らしは効かない。ここでちょっと一息入れていこう。ここからは急な登りになるようだ。

登り始めると、急なだけではなかった。大きな岩がゴロゴロと積み重ねられたような登山道だ。夫はこういう道は面白いと言う。確かに全身を使って登る感じだ。

photo :大きな岩がゴロゴロの急登:蓼科山
大きな岩がゴロゴロの急登


蓼科登山というと、「大きな岩がゴロゴロした道だったね」と二人同じことを言う。だが、さてどれくらいの岩が重なっていたっけ・・・と思い出そうとしてもどこか曖昧になる。アルバムを繰って当時の写真を見ると「ああそうだった」と具体的な岩肌が思い出せる。写真が無くっても思い出は豊かだけれど、写真によって具体的な記憶が蘇ることもある。

photo :とにかくおっきな岩がゴロゴロ:蓼科山
とにかくおっきな岩がゴロゴロ

なかなか面白い岩ゴロの道だった。

高度が上がるにつれ大きな木がなくなってくる。振り向くと目の前に隣の山がどんと広がっている。あいにく雲は切れず、次から次に湧いてくるから遠くは見えない。だが、目の前の山は森の木々まで見えるようだ。将軍平から別れていく登山道があった前掛山だ。急な山の斜面がすぐそこに見える。

photo :コケモモ:蓼科山
コケモモ

登山道の脇にはコイワカガミの葉がたくさん光っている。森の中からずっと見える小さな光る葉、その葉の間からは赤い穂が出ている。残念ながらもう花は終わって実になっている。そして岩肌を覆うようにコケモモがたくさん群生している。コケモモはまだ花をたくさんつけている。クマさんも好きだというから、豊作だといいな。

どんどん登っていく。大きな岩をガッツリと乗り越えるのに気を取られていたが、ふと振り返ると隣の山が下になっている。

photo :大きい前掛山が目の前に:蓼科山
前掛山が目の前に大きい

photo :コイワカガミの花、終わっちゃった:蓼科山
コイワカガミの花、終わっちゃった

いつの間にか空が近い。もうすぐ山頂だ。キバナシャクナゲが咲いている。夫の好きなシャクナゲの中でも高山に咲く花だ。樹高も低く、強風にも耐えながら咲く花という風情だ。

photo :キバナシャクナゲが咲いてる:蓼科山
キバナシャクナゲが咲いてるよ

photo :もうすぐ山頂:蓼科山
もうすぐ山頂だ

さて、もうひと頑張り。蓼科山頂ヒュッテが見えてきた。ヒュッテの向こうは広い!

photo :立派な山頂表示看板:蓼科山
人気の山らしい看板

photo :蓼科山山頂 2530mにて
蓼科山山頂 2530m

到着、蓼科山2530m、10時20分。蓼科山の山頂は岩だらけの広場だった。遠くから見る優しいコニーデ型の三角形とは全くイメージが異なる。だだっ広い岩の広がり。そして、その山頂にはたくさんの人がいた。いくつかの登山コースから登ってきた人たちがここでゆっくりしているようだ。みんな交代で記念撮影をしている。私たちも山頂表示の前で一緒に撮ってもらった。何組かの人も撮ってあげた。

photo :広い山頂:蓼科山
広い山頂

photo :白樺湖が見えるよ:蓼科山
白樺湖が見えるよ

記念撮影をした後は、広い山頂を散歩してみる。あいにくの雲で南八ヶ岳方面は隠れているが、北の雲は少し薄い。お隣の北横岳は雲の上に稜線が見えている。さらに北に目をやる。霞んではいるが、足元を見下ろすと白樺湖が小さく見える。その向こうの霧ヶ峰は雲の中。

photo :広い山頂、北横岳が見える:蓼科山
広い山頂、北横岳が見える

平に広がっているような山頂だけれど、中央は少し低くなっているようだ。そしてそこには蓼科神社の奥宮が祀られている。この広い岩石の広がりは火山活動の痕跡で、平らな岩石の積み重なりは噴火口の跡だという。


遠くから見ると、蓼科山は八ヶ岳の北に聳え、南の赤岳とともに大きな一つの連なりにも思える。広く長く裾野を広げた姿はあまりに大きくて、富士より高かったという逸話がうなずける。富士と八ヶ岳が高さ比べをして、富士がわずかに低かった。怒った富士が八ヶ岳を蹴飛ばしたから、今の姿になったという話。話としては面白いが、度重なる火山の噴火が今の八ヶ岳を形作ったのだろう。その一つの痕跡が、蓼科山頂の累々と重なる岩の堆積なのだ。

photo :蓼科山頂のヒュッテ
蓼科山頂のヒュッテ

photo :山や旅のバッジがいっぱい
山や旅のバッジがいっぱい

人は多かったが、広い山頂に散らばっているので、気になるほどではない。1時間近くのんびりしてから、降ることにした。

photo :山頂直下から蓼科山荘を見下ろす:蓼科山
山頂直下から蓼科山荘を見下ろす

山頂ヒュッテで記念バッジを買う。登山の記念にバッジを買うのは私の若い頃からの趣味だった。いつの間にかたくさん溜まったバッジを額に入れておいたら、夫が壁飾りに設てくれた。今でも時々バッジを発見すると買ってしまうが、だんだん高い山に登らなくなってきたから、あまり増えない。

photo :蓼科牧場から振り返る:蓼科山
蓼科牧場から振り返る

帰りは蓼科牧場を通り、佐久まで降りて、関越自動車道で帰ることにした。11時過ぎに降り始める。急な登山道を滑るように降りて、12時半に七合目に停めた車に到着。県道40号線から国道142号を走り、佐久ICから上信越自動車道に乗る。

都心を越えて、家に着いたのは夕方6時、ゆっくり1日を振り返ることができる時間だった。




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