久しぶりに訪ねた友人の家でゆっくりくつろぎ、猫のな〜ちゃんと「初めまして」をした。一晩寝て、甲斐駒ヶ岳に朝日があたるのを見ながら近所を散策。鳥の声が賑やかに響く。親子連れの猿が道を横切り、区切りのない広い空を燕が自在に飛び回る。標高700mほどという友人の家は高原の空気に包まれていた。
さて、今日はどこへ行こうか。朝ごはんを食べながら相談する。もちろん候補地はいくつか考えていた。何度か話題にはなった甘利山はタノちゃんの推薦。長野とは方向が逆なので一泊では無理かなと話していた私たちは大喜び。
朝8時、タノちゃん運転の車に乗って出発。広い田園地帯を走り抜け、山道に入る。九十九折りの林道をぐんぐん登っていく。
友人の家から1時間と言うけれど、カーブの多い山道はところどころ岩が崩れ落ちている。道を知っているタノちゃんだから安心して乗っているけれど、ドキドキする。
道々、急な斜面の草刈り現場が現れる。山仕事の大変さが見える。林業の伐採、植栽、そしてその後の手入れは草刈りと続くが、あまりに狭い道、急斜面が多い日本の山は重機が入りにくいだろう。人の手仕事も多くなるのではないだろうか。
普段は忘れている別の生活を見せてもらった気がする。色々な人が色々な生活をしているという当たり前のことなのだが・・・。
甘利山の駐車場に到着。レンゲツツジが有名なところらしいが、花の季節は終わり。変わって濃い紫のアヤメの花が咲いている。鹿の食害を避けるためのネットが張り巡らせてあり、必要なこととはわかるが、残念な景色となっている。
柵で囲われたお花畑を眺めた後、駐車場脇に建つグリーンロッジの前を通って四阿へ向かう。緩やかな道を登っていく両側にもレンゲツツジ、ミツバツツジの木はあるが、花は終わりだ。草原にはキンポウゲが群落になり、光沢のある花びらが光を反射している。キンポウゲは別名ウマノアシガタと言う。葉の形から名付けられたというが、そうかなぁ。似ているかなぁ。
大きな四阿は標高1671mにあり、一気に見晴らしが開ける。目の前に富士、手が届きそうだ。レンゲツツジの季節には、オレンジの花を前景にした富士が人気だとタノちゃんが解説してくれる。いいですいいです、きっと人も混み合うでしょう。誰もいないこの絶景を独り(4人?)占め、最高だ。
ゆっくり見晴らしを楽しんでから車へ戻ると言うタノちゃんキミちゃんを残して、私たちは山頂を目指す。一旦森の中に入り、整備された道を登る。アサギマダラが舞っている。それほど深い森とは思えないが、サルオガセが枝に絡まり揺れている。深山の森に迷い込んだような幽玄な雰囲気がある。サルオガセは数メートルも垂れ下がるものもあるが、地衣類なのだという。日本名の「霧藻」がぴったり、天女が衣を忘れて行ったかのようだ。でも、時には妖怪のように見えることもある・・・かな。木の枝にまとわりついているので寄生しているかと思えるが、光合成と、空中の水分だけで生きているのだそうだ。
山頂は広々として気持ち良い。記念撮影をして車に戻る。途中のグリーンロッジで山バッジを購入。山バッジを買うなんて、なんだか久しぶりだ。
ここからは来た道を戻らず、さらに奥へ向かう。鳳凰山のドンドコ沢登山口がある青木鉱泉まで行く。登ってきた道よりもっと荒れている道だった。崖から崩れ落ちた岩がゴロゴロしているから気をつけて進む。ウツギの白い花が周囲を飾っている。
お隣の御座石鉱泉にも鳳凰山の登山口がある。何年か前にキミちゃんと一緒に行ったことがあったっけ。遥か昔、一人で尾根を登っていったところだ。若かったなぁ、懐かしい。
青木鉱泉からは韮崎へ向かう道を走る。やはり注意が必要な山の道だが、途中大展望がひらけた。ガイドよろしくタノちゃんが山や見下ろす街を説明してくれる。車をとめて雄大な景色を楽しんだ。
帰り道は一直線に家へかと思ったが、途中1箇所寄り道。農業用水路を利用した小さな水力発電があった。説明板を見るとこの小さな発電所は3箇所にあるそうで、ここは第2発電所、私たちが見ている時の発電量は14KWと掲示されていた。大量に流れる農業用水をうまく活用しているようだ。
友人の家に帰りつき、お昼を食べながら見てきた風景を話す。これもまた楽しい時間だ。
食後、盛りだくさんの楽しさを抱いて、な〜ちゃんにも別れを告げ、私たちは長野へ向かった。
(写真掲載の了解を得ています)