バラを見に行こうと、友人がやってきた。昨年も一緒に行った中野市の一本木公園は『バラ祭り』開催中。前日やってきた友人と話が弾んで、酒量も弾んでか、翌日夫はいささかダウン。夫を布団の上に残して、友人たちとバラ見物に出かけた。
中野市の一本木公園は須坂市に住んでいた黒岩喜久雄さんが育てていたバラ172種を寄付されたことによりバラ園としての活動が始まったそうだ。現在はバラの会が活動を続けることによって維持管理されているという。今年は黒岩さんのレリーフがバラ公園の中に立っていた。
一本木公園に初めて行ったのは長野に引っ越してきた年の秋、中野市に用があって出かけたついでに公園散策をした。11月半ばで、前日には雪も降ったので秋のバラもかなり枯れてしまっていたが、まだ花を見ることができた。バラの木が多いのに驚いて、春の花の季節に見たいと思った。
コロナ禍の前は、食品のテントが並んだり、コンサートなどのイベントが行われたりして賑やかだと聞いていた。春のバラ園に初めて行ったのは2015年、歌手麻衣さんのコンサートがある日だった。ジブリの映画『風の谷のナウシカ』のラストで綺麗な子供の歌声が入るけれど、あの声の人だ。電車に乗って、綺麗な歌声を聴いて、満開の薔薇の花を見て、公園でゆっくりラーメンを食べて・・・と、一日満喫した鉄旅だった。
その後数回訪ねているが、友人とは昨年初めて一緒に出かけた。昨年は5月末日に出かけ、まだ満開にはちょっと早かった。今年こそはと楽しみにしていたが、天候が安定せずドキドキしながら出かけた。幸い青空が広がってきて、バラの香りに包まれた楽しい時間を過ごすことができた。常に童心ときみちゃんに笑われるたのちゃんはバラの中でブランコに揺れ、童心もまた満足できたかな。
何年か訪ねていると、バラが成長している姿を見ることができる。園内にたくさん設(しつらえ)られたアーチも、年を追うごとに大きくなっている。コロナ禍の前にはアーチの前で係の人がカメラのシャッターを押してくれた。懐かしい思い出だ。早くまたあの、のどかな時間が来ると良いのだが。
体調不良で中野に行けなかった夫と、坂城にあるというバラ園に出かけたのは二日後。千曲川のほとりにあるバラ公園には一度行ってみたいと思っていた。調べたら、駅からも近いということなので、鉄旅にする。長野駅からしなの鉄道でテクノさかき駅まで行き、そこから歩いて15分。さかき千曲川バラ公園は田んぼの中にあった。千曲川の堤防の斜面に広がっているバラ園は、坂城駅とテクノさかき駅の中間あたりで電車の窓から見ることができる。乗り鉄もいいねと話しながら30分ちょっとの時間を楽しむ。
静かなテクノさかき駅から千曲川へ向かって歩き出す。しばらく歩くと田んぼの向こうにバラ公園が見えてくる。公園に向かって田んぼの中の道をのんびり歩いていると踏切の音がする。「電車だ」と、夫は撮り鉄に変身する。
電車の写真も撮って満足し、バラ公園に到着。梅雨の狭間で傘も用意してきたが、だんだん青空が広がってきた。大きな木や建物がないので、見晴らしは申し分ないのだが、暑い。しばらくバラの香りを楽しんだ後、『ばら祭り』で地元の人たちが販売しているテント場に移動。ローズサイダーというものを購入。キノコおこわや団子も購入してテントの下で軽食ランチをいただく。直射日光の下は暑いが、日陰は風が爽やかで気持ち良い。初めて飲んだローズサイダーはほのかにバラの香りがした。
山々に囲まれ、周囲は田園風景というロケーションは素晴らしいが、公園内にはバラだけが咲いていて、不思議なことにどこか寂しい。バラの上にそよぐ木々の葉、足元に揺れるハーブの小花、イングリッシュガーデンの繊細なガーデニング術をとまでは言わないが、もう少し賑やかになってもいいのではないかと思う。
あちこちに設られたアーチのバラもまだ成長途中という雰囲気だから、これから年を重ねることで豊かになっていくのだろう。
夫にとっては花と鉄道の二つを同時に楽しめるという、なかなか素敵な旅になったようだ。
ランチの後は満開の花々と名残を惜しみ、再びテクノさかき駅まで田園の中をゆっくりと歩いた。
(写真掲載の承諾を得ています)