昨日は雨で庭の草花は喜んだが、オマケの雷はあまり嬉しくない。今週初めから空模様は安定しない。雲が濃くなってくると、遠くからゴロゴロという音が響いてくる。
「今日の雨は夕方かららしい」と、出かける気満々の夫だが、雲の色も濃いので、遠くへ行くのはやめよう。
裏山のササバギンランの蕾がどうなったか気になる。ゆっくり裏山を歩いてこようと決まった。
大峰沢から登って小丸山に出る。小丸山の山頂にはフランス菊が満開で、白い波が揺れるようだ。ここから戸隠バードラインへ続く車道を横切ると歌ヶ丘の登山口になる。急坂を登ると、電動鋸などの工具が置いてある。あれ、どうしたんだろうと首を傾げていたら、後ろから「こんにちは」と声が聞こえた。作業着姿の若い男性がニコニコしている。「ここを登るとどこかの山頂に行けるんですか」と聞くから、「大峰山まで続いています」と話した。男性は歌ヶ丘の登山口にあった四阿の撤去作業をしていると言う。柱がもろくなって危ないので、昨年から立ち入り禁止の綱が張ってあったところだ。見ると、綺麗になくなっていた。テーブルだけがあったけれど、これは残るのだろうか。
互いに「気をつけて」と言い合い、作業の男性と別れる。物見岩へと続く分岐を過ぎて山道を登っていく。ハナニガナの黄色が鮮やかに揺れている。ハクサンタイゲキと思われる花が咲いているが、目立たない。小さな黄色は花だろうか、赤い小さなボンボンは実なのだろうか。
森の下にはジンヨウイチヤクソウがツンツン立っている。あまり陽がささないところだけれど、小さな丸い葉が地面を這うように広がっている。
雨の後の山道はぐちょぐちょしている。どちらかと言うと一年中乾燥している印象なのだが、今年は冬の雪といい、春先からの雨といい、湿っていることが多い気がする。
お目当てのササバギンランだが、なんと茎の先がぽきりと折れたようになっている。先日見た時は蕾だったけれど、伸びて花は咲いたようだ。その後虫に食べられたのだろうか。見事に何もない。がっくりしたが、周辺に咲いているのじゃないかと森の中に目を凝らす。あった。まだやせっぽちの小さめのササバギンランが2株、小さな花をつけていた。よかった。
雨の後の道はぬかるむが、緑がみずみずしい。気持ち良い緑の中を登っていくと笹が顔を出してくる。今年は笹の年なのか、花が咲いている。先日戸隠でも咲いていたが、あまり目にすることがない花だ。周囲は笹の枯れ葉が目立つ。
山頂の四阿に腰を下ろして山の静寂を楽しむ。大峰山は麓に戸隠バードラインが走っているけれど、車の音は響いてこない。アカマツが駆除のためにたくさん伐採されたせいか、木々の隙間から長野市街地が見下ろせるようになった。
大峰山頂には一部植栽されたと思われる木や花がある。大きなシャクナゲやツゲ、ソメイヨシノやブナの木など。巨大なトチノキもあるが、これは自然木だろうか。毎年大きな花を咲かせていて楽しみだ。
山頂でしばらく休んだ後、地附山に向かう。ガクウラジロヨウラクがようやく赤紫の花を開いてきた。俯いて咲いているので中を覗くのは難しい。どんな虫が花粉を運ぶのだろう。自然の仕組みは知れば知るほど面白いが、あまりにも奥が深くて、しかも広い。目の前にあるものを見るだけで精一杯だ。
ハナイカダの雄花が咲いている。先日は雌花だけしか見つけられなかったけれど。ハナイカダは雌雄異株、近くに両方の木があって実をつけることができる。
春一番に咲いていたショウジョウバカマやチゴユリは実りの時期を迎えている。ショウジョウバカマの種子はまるで細い糸屑だ。一つの実にたくさんあるけれど、あまり実生では増えないそうだ。葉の先にできる芽も、なかなか大きくなってこない。生き残るのは大変なのだろう。
地附山を越えて電車を見下ろせる旗立岩に向かう。稜線にはまだギンランが咲いていた。中腹のギンランはすでに花の終わりだが、わずかでも標高が高いからか、綺麗に咲いていて嬉しくなる。
ヒメハギも咲いていた。先日登山道中腹で見つけたが、今日は山頂近く、数年前咲いていた近くにあった。小さな芽が出て、いくつか花をつけている。隣には白い花をつけている株もあった。このまま大きくなってくれるといいのだが。
帰りに地附山公園に寄ってミニ山野草園に咲く花を見てから帰った。公園にはキリの花が揺らぐように空に向かっていた。