今年(2022年)は近くの山にイチリンソウを探しに行ったが、会うことができなかった。残念。ずっと昔に見たイチリンソウの写真を探していたら、夫に笑われた。図鑑にも、ネットにもイチリンソウの花は載っている。けれど、自分の目で見た花が一番心に残っている。たとえ写真はピンボケでも・・・。
『新・花の百名山(田中澄江著)』にカタクリの山として紹介されている三毳山(みかもやま)は標高229m、丘陵という趣きの山だ。だが、全山気持ち良い緑に覆われ、町を上げてこの山の自然を守ってきた歴史があるという。
カタクリを見るには少し遅くなってしまったけれど、少しは咲いていてくれるのではないかと、休みが取れた土曜の朝神奈川を出発した。東名高速道路、環状8号線、首都高速道路をいくつか乗り換えて東北自動車道に入る。長いドライブの後、『みかも山かたくりの里』に到着。
山というより起伏のある公園という感じだ。それでも丁寧に整備された道をゆっくり登っていくと深い森の趣きがあり、清々しい空気に包まれる。
広い草原はカタクリに覆われている。が、花はほとんど散ってしまって、大きな葉が残るのみ。いや、花の後に緑の実をぽっちりと膨らませ始めている。残念だが、覚悟はしてきた。どこまでも続くというカタクリの群落はもちろん見たかったのだが、ちょっとおそかった。だがここには他の花々もたくさん咲くらしいから、その花を楽しもう。
ニリンソウはびっくりするほどの群落だ。ずっと向こうまで白い花が揺れている。よく喩えられるが、緑濃い葉が重なって続いている様は緑の絨毯そのものだ。
いくつかの花の群落の間にひっそりと咲く、ヒトリシズカ、ニオイタチツボスミレなどが趣を添える。当時住んでいた神奈川にもニオイタチツボスミレの花が咲いていた。濃い紫の花はほのかに香りをまとっていて、見つけると嬉しくなって鼻を近づけたものだ。
山頂は竜ヶ岳(当時のメモによる。現在は青の文字が追加されて青竜ヶ岳)、天邪鬼な私たちはカタクリが咲いていないからと、急ぎ足で山道に入って行った。カタクリの季節には満開の花畑を散策する人が多いそうだ。そして元気な人は奥の三毳山山頂まで足を伸ばすらしい。
周遊コースを辿って、ゆっくり山を降りてくる道の両側にはどこまでもお花畑が広がっている。ニリンソウの群生地だと思っていたら、いつの間にか花が大きくなっている。イチリンソウだ。真っ白い花びら(じつは萼)がふわりふわりと大きい。
ニリンソウの大群落あり、イチリンソウの大群落あり、素晴らしいところだ。忙しい日々の疲れを忘れさせてくれる。家から遠いので、頻繁に訪ねることはできないけれど・・・。
森の中に霞のようにオレンジ色が広がるところはヤマツツジ。こちらはまだこれからなのだろう。蕾もたくさんついている。森の緑はまだまだ春の彩り、光に映えて明るい。
落ちたドングリがパカリと割れて赤い芽が出ている。こうして新しい世代を育もうとしているのだが、この芽の幾つが大きくなれるのだろう。たまたま土の上に落ちて根を出し、芽を出し、伸びているけれど、踏まれたり、食べられたり、日が当たらなかったり・・・自然の生存競争は厳しい。それでも健気に発芽している様子を見ると愛しくなる。笑われそうだが、うまく育つといいねと声をかけて通り過ぎる。
花々に元気をもらっての帰り道、ここから近いところに『とちぎ花センター』があるらしい、行ってみようか。広い園内には花壇がしつらえられ、パンジーがシックな花模様を作っていた。苗やタネも販売されている。
たっぷり花に浸かった1日だったが、最後に団子も楽しもうか。花より団子というではないか。佐野ラーメンというのが有名らしい。
走りながら探すが見つからない。やっと見つけたところは製麺所。お店の人に食べられるところを聞いて、ようやく美味しいラーメンに辿り着いた。
ラーメンを食べたので、あとは帰るだけ。佐野藤岡ICから東北自動車道に乗り、高速を乗り継いでひたすら走った。家に着いたのは7時過ぎ、栃木はやっぱり遠かった。