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種池、古池湿原から森林植物園へ(長野県)

2017年5月19日(金):6月末記


1黄色い水芭蕉
黄色い水芭蕉 軽井沢植物園 2017.4.20

今年はミズバショウにたくさん出会った。軽井沢植物園では初めて黄色いミズバショウも見た。戸隠で6月中旬に、焼額山では6月後半になってまだ咲いていた。

今年の見始めは家からも近い『むれ水芭蕉苑』。友人に「見に来ませんか?」と声をかけ、泊まりがけでやってきた友人夫婦と一緒に出かけたのは4月末。ミズバショウもリュウキンカも一斉に咲き出して鮮やかだった。それから、斑尾山腹や黒姫山腹などを歩いて、湿原に広がるミズバショウを見た。

2むれ水芭蕉苑
むれ水芭蕉苑 2017.4.30

今年は雪が多く、寒さがいつまでも残っていたせいか、山の花が遅かった。黒姫山の西登山道にあるという古池湿原に行ってみようと出かけたのは5月後半、例年ならミズバショウはお化け葉になっていたかもしれない。

飯綱高原から戸隠高原、戸隠キャンプ場を通って黒姫の山麓に着く。道路の左右に広がる森の中には雪解け水が豊富に流れ、いたるところにミズバショウの白が転々と続いている。助手席からあっちを見、こっちを見て歓声を上げる私を横目で見ながら、夫は黒姫山西登山道の入り口駐車場に車を停めた。ここからは県道を5、6分歩き、古池(大橋)登山口から山道に入る。県道の脇には水が流れ、ミズバショウやリュウキンカが鮮やかだ。ここにも数台停められるが、思っていた通り道路にはみ出すように車がいっぱいだ。

3フデリンドウ
フデリンドウ

4種池(円内はアオサギ)
種池(円内はアオサギ)

歩き始めから深い森。道は整備されているが、背の高い笹がびっしり茂っている。これはクマザサだろうか。道にはみ出してきている茎をポキポキ折りながら歩いていくと、何本もすでに折られた茎があって、おかしい。同じことを考える人がいるようだ。

map種池,古池,戸隠森林植物園

20分ほどで種池への分岐に着く。種池は小さな池だったけれど、森に囲まれたとても静かなところだ。中州でもあるのだろうか、大きなサギがすっくと立って水面を見ている。水辺には太いトコロテンのようなものがグニャグニャとたくさんある。これはカエルの卵だ。ヒキガエル。のぞき込むと、いるいる、大きな赤っぽいカエルがのっそり動いている。手足を伸ばしてぼんやりしているのもいれば、交尾しようと重なっているのもいる。ここはカエルの天国かもしれない。静かと言ったけれど、カエルの声は別、カエルと鳥の声は賑やかだ。けれど、人口の音はない。

5種池のカエルと卵
種池のカエルと卵

種池から再び登山道に戻り、笹を分けながら10分ほど登ると視界がひらけ、古池の畔に着く。古池は人口の貯水池だそうだが、なかなか広い。カッコウが鳴いている。

9古池のほとりでコカリナを吹く
古池のほとりでコカリナを吹く

私はコカリナを取り出して『カッコウ』の曲を吹いてみた。コカリナは木で作られた小さな笛、陶器のオカリナに似ているが、音はさらに柔らかい。友人にもらって吹き始めて2週間ほど。あまりに下手だったからか、これは違うと思ったようでカッコウは鳴きやんだ。夫は「カッコー、カッコーのところだけ吹いていれば?」などとちゃかす。まぁ、その通りではありますが。

それでもその後何カ所かでいくつかの曲を吹いて、鳥も諦めたのか一緒に鳴いてくれ、広い自然の中でのコカリナ演奏は気持ちよかった。

古池の西岸を巻くように進むと山の麓に不思議な光景が広がった。鉄分が多いのか、茶色の湿原にミズバショウ、リュウキンカが咲き競っている。雪を抱いた山、シラカバ林、そして茶色い湿原に純白のミズバショウ。息をのむ美しさだ。私と夫は湿原の淵に立ち、しばらく眺めていた。

6広い古池湿原
広い古池湿原

10古池湿原
古池湿原

さらに古池の岸辺に整備された木道を進むと黒姫山をバックに湿原が遠くまで広がっている。木道に一人の男性が座って何か機械を操作しているのが見えた。モーター音は上からしている。話題の飛行カメラ『ドローン』だ。男性は古池によく来るとかで、今年は花が遅いと話していた。いつもならミツガシワが満開になる頃なんだけれど・・・と。

7古池湿原
古池湿原のミズバショウ
(黄色はリュウキンカ)

11ミズバショウとリュウキンカ
ミズバショウとリュウキンカ

水辺にはクロサンショウウオの白い卵塊もあり、スミレやショウジョウバカマ、エンレイソウ、ネコノメソウなどが豊かだ。中でも私を喜ばせてくれたのは、きれいな赤紫色のウスバサイシン。夫は「よくこんなものを見つけるね」と感心するが、確かに葉の根元に隠れるように下向きに咲くカンアオイの仲間は見落としやすいかも知れない。

12北に広がる古池湿原
北に広がる古池湿原

13古池のほとりで
古池のほとりで

15クロサンショウウオの卵:古池湿原
クロサンショウウオの卵

8名前不明スミレ:古池湿原
スミレの名前はわからない

16ウスバサイシン:古池湿原
ウスバサイシン

ネコノメソウが沢山咲いているところで写真を撮っていたら、近くにタケシマランも地味な花をぶら下げて一塊になっていた。

古池を一回りして、黒姫山と池の風景を目の奥に焼き付けて、来た道を戻ることにした。

古池のほとりに咲く

エンレイソウ:古池湿原
エンレイソウ

タケシマラン:古池湿原
タケシマラン

ネコノメソウ:古池湿原
ネコノメソウ

ショウジョウバカマ:古池湿原
ショウジョウバカマ

広々とした気持ちのよい空気の中でリフレッシュし、駐車場に戻った私たちは、帰りに戸隠に寄ってみることにした。


奥社への参道入り口の駐車場に車を置いて、植物園に入る。ミズバショウはもちろんだが、カタクリやアズマイチゲ、キクザキイチゲ、コミヤマカタバミなどが惜しげもなく花ひらいている。さらに整備されている植物園のコースを進むと、一面のミズバショウだ。私たちは言葉もなく、木道を歩いた。

森林植物園には長い大きなレンズをつけた重そうなカメラを持ったグループが何組もいた。木道の片側に三脚を並べて太い木の上にレンズを向けている一団がいた。「オオアカゲラが子育て中なので、エサをとって戻ってくるのを待っている」とのこと。少し離れたところにも何人かいたが、「あちらにはオオルリがいますよ」と教えてくれた。鳥の写真を見ると美しいと思い、森の中で鳴き声を聞くと、とても心地よいのだが、なかなか見ることが出来ない。

22シナノキの大木と:戸隠森林植物園
シナノキの大木と(森林植物園)

ごくまれに、近くにいる鳥の撮影に成功した時は大喜び、少しくらいピントが合っていなくても、自分たちをほめているのも幸せかもしれない。

森の奥に進むと、太い松が何本も倒れている。湿原の上にかぶさるように倒れていて痛々しい。あまりにたくさんの倒木に、整備が追いつかないのだろうと思わせられる。

17森林植物園(円内コミヤマカタバミ)
森林植物園(円内コミヤマカタバミ)

18戸隠森林植物園にて
戸隠森林植物園にて

森の奥から大きく回って植栽されている高台苑地に向かう。周囲をシャクナゲの濃い緑に囲まれた花園はまだ早春の茶色い姿だったが、淡いピンクの花の塊が見えた。紫がかった大きな花びらはまさしくシラネアオイ。今年も何度か探して山に入ったけれど、雪深く、まだまだだった。植栽とは言え、沢山の花に会えるのは嬉しい。

19シラネアオイ:戸隠森林植物園
シラネアオイ(森林植物園)

目を移すと幻の花トガクシショウマも咲いている。白い透明の花びらのサンカヨウも咲き始めている。周囲を囲むシャクナゲは濃い赤の蕾をつけて、まだまだ咲くのは先のようだ。

20トガクシショウマ:戸隠森林植物園
トガクシショウマ(森林植物園)

21サンカヨウ:戸隠森林植物園
サンカヨウ(森林植物園)

23アズマシャクナゲ:戸隠森林植物園
アズマシャクナゲ(森林植物園)

24美味しい戸隠蕎麦と蕎麦団子
美味しい戸隠蕎麦と蕎麦団子

もちろん自然の中で出会えるのが一番だが、トガクシショウマは盗掘されて今では絶滅の危機に瀕しているそうだ。 自分本位の人間の悲しさを身にしみて感じる。自然が活き活きしているところでこそ人間も活かされるということを、いつになったら学べるのだろうか、この社会は。

種池から古池、そして戸隠へ、ぐるりと走ってたくさんの花々に会えた私たちは、自然の息吹をいっぱい吸い込んで帰路に着いた。戸隠のおいしい蕎麦を食べて、幸せにおまけがついたのは言うまでもない。

Video:「むれ水芭蕉苑 2017.4.19」01:55

=咲き始めたミズバショウとせせらぎの音=

Video:「黒姫山麓古池湿原にて 5.19」00:57

=ミズバショウとリュウキンカ、カッコーの声、そしてせせらぎの音=




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