久しぶりの大雪は家の周りで20cmほど。長野では4年ぶりという。ようやく降り続いていた雪が止み、明日は1日晴れそうだという。山へ行かない手はない。夫は前の日からいくつかの山を候補に考えていたようだが、やはりここは大峰山へ新年初のご挨拶に行こうということになった。
空は晴れても、道はまだ雪が残って凍りついている。こういう日は車で出かけたくない。では電車はどうかと思うが、コロナの新型オミクロン株が猛威をふるっている中、電車にもあまり乗りたくない。家から歩いていくことができる裏山が最高だ。
まだ大雪が降る前に物見岩まで下見をしてきた。下見というのは言葉のあやだが、午後になってから少し散歩をしようと出かけたのだ。夕焼けどきの物見岩からの展望を楽しんで帰ってきた。その時は雪がそれほど多くなかったから、山頂まで行けたかもしれないねと話しながら帰ってきた。
さて、今日は山頂まで行ってこよう。家を出たのは8時すぎ。大峰沢の脇を登って歌ヶ丘に出る。しっかり積もった雪は気温が低いのでまだ溶けていない。昨日か今朝早朝か、イノシシが移動したらしい足跡が縦横に走っている。歌ヶ丘からは降ってきた大きな人の足跡が続いているが、これも昨日のようだ。昨日の午後からは雪が降っていないし気温も低かったので、わりと綺麗に残っている。
さすがに平地より雪の量は多いようだ。南斜面だからもっと少ないかと思っていたが、土の色は全く見えない。踏み跡は残っているが、30センチ近い雪溜まりもあるからスパッツは家から履いてきた。積もった雪の道はザックザックと柔らかいので、アイゼンはまだカバンの中だ。大峰山はアカマツが多い山だが、近年の松枯れ現象の被害が大きく、かなりたくさんの木が伐採された。斜面が明るく感じられるのは雪のせいばかりではないだろう。
冬でも緑が綺麗なのは、ヒイラギ、ソヨゴ、ネズミサシ。松葉の緑だけではない。雪の上に枯れたオケラやアキノキリンソウが立っているのが見える。天然のドライフラワーだ。
登りながら花の季節に親しんだ花々の名前を口ずさむ。この土の盛り上がりにはジンヨウイチヤクソウがたくさん咲いていた。そこを曲がると削れた土にギンランが立っていた。あそこにはセンボンヤリ、リュウノウギクの茂み・・・ツルリンドウは今でも実をぶら下げている。冬には冬の楽しみがあることは分かっているが、花の季節が待ち遠しいのも事実だ。
初めて大峰山から歌ヶ丘に降った時にはシュンランが満開で喜びの声を上げたものだ。今は眠っている花々も、私のように春を待っているかもしれない。
毎回楽しみにしている大きなサルノコシカケを見つけ、一登りすると頂上広場だ。10時10分、四阿には誰もいない。日曜日だけれど、大雪の中でみんな閉じこもっているのかもしれない。静かな山頂でおやつタイムとしよう。今日は朝から綺麗な青空だ。木のベンチには陽が当たって、温まっている。夫は楽しみに担いできた焼き芋を頬張る。
見事な青空なのに、楽しみにしていた北アルプスは雲に隠れて見えない。大気の動きはわからない。30分ほど山頂の時間を楽しんで、今度は地附山の方へ降ろう。いつも凍っている急斜面なので、山頂で軽アイゼンを履く。今年度初のアイゼンだ。
準備万端、降り始める。雪が多いせいか、斜面はガチガチに凍っていない。積もった雪が石や木の根の凸凹を覆い隠しているので、とても歩きやすい。スキーで滑り降りるように二人で飛ばして降りる。とは言っても本当には滑らない。滑り跡をつけてしまうと後から登る人が苦労する。
一面の雪に覆われた森は陽が登るにつれ温まるのだろう。時々大きな音がして枝から雪が落ちる。大きな塊が落ちながら周りの雪も誘うので雪煙が舞う。あちらこちらでドスンという音が響き、煙幕のような粉雪の壁ができるので森のドラマの中にいるようだ。
分岐までは一気に降った。地附山までは急な登りだが、ここは短い。焦って汗をかかないように「ゆっくり」と声をかけながら一足一足気をつけて登る。スキー場跡まで登ると北に視界が開ける。飯縄山が目の前に大きい。
ここからはヒノキの森を抜け、モウセンゴケの群生地を過ぎ、山頂までゆったりとした稜線歩きだ。山頂に近づくと人声がする。地附山は人気の山らしく山頂で憩う人が多い山だ。今日も、ベンチの雪を落として座っている人たちがいる。11時20分、みんなここでお昼なのかもしれない。今日は日差しが暖かいので気持ち良い。
飯縄山から黒姫山、妙高山と続く北の展望を楽しみ、帰ることにする。パワーポイントからは東南の展望がひらける。善光寺平は霞んでいるが、志賀の山々から菅平、浅間へのスカイライン、冠着山や聖山も綺麗に見える。
これまでに登った山々を指差しながら、思い出と新しい年の抱負と・・・話は尽きない。