台風が近づいているという。晴れているのは明日と明後日・・・週末からは雨予報。明日は山へ行ってこようと夫。ところが起きてみたら体調が今ひとつらしい。
それでも午後から裏山へ出かけることにしたのは、体調も回復したのだろうけれど、私が日頃「毎日でも山に入っていたい」と言っているから?「今日無理して歩いて、明日も行けなくなったら残念だから、今日はゆっくりしていよう」と言ってはみたが、本心は見抜かれていたみたい。
せっかく晴れたから、電車も見下ろしてこようと言うので、昼食を食べてから出発した。 地附山公園から歩き始める。公園の山萩が見事に咲き誇っている。萩の真ん中の階段をゆっくり登る。ここが稼ぎどきと集まっているハナバチや蝶が賑やかに飛び交っている。トンボが飛び、小さな昆虫もたくさん見える。生き物が多様な様子は見ていてなんだか嬉しくなる。
山道に入るとミズヒキが光っている。太陽の光を受けてキラキラ揺れている様子は波のようだ。
いつの間にか木々の葉は緑を薄くしている。我先に色づき始めるのは山漆、気の早いのはもう赤くなっている。
先日小さく顔を出していたササクレシロオニタケがすでにしぼみ始めている。誰かが傘の裏を見たのか、地面に寝かせてあるのに、ちゃんと3兄弟揃っていて面白い。
秋の山はキノコが色とりどりで楽しいが、図鑑で調べてもほとんど名前が判明しない。だが、地元の人々はちゃんとキノコの顔を知っていて、これは食べられる、これは毒と言う。しかもキノコは方言というか、土地土地の呼び名もあるそうで・・・その世界はなかなかに深いようだ。私たちは色や形の変化を楽しんでいる。
キノコに木の実、花はだんだん少なくなってきたけれど、山の楽しみは花だけではない。大峰山で見つけたアキノギンリョウソウが地附山にもないかと森の中を探しながら歩くが、見つけられない。
森の楽しみと言えば、出会いもある。先日物見岩から登った時には大きなシマヘビがいた。一メートル以上はありそうだ。山道の近くでじっとしているので「逃げないの?そんなところにいると天敵に見つかるよ」などと話しかけるが、それでもじっとしている。近寄って写真を撮っているうちにゆっくり、ゆっくり動き始めた。首の下が何箇所か膨らんでいたから餌を飲み込んで、消化中だったのかもしれない。見送っていると、尻尾が少し切れてしまっていることが分かった。何にちぎられたのか、野生生物は生存競争が激しいのだろう。
夫の楽しみの車両センターを見下ろし、山頂へ向かう。ようやく色づき始めたダンコウバイの実を見上げながら山頂へ。マツムシソウが風に揺れている。強い風の中でも何種類かの昆虫は花にしがみつくようにしているが、青い蜂はいない。自然の中では青い色は少ないと思っていたが、地附山だけでも青い色はいくつか見つけることができる。キノコや、昆虫など。シジミチョウやルリタテハも青い色が目立つ蝶だ。
日本に近づいている台風の影響か、風が強い。青い蜂に会うのは諦めて稜線を進み、小さな秋の花を探しに行く。モウセンゴケ群生地にはウメバチソウが咲くのだが、まだ蕾だ。少し膨らんで5mmくらいになっている。さて、近くに群生するセンブリはどうだろう。小さな緑の葉をつけてあちらこちらに立っているが、まだ花がないようだ。帰ろうかとふと斜面の下を見ると咲いていた。小さな花が2輪、周辺を見て回ったが、あとはまだ蕾だけ。ちょうど日が当たるところらしく、一足早く咲き出したみたいだ。
センブリに会えたので、そろそろ帰ることにする。帰りは久しぶりにパワーポイントからの見晴らしを眺めて帰ろう。山萩が咲いている斜面を楽しみながら歩く。道の脇にニョキニョキと背の高いキノコが生えている。傘に模様が目立つ大きなキノコだ。大きいのは傘の直径が20cm近くなっている。びっくり。図鑑で調べたら、カラカサタケというらしい。道端にも普通に生えるとあったが、なるほどニョキニョキと大きくなっている、から傘みたいのがたくさんある。道の端には白い毛糸のようなものがフニャフニャした形で地面に並んでいる。「これ、ソウメンタケでしょ」「そうだ、これは図鑑にあった」。たまに名前がわかるものを見つけると嬉しくなる。キノコにはそっくりさんがとても多いから、なかなか調べられない。
地面に、木の枝に秋の気配を探しながら、のんびり帰り道を楽しんだ。