この山を「あまかざり」と読める人はあまりいないだろう。私たちも「あまげんやまと読むのかなぁ」などと言っていた。長野市松代の奥にある岩山だ。標高はさほど高くはないが、巨岩が立ちはだかり、岩登りの練習場にもなっている。
長野に引っ越して以来、いつか行きたいと思いながら三年近く経ってしまった。その尼厳山に出かけたのは例年になく早い春に桜も一気に満開になった4月半ば。尼厳山と、今回は足を伸ばさなかったが、奥に続く奇妙山の南には杏の畑が広がっていると聞いたので、少しの期待もこめていた。
もちろん花見の!
しかし、桜が満開なのだから、杏はおして知るべし。
それはともかく、市のホームページに掲載されていたコース図を便りに池田の宮登山口の近くにある駐車場を探した。トイレも、地図のポストもあると書いてあるので、分かりやすいと思ったのだ。
道路マップを見ながら行くと、池田の宮登山口に着いてしまったが、近くにはそれらしき駐車場がない。戻って自動販売機で買物をしている男性に聞く。少し先にあったと思うという案内を頼りに行くと、確かに「登山口駐車場」の標識があった。
しかし、その道は行き止まりになっていて、小さく登山口の看板が出ているものの、駐車場はない。かろうじて道沿いに何台か停められる程度。あまりウロウロするのも嫌なので、そこに停めて登る事にした。
緩やかな林の中の傾斜を歩くと、イノシシよけの網の入り口がある。落ち葉のたまる入り口を抜けてしばらく歩くと、先刻見てきた池田口からの合流点。大きな石碑が立っている。
池田口から男性が二人登ってきたので、駐車場の場所を聞いてみた。すると、以前はあったけれど、今は建物が出来たので無くなったとの事。私たちが停めてきた場所に新しい大きな施設が建っていたが、どうやらそこだったらしい。四つ角の信号のところに「登山口駐車場」の看板だけ残っている。
あたりは落ち葉が堆積して、乾燥しきっている。今朝は冷え込んで、車には雪が残っていたので、山の中ともなれば積雪もあろうかと覚悟してきたが、湿った跡もない。落ち葉に乗って滑らないように気をつけながらゆっくり行く。
しばらく行くと、右下に杏畑が見おろせる。青空の下、斜面一帯に広がっていて豊かな里を感じる。ただ、やはり花には少し遅く、濃いピンクに彩られているのは狭い地域。日射の関係だろうか、その彩りを見る事が出来た事に感謝して先を行く。
南尾根と北尾根の分岐の標識があった。進む方向を見ると南の方が直登になる様子なので、南を行く事にする。この選択は正解で、垂直に立ち上がる岸壁の下を一気に登って行く。
私たちは岩登りの技術はないので、本格的な岩登りは出来ない。だが岩の上を歩いて行ったり、少し緩やかな鎖場などを行くのは好きだ。なんだかワクワクする。
足首までの落ち葉も楽しみながらひと登りすると、頂上だ。
目の前に大きく飯縄山が見える。左には真っ白い高妻山とでこぼこの戸隠山。右には黒姫山とその奥にやはりまだ白い妙高山。少し離れて斑尾山。北信五岳が一望だ。そして首を左に振ると、登る途中からも見えていた北アルプスの山なみ。白馬岳から唐松岳、五竜岳に至る真っ白い山なみが累々と続いている。
おもわず「わぁ〜」と声を上げて立ちつくしてしまった。大展望に気持ちが弾む。
頂上では、先に行った男性二人と、もう一組男性二人組の人たちが腰を下ろして食事をしていた。
私たちも持ってきたおにぎりやフルーツを食べることにした。北信五岳の下に広がる長野盆地の中に知っている建物を数えたりしながら・・・。
私の山歩きの楽しみの一つは花に会うということだが、今回の尼厳山ではあまり花に出会えなかった。シュンランは首を伸ばして盛りだったが、ダンコウバイらしき黄色の木の花も、枝の上ではなく道に落ちていたし、ヤマツツジは登り始めにわずかにオレンジの色を見せてくれたばかりで、まだまだだった。タチツボスミレらしき淡い紫が一番たくさんあっただろうか。
イチヤクソウや、ウメガサソウのような葉の根元から昨年の花の穂らしきものが立っているのも見つけたが、花には会えない。
登山口の当たりにはムラサキケマン、トウダイグサ、ヒメオドリコソウなどが春を謳歌していたが・・・。
さて、食事をして展望を楽しんだので、下る事にした。下りは北尾根を行ってみる。南より歩きやすいがやはり岩がゴロゴロしている。大きな岩が今にも落ちそうなところでお遊びの写真を撮って、あとは森の中をゆっくり下る。
日向にピンクのスミレが数株咲いていたが、あまり見たことがない葉、ゲンジスミレだろうか?特徴的な葉だが、スミレの種類はあまりにたくさんあって、特定できない。
名前ははっきり分からないが、ここで出会えたのは確か。家に帰って図鑑を開くのも、分からないことも、楽しみとしようか。
「また来よう」と話しながら山を下り、家に帰る。