久しぶりに善光寺境内でのおびんずる市に参加する予定で友人夫妻がやってきた。ところが朝5時過ぎに、中止の連絡。このところの雨続きで、境内や駐車場にするグランドがぐちゃぐちゃになってしまったから。出品作品の準備をしてやってきた友人はがっくり。『晴れ男』の異名をとる友人、当日は久しぶりに青空が見えているのだから・・・悔しさはひとしお。
「晴れ男の威力を発揮するのは、当日だけではダメだね〜」などと軽口を叩きながらも、肩が落ちている。コロナ禍の中、様々なイベントが中止になり、久しぶりの出店に張り切っていたのだろう。
気落ちしてばかりもいられない、せっかくの青空、気分直しに出かけよう。
友人たちとは何回か戸隠に行ったことがある。森の空気を吸ってこようと、戸隠に向かう。途中戸隠展望苑に立ち寄ったのは、白く光る蕎麦の花の向こうに青く聳える岩の壁を見たいと思ったからだったが・・・。山は雲で覆われ、蕎麦畑はまだ緑だった。そう言えばここの蕎麦は8月頃に花が咲くのだった。道端の畑には今白い花が広がっているので、ここでも見られるかと思ったのだが、まだ早かったようだ。周囲の森にノリウツギの花が咲き出していた。
車に戻って森林植物園に向かう。みどりが池の前の中央広場はいつになく水びたしだ。毎日降り続ける雨の仕業だ。なるべく水の少ないところを探して歩く。ロックガーデンにはイブキジャコウソウが満開で、私たちはその「じゃこう」の匂いを嗅いでみたりしながら奥へ向かった。土の道は水が溜まってびしょびしょだ。山歩きの予定ではなかったので、今日の友人たちの靴は防水がない街歩き用。幸い、戸隠の木道は一部を残して再生されている。今日はゆっくり木道を歩いて自然を堪能しましょう。おやつもたっぷり持ってきたし・・・。
今日は青空が見えるが、数日の雨が木の葉に残っているのか、触れるとポトリと水滴が落ちる。木道脇の沢は轟々と水が流れている。雪解けどきのような水量だ。
先日蕾だったメタカラコウやバイケイソウが開き出した。オニシモツケ、カラマツソウ、シキンカラマツも蕾を膨らませ、気の早いものは開き始めている。
戸隠の森には鳥の声も多い。さまざまな鳥がいるが、すぐ近くの枝で一羽のシジュウカラがウロウロしている。「あのシジュウカラ、餌を咥えている」と、友人。見上げると木道脇の木に洞があるから、あそこが巣なんじゃないか。「ちょっと離れてあげよう」、私たちが下にいるから、巣に入れないんだ。
少し離れて見ていると、その穴に入っていった。私はカメラを構えて待ったが、雛に餌をあげた親鳥は顔を出すやいなやぱっと飛び立って、その素早い動きに、のぞいた顔は撮れなかった。
大きくなった水芭蕉の葉の影に緑色の実が見える。所々荒らされているのは、熊か、猪か。水芭蕉は根からなぎ倒されたり、実が半分千切れたりしている。今日は荒れた地面に水が溜まり、池のようになっている。
歩いていると木道にいろいろなものが散っているが、所々白っぽいヘラのような形の葉が散り敷いている。見上げると、シナノキ。ヘラのような形のものは花の苞に当たるところだ。まだ丸い蕾がたくさんついている。
森の中は花開くもの、実になるもの、それぞれの季節を見せてくれる。夫の好きなサンカヨウの実は綺麗な青色に染まってきた。
こんなにゆっくり歩いているけれど、やっぱりおやつタイムも必要だよね。背負ってきた荷物を下ろし、それぞれが用意してきたおやつを広げる。おやつの交換をし、森の声を聞きながら休憩。雨続きだったせいか、土曜日にしては人が少ない。
今日のテーマは水、水を纏った森の賑わい。日の光を反射する水滴、草々を包む水の衣、轟々と流れる沢、カモが揺るがす水面の輝き・・・私たちはじっと感じている。
さて再び歩き出す前に記念撮影、ふざける男性陣に「気をつけ」と声をかけたら、本当に気をつけの姿勢になって笑える一枚になった。
一面に咲いていたコバイケイソウは全て終わって、実が膨らんできた。代わりにバイケイソウが緑色の花を開き始めている。たくさん咲いていたオオナルコユリも終わりかけてきた。ぶら下がっている大きな花の中を友人とのぞいてみた。自然の造形は素晴らしいと感じる。
帰りは高台園地に登り、水溜りをよけながら再びみどりが池に戻った。