6月後半、雨は多かったが昼過ぎまで森の中を歩いてくることができた。午後からは家の中で雨の音を聞くという日が続いたが。雷のドラム付きで・・・。ところが7月の雨は朝から降り続いている。地滑りの被害が大きいところもあるくらいだから、雨の音を聞きながら閉じこもることくらいは仕方ないのかもしれない。
雨が多くて喜んでいるのはモウセンゴケかなぁなどと言いながら出かけて、ちょうど咲き始めた小さな白い花を見てきたのは6月も終わろうという頃。地附山には花の種類が多い。ウメガサソウも、クモキリソウも咲いているだろうか。なかなか見つけにくいヤマトキソウもそろそろ咲くだろう。
雨を喜んでいたのはモウセンゴケだけではなかった。シャクジョウソウが一気に顔を出している。こんなに一面に出ているのは初めて見た。
雨が多いから、腐生植物は生きやすいのだろう。粘菌も宝石のように光っている。小さいので遠くから見るとなんだかわからないが、近づいてみると一つ一つがなんとも可愛らしい。
自然の大きなうねりの中で、年によって爆発的に咲くもの、毎年同じように同じ季節に咲くものと、花にもいろいろな違いがあるようだ。今年はイチヤクソウが元気で、あちらこちらに群落を作っている。何回も同じ山に登って初めて気がつくことがなんと多いだろう。
春、たくさん花をつけていたナツグミの実を味わってみようと探したけれど、大きな木にようやく3個だけ見つけることができた。葉の上に歯ブラシのような毛を立てた幼虫がいたから、彼らが食べてしまったのだろうか。作物を食べてしまうヒメシロモンドクガの幼虫らしい。毒はないというが、農家にとってはとても困る幼虫らしい。
7月に入っても続く雨に、しばらく閉じこもっていたが、久しぶりに青空が見えた日に出かけた。カキランが咲き始めるだろうと、話しながら。この日は七夕、夜まで雲が遠のけばいいけれど、難しそうだ。
地附山公園から登って歩き始めるや、「わぁ〜」と声が出る。キノコの大群落。しかも大きい。ガンタケかテングタケか区別がつかない、直径15cmもある傘を開いているかと思えば、真っ白い1cmほどの赤ちゃんが地面を割って顔を出している。10日ほど前の、キノコがない山道と同じところとは思えないくらい。歩いても、歩いてもキノコ。キノコ街道だね。
先日、今にも開きそうな蕾を膨らませていたカキランを見にいく。ところが、蕾は折れて黒く項垂れているではないか。犯人は雨か、動物か、まさか人間じゃないよね・・・、ガッカリ。楽しみにしていたのに。
自然界にはこういうことも多いのだろうと自らを慰めながら、近くの小さな株を見に行く。そこに咲き始めた花を見つけて少し安心したが、毎年楽しみにしていた大きな株の花に会えなかったのがとても残念だ。来年は元気に咲いて欲しいものだ。
この季節のもう一つの楽しみのトンボソウは、先日より蕾が大きくなってきた。下の葉が大きい様子で、オオバノトンボソウかなと思うのだが、はっきりしない。薄い黄緑の距が伸びてきた。
シャクジョウソウは実になりつつある。小さなツボを上に向けて寄り添っているのがなんとも可愛らしい。そういえば今年はクモキリソウの花が小さく、実をつけていないと思っていたが、実になりつつある大きな株を見つけてホッとした。
何年も歩いていて、初めて見た花もある。小さな、小さなピンクの花、アクシバ。ツルコケモモの花にちょっと似ている。同じツツジ科だ。
最近の定番の道を歩き、廃車になった鉄道車輌を見下ろしてから降り始める。オカトラノオが白い花を揺らしている。そして足元のキノコは本当に花(?)盛り。イボイボのついたキノコを見ながら「このキノコもいいけれど、雪だるまのようなモッチリくんにまた会いたいな」名前を忘れた私がそう言いながら降りていくと、あった。柄の直径が傘と同じくらい太いキノコくん。ススケヤマドリタケ、後で調べたら食べられるそうだ。
「残念、とってくれば良かったね」と、言葉ばかりは強気だが、実際にはキノコは見るだけと決めている。
登りと同じ地附山公園に帰る。雨ばかりのこの頃では公園も静かだ。森の入り口にはネジバナが今を盛りに咲いている。白い花穂も数本出ていて、人の声のないのを喜んでいるか、寂しがっているか・・・そんなことを思うのはこちらの思い入れかもしれない。