「今朝は寝不足だ」と夫。続けて「運転はしたくないから、裏山へ行こう」と言う。しかも歌ヶ丘から大峰山へ登った後、先日覚えたコースを歩いて葛山、頼朝山を回ってこようと勢いがいい。我が家からだと、大峰沢に入ってしまえばほとんど車道を通らずに山道を歩けるのが嬉しい。
大峰沢の西側は畑になっていて、ジャガイモの花が咲いている。沢はマント状になったツル植物に覆われている。向こう側まで平らに歩いていけそうだ。深い沢の姿はほとんど見えない。
歌ヶ丘からはどんな花が咲いているだろうとワクワクしながら登る。この季節には登ったことがないから。しかし、今年はヤマツツジがとても少ないせいか、森は緑一色に見える。モミジイチゴの実がオレンジ色に光っているのを見つけて嬉しくなる。倒れた木の幹には粘菌が珊瑚のように光っている。
小さな花を探して、つい下を見て歩いてしまう。所々に白い小さな花が見える。イチヤクソウがもう咲いている。7月の花というイメージだったけれど・・・。斜面の草の中に小さな花を数個つけた一本の花穂がスッとのびている。あまり群落にならず、ぽつりぽつりと咲いている。もっと小さいジンヨウイチヤクソウはもう花の季節を終えて丸い実になり始めた。それぞれの季節があるのだろう。
ひと頑張りで山頂に到着。三角点に行くと、ナルコユリが満開に花を揺らしている。あれ、ここにはアマドコロが咲いていたはずと、見渡すと近いところにアマドコロの群れがすでに花を終えて実をぶら下げている。なかなか見分けがつかないこの二つの花がすぐ近くにあるのは嬉しい。両方の茎を撫でてみると、つるりと丸いのがナルコユリ、稜角がある角ばった感じがするのがアマドコロ。ナルコユリは花を3個から5個ぶら下げている。アマドコロは1個または途中から枝分かれして2個。葉のつき方も違うので慣れれば見るだけでわかるのだろうけれど、個体差もあるので、私たちは茎に触ってみて納得。ちなみにミヤマナルコユリは花を左右に開くようにぶら下げている。
だんだん花も身近になってきて、色々教えてくれるようになった気がする。
大峰山の四阿で休憩。持ってきたお饅頭やお煎餅を食べてのんびりする。山頂には白と黄色の花を同時に見られるヒョウタンボクの花が咲いている。別名金銀木というらしい。
さて、次は葛山へ向かう。一回七曲りの車道まで降りて登り返す。戸隠へ向かうバードラインは、車の数が多い道だが、私たちはすぐ畑の中へ続く道に入る。リンゴ畑を見ながら歩き、葛山への登山道に入っていく。踏み跡は濃く、「たくさんの人に歩かれているようだね」と話しながら登っていくと、上の方は笹に覆われるようになってきた。山頂近くからは北アルプスが見える。梅雨空なのであまり期待はしていなかったが、大きく目の前に立ちはだかるアルプスの迫力に満足。ふと見上げると大きな木が真っ白に化粧している。一面の白い花、満開だ。ヤマボウシとはよく名付けた、木の枝が白い帽子をかぶっているようだ。
広い山頂で再び休憩。さっき登ってきた大峰山がすぐそこに見える。山頂にはヤマホタルブクロがたくさん咲いて、クララの蕾が膨らみ始めている。
家に近い山はのんびり時間の余裕があるからいい。しばらく周囲を眺めてから下ることにする。山頂の端に立つ大きな木の根を踏み締めながら急な道を下る。心の中で「ありがとう」と言いながら木の肌を撫でていく。
頼朝山までの道は歩かれた後がくぼみになっているから、多くの人がここを歩いたのだろう。ウツボグサが濃い紫の花を揺らしている。
ヤマホタルブクロも多い。どんどん緑が濃くなる季節だが、爽やかな風があって汗を感じない。
一旦暗部に降りるとわずかな登り返しで頼朝山だ。目の前に旭山、眼下に長野市街地が見える。線路が見えると「電車が来ないかな」とワクワクするらしい夫はすぐ見晴らしの良いところに立つ。
遠くの山は薄霞の中だったが、市街地はクリアに見える。
しばらく見下ろしていたが、そろそろ帰ろうか。頼朝山の斜面はたくさんの木が伐採されて、深い沢までの急な斜面が見える、足を滑らせたら転げ落ちていきそうだ。南側の斜面だからか、ヤマツツジの赤い色が多い。そろそろ終わりになるが、高い枝にも咲いている。今年は少なかったから、ここでたくさん出会えたのが嬉しい。
少し下ると、目の前が開ける。裾花川に向かって崩れ落ちている旭山の北面が痛々しい。以前下を通った時に崩壊音が響いていた。こちら側からも登山道があったそうだが、現在は通行禁止になっている。登山道が再び通じれば、我が家から歩いて登ることができるのだけれど・・・。
三つの山を歩いて、楽しんだので、頼朝山からまっすぐ帰ることにした。
途中のコンビニでちょっぴり買い物をして家に向かった。