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初夏に衣替え 戸隠森林植物園(長野県)

2021年6月15日(火)

photo・入道雲 戸隠高原
入道雲

戸隠森林植物園のコバイケイソウが見頃ではないかと、梅雨入りしたという中、出かけた。青空が眩しいけれど、山々の頂には黒い雲がかぶさっている。北の空にはモクモクと大きな入道雲が立っている。気をつけながら行こう。

みどりが池の入り口でいつものようにわずかながら寄付金を投じて進む。先日来たときに『八十二森のまなびや』で質問したので、今日は挨拶をしてから歩き始める。戸隠には四季を通じてたくさんの動植物が見られる。生き物の多様性は豊かな自然の証、いつ訪れても自分が解き放されていくような、野生を刺激されるような心地よさがある。

photo・戸隠古道にて 2021.6.9 戸隠高原
戸隠古道にて 2021.6.9

先週水曜日に様子を見に訪れたときに、コバイケイソウが咲き始めていた。みどりが池の辺りに大きな白い穂を見つけたときには嬉しくなったが、さらに水芭蕉の小径に行くと木道が埋もれるほど両脇にコバイケイソウの群落が続いていた。白く小さな花が五分咲きほどで、帰ってから夫と「満開の時に見に行こう」と話した。その日は植物園の中心部だけ巡り、中社から火之御子社、宝光社を巡って帰ったが、戸隠古道をゆっくり歩いていくと、木の根を削ったような、崖のような地形があって面白く、またゆっくり訪ねてみたいところだった。

photo・戸隠古道で出会った花2021.6.9 ジンヨウイチヤクソウ,ヘビイチゴ,シロバナヘビイチゴ,ムラサキサギゴケ,サギゴケ
戸隠古道で出会った花 2021.6.9


photo・どこまでもコバイケイソウ 戸隠森林植物園
どこまでもコバイケイソウ

たった6日経っただけなのに、コバイケイソウは満開になっていた。山の花ではよく知られている大型の花だけれど、3〜4年に一回しか咲かないそうなので、大きな葉ばかり見ることもある。今年は当たり年らしい。森の奥まで続く群落に息を呑む。私たちは戸隠でこれほどの開花を見るのは初めてだ。『花の戸隠高原(田中豊雄著1990ほおずき書籍刊)』を開くと、「戸隠にもわずかですが見られます」と書いてある。30年の月日が戸隠の湿原に変容をもたらしたのだが、これはただ喜んでいいのか、心配なことはないのか、私にはわからない。遠くまで続く見事な白い花の広がりにため息をつくばかり。こんなに純白で美しいが、この花には毒があるそうだ。


photo・戸隠植物園で出会った花 トチノキ,ケナシヤブデマリ,サワフタギ,ナナカマド
木の花と幼虫(シロシタホタルガ)

photo・ギンリョウソウ 戸隠森林植物園
ギンリョウソウ

森の中をゆっくり歩く。ケナシヤブデマリもサワフタギも純白の花を開いている。日の光を受けて森を照らす明かりのようだ。

大きくなった水芭蕉の葉の根元にはギョウジャニンニクの丸い花が揺れ、目を凝らせばギンリョウソウが隠れていたりする。

photo・戸隠植物園で出会った花 ベニバナイチヤクソウ,サルメンエビネ,エビネ,コケイラン,アオチドリ
これからも自然の中で会いたい!

photo・戸隠植物園で出会った小さな花たち ズダヤクシュ,オククルマムグラ,タニギキョウ,オオバツキザサ
小さな花たち

しかし今日のもう一つの目的は目立たない蘭の花を探すこと。なぜか、自然の中の蘭の花は減っている。花屋さんに売っているカトレアやコチョウランなどは確かに派手で目立つけれど、森の中に咲くラン科の花は小さく目立たない色のものも多い。環境の変化によるものか、盗掘によるものか・・・。絶滅への道を辿らないように願うばかりだ。引っ越してすぐの頃、首都圏に住んでいた時はなかなか見られなかったシュンランが元気に花をつけているのを見て嬉しかった。

photo・クリンソウの群落 戸隠森林植物園
クリンソウの群落

今日はアオチドリとコケイランに会うことができた。以前見つけた時も一人でぽつりと立っていたが、これらの花はコバイケイソウのように群落にならないのだろうか。

初夏の森には白や緑の目立たない花が多いが、そんな中で一人クリンソウが頑張っている。アヤメ、オダマキも大柄ではあるが、花の色ではクリンソウに敵わない。水辺には見事な群落があって華やかだ。クリンソウをカメラで狙っていたら一匹のハナバチが私の前にやってきた。シャツに止まって這ってくるので、カメラを向けたら今度はカメラを這い回る。その後もしばらく私の指に遊んだり、カメラに戻ったりしてなかなか離れない。危険はないと思うが、蜂の立てるブンブンという音は意外に大きくてあまり気分の良いものではない。クリンソウの花びらにそっと近づけるが花には見向きもせず、私の指がいいらしい。かなり長い間蜂と遊んでしまった。

photo・戸隠植物園で出会った森の昆虫たち アサギマダラ,ウスバシロチョウ,サトキマダラヒカゲ,ハナバチの仲間
森の昆虫たち

photo・ヒオウギアヤメ 戸隠みどりが池
ヒオウギアヤメ


花を見つけながらぐるぐる歩き回ったので、四阿で休憩することにした。持ってきた煎餅をかじっていると蝶がやって来てカバンやシャツに止まる。一度止まるとなかなか動かない。今度は蝶とおしゃべりをしてから立ち上がった。

photo・四阿で休憩 戸隠森林植物園
四阿で休憩

photo・モリアオガエルの卵がたくさん 戸隠森林植物園みどりが池
モリアオガエルの卵がたくさん

みどりが池の周囲の木にはモリアオガエルの卵がたくさんぶら下がっている。大きなナナカマドの木にゆっくり近づいていったら、たくさんのカエルがいきなり木登りを始めた。びっくりしたが、カエルはもっとびっくりしたのだろう。木の枝でじっと雌が現れるのを待っているそうだが、繁殖のためとはいえ大変なことだね、ご苦労さま。

photo・木に登るモリアオガエル 戸隠森林植物園みどりが池
木に登るモリアオガエル

戸隠森林植物園を後にして飯縄山の懐を大きく回った。今頃咲きそうな花を探しにもう一箇所森に寄り道をしたが、目指す花には会えず、またねと心に呟きながら家に向かった。




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