真っ青な空、2月半ばとは思えないポカポカ陽気に「鳥を見に行ってこようか」と夫。
もちろん小鳥はどこにもいる。裏山や近くの公園だけでなく、我が家の庭にも何種類かやってくるし、近所にはスズメがねぐらを作っていて賑やかなところもある。
私たちが時々「鳥を見に行こう」と言う場所は、長野市の西部を流れる裾花川の渓流だ。家からゆっくり歩いて40〜50分。山沿いに登ったり降ったりしていく時もあれば、昔ながらの民家の間の細道をクネクネと縫うように行く時も、信州大学や県庁の前の大通りを行く時もある。途中の由緒ある寺や神社、歴史を刻んできた味噌蔵などを見ながら行く道ばかりだ。途中の道も楽しめる。
今日は短絡コースで、県庁近くまで行ったが、その後細道に入ってみた。大きな寺や、お稲荷さんがあって、また新コース発見。裾花川手前の八幡・山王堰に出た。裾花川の上流から取り入れた水を、幾つもの用水路を作って流し、広い善光寺平を潤してきたのだ。長野市内(と言っても私たちが歩くのはほとんど北部のみだが)を歩くと、実に様々な水路が見つかる。時には道路の下に隠れ、時には深い沢になって草花に覆われ、時には民家の脇に蛍が舞う。びっくりすることに、水路の上の橋をまた水が流れているところもあるのだ。
その豊かな水が裾花川から引かれている。
鴨や鷺などの水鳥はいつ行っても見ることができるのだが、今日は少ないねと、下流の方を眺めると車がたくさん停まっている。あ、ハヤブサの子育ての季節が始まったのかな。毎年この季節になるとカメラマンがたくさんやってくる。でも、上流の方にも人の姿がたくさん見える。何だろう、首を傾げながら上流に向かって歩いていくと、大きな望遠鏡をのぞいている人が多い。最初に会った婦人に「何が見えるのですか」と聞くと、望遠鏡を覗かせてくれた。「カルガモ」と私が言うと、「オナガガモもね」。月に一度くらいの探鳥会を行っている仲間なのだそうだ。「今日はポカポカと暖かいのでたくさん集まりました」と笑顔。
私と夫は人の集まりから離れて車道に上がり、さらに上流を目指した。水神様の近くに差しかかると、川原の方から大きな音が響いてくる。誰かボールを蹴って遊んでるみたいだ。家の近所でサッカー少年がボールを壁に向かって蹴って練習している時の音に似ている。でももっと大きく、硬い音だね。水神様の方に近寄っていくと、大きな茶色の崖から岩がドーンドーンと転がり落ちている音だった。しばらくして落下は止まったようだ。昨夜の地震の影響だろうか。昨夜は東北で大きな地震があったという。長野も揺れた。もともと崖崩れが川に迫り出しているところだからあまりひどくならないことを祈ろう。
里島水力発電所の橋よりさらに上流は、いつも静かで気持ちが良い。川原のヤナギが、銀色の毛を膨らませている。ネコヤナギだろうか。橋の上から川を見ていると、目の下をカワセミが飛んで行った。速い。ブルーのラインが綺麗だけれど一瞬で遠くの藪の影に消えてしまった。
写真を撮るのは好きだけれど、鳥のように動きの速いものは私の持つ小型カメラではなかなかうまく撮ることができない。それでも、ついカメラを向けてしまうのは、家に帰って図鑑と比べるため。裾花川は野鳥好きな人が多く、長い望遠レンズをつけた大きなカメラを三脚に固定して撮影している。時には撮影した写真を見せてもらうが、大空で餌を渡しているハヤブサのオスとメスのクリアな写真など迫力があって素晴らしい。
比べてちっともクリアではないけれど、私たちが裾花川で出会った鳥さんたちを紹介しておこう。一番多く会うのはオナガガモ、そしてカルガモ、マガモにコガモというカモさんたち。一羽にも会えないという日はまだない。アオサギ、ダイサギもかなり確率高く会える。カワウ、カワガラスが狩りをしている姿も時々見る。
諏訪湖のカワアイサが減って、北に行ったようだという記事を見つけて行ってみたら、本当にカワアイサがいた。その日以後何回か見かけている。セキレイもいつも会える鳥だ。セグロセキレイ、ハクセキレイ、キセキレイ3種類によく出会う。裾花川でのカワセミの写真は撮れていないから、善光寺北のツバメ池にきた写真を。このツバメ池も2020年ついになくなってしまった。
白い大岩壁のあたりには人が多いせいか、カモさんもあまりたくさん見えなかったが、上流にきたらオナガガモやコガモがたくさん日向ぼっこをしていた。ポカポカ陽気は鳥にとっても気持ち良いのかな。
そうそう、裾花川にはもう一つ楽しみがある。それは温泉。春から秋にかけては屋外にある足湯に無料で入ることができる。妻科の足湯。鳥を眺めて川原を歩いてきた足を温泉につけているとまったりと眠くなってくる。冬の間は残念ながら閉じているが、春になったらまた楽しみにこよう。そういえば、エナガの群れが争うように水浴びをしていたことがある。鳥も水浴びが気持ちいいんだね。