久しぶりの大雪。新潟で子供時代を過ごした私にとっては大雪とは言えないけれど、庭を見ると多いところは20cmも積もっている。ほぼ初雪と言ってもいい雪なのにこんなに積もるのは珍しい。
雪かきをしていたら空が赤く染まってくる。朝焼けに裏山が浮かび上がる。ウズウズしてきた。山道を歩きたい。今日は夫には用があったので迷ったが、やはり行こう。我慢は良くない。一人の山歩きはこのページには載せないことにしていたが、用を済ませた夫が、麓の雪道を歩いて、私の足跡を撮影していた。大丈夫!ちゃんと登場するじゃない。
同じところで撮影した長野市を見下ろす写真がある。私が歩いた時は雲が多くて少し霞んでいたが、1時間ちょっと後で夫が歩いた時は晴れて雪景色が綺麗だ。
8時40分、家を出る。雪の量は多いが、凍ってはいない。真っ直ぐ登って善光寺の雲上殿へ。最近花を植えて手入れされている散歩道は真っ白。今日はまだ誰も歩いていない。積雪は10cmほど、前は真っ白、振り返ると自分の靴跡が続いている。そのまま駒弓神社の登り口まで行く。神社の鳥居前も真っ白だ。
ここからはいよいよ山道、神社に一礼して「行ってきます」。
吹き溜りになっているところはかなり深い。20cmは優に超えている。雪道を歩くのは久しぶりなので、すっかり忘れていたが、スパッツを持ってこなかったことにガックリする。山の準備には自信があったんだけれどなぁ・・・。ただありがたいことに、この日履いていたズボンは防水加工がしてある労働用、しかも長めの丈に足首には止めバンドがついていた。ラッキー。靴の上にズボンをかぶせ、きっちりバンドで固定すると大丈夫、雪が入ってこない。
日が登ってきて、少し気温が上がったのだろうか。森の中はあちこちで大きな音を響かせて雪が落下している。梢から落ちた雪は大きな煙幕のようになり、落下してさらに雪煙を吹き上げる。壮大なドラマがあちら、そしてこちらと続く。でもそのドラマは一瞬なので、カメラを構えるのが間に合わない。真っ白になる瞬間を撮りたいと思うが、ズボッズボッとラッセルしながらなので、難しい。目を楽しませてもらえただけで良しとしよう。
吹き溜りになっているところは膝まで埋れてしまう。だ〜れもいない雪の森、気持ちいいなぁ。「よっこいしょ、どっこいしょ」声に出してみる。
何度も歩いている道だから、こんな雪の中でも歩ける。道の凹みも、崖との距離も体が覚えているくらいだ。途中のパワーポイントで、長野市を見下ろす。遠くの志賀高原や菅平はまだ雲がかぶさって霞んでいる。頭の上は真っ青になってきた。嬉しい。
木の実や葉には氷の衣がついて、芸術作品のように輝いている。日が登って溶ける前の一瞬だけ見ることができる。
山頂に着いたのは11時15分、北の空は真っ暗だ。妙高も黒姫も、一番近い飯縄もみんな灰色の壁の向こうだ。この時、高速道路では車が立ち往生してしまって、大変な思いをした人がたくさんいたことを後で知った。灰色の壁の向こうでは大雪になっていたのだ。確かに目の前の空気は恐ろしさに満ちていた。人間の力なんて本当にちっぽけなものだと思い知らされるような。後ろを見れば青空が輝いているのに・・・。
さて、どっちから降ろうか。来た道を帰れば自分の足跡があるから少し楽だと思う。でも、スキー場だったところを見てみたい。先へ進むことにした。昔スキー場だったところも雪の量は変わらない様だが、一瞬青空が見え、飯縄山が姿を現した。すぐ再び雲に飲まれてしまったけれど。
そこから大峰山の分岐まではスキーをするように滑り降りた。適度な雪が積もっている道は岩や木の根でボコボコしているより楽だ。分岐に降りると、今日初めて他の人の足跡を見つけた。大峰山に向かっている、一人の足跡。私も大峰山まで行きたい気がしたが、今日はここまでと決めた。
物見岩から雪の長野市を眺め、岩の下に向かう。ここからはまたまっさらな雪。物見岩の下からたくさんのツララが光るのを見上げてから、家に向かった。