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 梅雨の晴れ間の鉢伏山 1929m、高ボッチ山 1665m(長野県)

2020年7月16日(木) 


山梨の山に登って、その帰りに友人のところに寄り、楽しい語らいの一晩を過ごそうと話し合ったのはしばらく前のこと。6月後半から予定をすり合わせていたのだが、天気予報は雨ばかり。山に登ってから・・・というのは無理みたいだから、今回山は諦めて、建物の中でできることを楽しもうよと、三度目の正直で日程を決めた。

晴れたら、友人の家への途中で山歩きをして行こうという控えめな心がけが良かったのか、久しぶりに青空が見えた。


地図・鉢伏山周辺

家を出たのは渋滞を避けて8時半、長野自動車道を走り、塩尻ICで降りる。高ボッチスカイラインに入る道を角に立ててある看板に従って進むと、最後の曲がり角に車両通行止めの看板が。「えっ、長雨の影響か」。前を走っていた軽自動車がUターンをするのを待っていると、運転席の老人が窓から顔を出して、「それじゃ、あっちの道から登るしかないよ」というようなことを話して走っていった。「別の道があるんだ」「よしついて行こう」。軽々と登っていく軽自動車を、時々見失いながらも追いかけ、いつの間にか高ボッチへの案内が出ている道を走っていた。

photo・深い森
深い森

photo・青空の鉢伏山
青空の鉢伏山

このおじいさんに会わなければ、大きく遠回りすることになり、山頂を踏めたかどうかわからない。ありがたい偶然だった。ただ、後半は完全に見失っていたので、かなり不安になりながら走っていたが・・・。

photo・雪の残る鉢伏山(左に愛車)
雪の残る鉢伏山(左に愛車)

photo・カラマツの森で 5月初旬
カラマツの森で 5月初旬

家を出て2時間10分、高ボッチ展望台のある広々とした高原に到着。駐車場も広い。向こうの端に、先行していた軽自動車が見える。心の中でありがとうと言って、私たちは先を目指す。周囲にはアサマフウロ、アザミ、アヤメ、ワレモコウなどの赤や紫の花がたくさん咲いている。鉢伏山荘の駐車場まではさらに20分ほどかかる。途中の深い森がとても神秘的だ。

高原の花々 1


私たちが初めてここを訪れたのは20年以上前のこと。5月の初旬に来たので、山にはまだ雪が残っていた。高ボッチから鉢伏に、今日と同じ道を走り、帰りは崖の湯温泉に下った。当時、夫はドライブが好きで、山歩きはあまりしたことがなかったが、わざわざ関東から来て、高原のような山歩きだけで帰ったのか・・・と、記憶の底を探ってみると、やっぱり私は欲張りだった。翌日、ほとんど人が歩かない、高原へ続く森の中の道無き道を登って遊んで帰ったのだった。鳥の声だけが響く深い森の中にポッカリ開いた草原、太いカラマツやシラカバの枝がゴロゴロ転がる森、午前中のんびり過ごしてから多忙の日常へ戻ったことを思い出した。

高原の花々 2


さて、現在に戻ろう。鉢伏山荘前の駐車場に車を置いて、高原歩きを楽しむ。見渡す限り斜面を彩るレンゲツツジの明るい緑、花はほとんど終わっているが、若葉がきれいだ。ネバリノギランがツンツン立っている。コウリンカとコウリンタンポポが同じようなオレンジ色でポツポツと目を楽しませてくれる。アサマフウロの淡いピンク色もポツリポツリと開いている。風が強いのだろう、高い木がない高原ののびやかな稜線はどこまでも続いているようで気持ち良い。今日は雲が多く、遠くを隠しているが、時折広がる空は濃い青に澄んでいる。鳥や蝶の写真を撮ったり、花を眺めたりして20分も歩くと山頂だ。三角点のあるところに山頂の看板が立っている。新しい。ここで記念撮影。

photo・出会った蝶
出会った蝶

photo・野鳥
野鳥

昔来た時も写真を撮ったはずと、アルバムを探してみたら、あった。ここにはたくさんの石造物があったようだが、忘れていた。どんどん古くなっていく脳細胞を補ってくれるので、写真は面白い。

photo・山頂で会った鹿
山頂で会った鹿

photo・鉢伏山1929m山頂で
鉢伏山1929m山頂で

ここから平らな山頂を少し進むと右に鳥居、鉢伏大神を祀る石の祠がある。ふと前を見ると鹿、数頭の鹿がこちらを見ている。平和な高原に珍客現るという風にじっとこちらを見ていたが、大きく跳躍して草の向こうに駆けて行った。

鹿を見送り、さらに進むともう一つ山頂の看板が立っている。四阿があり、諏訪湖が見下ろせる展望台だ。

ここでゆっくりおにぎりを食べる。誰も来ない。諏訪湖の右奥には駒ヶ根のほうに続く町並みが見えている。自由に流れていく雲の間から、青空がのぞいたり遠くの町が見下ろせたりする。

photo・諏訪湖を見下ろしながら昼食
諏訪湖を見下ろしながら

photo・諏訪湖を見下ろす
諏訪湖を見下ろす

久しぶりの晴れ間を堪能したので、今度は前鉢伏山に向かう。以前来たときには行かなかったので、こっちは初登頂ということになる。登頂と言うとかっこいいけれど、ほぼ横移動。深い笹原の中の道を、露を払いながら歩く。前鉢伏山の周囲は霧が深く、背の低いカラマツが幻想的に浮かんでいる。白いイブキトラノオと濃い紫のウツボグサが霧の中に浮かぶ。

photo・幻想的な前鉢伏山 1836m
幻想的な前鉢伏山 1836m


霧に包まれた前鉢伏山を早々に引き上げ、車に戻る。このまま崖の湯温泉を通って下るか、高ボッチを経由して来た道を戻るか、迷う。

何はともあれ、高ボッチ山の山頂まで行ってみよう、それから決めようと、高ボッチ高原展望台の駐車場に向かう。途中の深い森の佇まいに再び感動しながら、朝来た道を戻る。

高原の花々 3

photo・針葉樹の森
針葉樹の森

高原の駐車場にはたくさんの車が停まっていた。道が開通したのだろうか。地図を調べると、高ボッチスカイランからそのまま岡谷に下る道があるようだ。こんなに何台もの車が往復しているのだから、道は大丈夫だね。山梨に行くには岡谷に降りたほうが近いよ。などと話しながら車を降り、高ボッチ山に向かう。ゆっくり歩いても、10分はかからない。

photo・囲われた山頂と1級基準点
囲われた山頂と1級基準点

photo・山頂への道
山頂への道

私たちが話しながら歩き始めると、目の前の灌木の影からヤマドリが賑やかに飛び立った。大きいね。あまりに突然の出来事だったので、口を開けて見送るばかり。もう姿が見えなくなってから「近くで見たいなぁ」などと呟いている。

山頂への道は訪ねる人の多さを物語るように全て囲いがつけられている、立派な道だ。そして、広い山頂にも囲いはあった。前は小さなケルンがあっただけの山頂に、立派な公共1級基準点の表示盤があった。「信濃国の重心」とあるそれは、昨年7月に設置されたそうだ。1年前だもの、それは新しいはずだ。

photo・高ボッチ山今昔
高ボッチ山今昔(右:囲いがある今)

一面の草原に広がる緑は美しい。残念ながら遠くの山は見えないが、諏訪湖やその周辺の山が綺麗に見えている。私たちは柵の内側から眺めを楽しんだ。この草原を守るために囲いが必要なのだ。鉢伏山では誰にも会わなかったが、高ボッチ山には散策者がちらほらいる。自然を守りながら、その恩恵をも味わいたいという贅沢な人間、たくさんの工夫や試行錯誤がこれからも必要だろう。


コウリンカのオレンジや、アザミの紫、シシウドの白などに彩られた高原をあとに、岡谷に向かって下り始める。途中目を凝らし、来たときに入った細い横道を探す、あった。「ここからスカイラインに入ったんだね」「随分下だったね」。

あとはもうルンルンと思っていたら甘かった。なんだか崩れそうな細い道を下って登ると、そこには中山道の標識。また分からなくなっちゃった。でも、そこに停まっていた車のお兄さんに聞いて、広い道を下ると、すぐ国道20号線に出てほっとした。今度は、そこにお兄さんがいてくれて感謝。


photo・中山道
中山道

photo・赤スパークリングで乾杯
赤スパークリングで乾杯

そこからはまっしぐらに友人の待つ山梨へ、4時到着。友人と一緒に私たちを待っていてくれた赤のスパークリングワインで乾杯、「今日行ったところなら、キミちゃんも行けるよ」「今度一緒に行こうか」「晴れたらね」と話が弾んだ。


photo・陶芸のまねごと・トンボ玉作り
真剣! 難しいけど楽しい

翌日は朝から雨。土砂降りだ。先人の名言『晴耕雨読』を見習って、家の中で楽しむ。さて、何かと言うと、土捻り、陶芸のまねごとをさせてもらった。先生はタノちゃん。夫はもう一つトンボ玉作りにも挑戦した。山の中ではひょうきんぶりを発揮して笑わせてくれるタノちゃんだが、もの作りの顔は真剣。

午前中たっぷりもの作りに挑戦し、みんなで美味しいランチを食べてから、私たちは帰路についた。




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