2023年。コロナが少し下火になって、街に活気が戻ってきた。バレエ鑑賞も比較的自由にできるようになった。
コロナ禍の中、体を鍛えるために近くの公園で夜レッスンをしたり、運動不足を補うためにランニングマシーンでトレーニングをしたりして励んできた孫は、希望していたバレエ団のオーディションに受かった。3月に高校を卒業、4月からプロの生活が始まった。
小さい頃からプロのダンサーになることを目指してまっしぐらに進んできたことを知っている私たちは心からお祝いを言う。幼い頃、初めてバレエシューズを履いて教えていただいた先生もあの世とやらで喜んでくださっているだろう。今、孫の前にバレエの世界への門が開いたのだ。ここから道が続いているのは、厳しいダンサーの世界だ。
孫の初舞台は「ジゼル」の村娘。1幕だけの登場だ。私と夫は大きな舞台で、孫の顔がわかるだろうかとちょっとばかり心配しながら席についた。しかし案ずることはなかった。村娘たちが楽しそうに踊っている。その中で、踊ることが楽しいよと言っているかのように見えた孫は一目で分かった。
ジゼルとアルブレヒトが楽しそうに踊り、そしてジゼルは騙されていたことに気づいて錯乱し、死んでいく。その後ろで、ジゼルの動きに驚き慌て、悲しむ村娘の役を表現豊かに踊っていた。バレエ団での日々の研鑽の賜物か。
その後海外遠征に参加し、何度も村娘の役を踊って元気に帰ってきた。一つ一つの役をしっかり踊って、これからもっともっと活躍の幅を広げていってほしいと心から応援している。