91 手を握る


小さい子と両親が手をつないでブ〜ランコをしている姿を見かけますが、微笑ましく、周りの人がつい笑顔になっているのも面白い景色です。でも時には子どもの要求が激しすぎて「おっと」などと叫ぶこともあります。見ている人まで、手に汗を握っていたりして。

思い出せば、ずいぶん沢山の手を握る時間を積み重ねて生きてきたことでしょう。両親に手を握ってもらった幼い頃、お友達と手を握って歩いた幼児の頃、恋人と手を握って歩いたことだってあったかもしれません。そして、我が子や孫と手を握って楽しい散歩をしたことも数えきれない、幸せな時間です。


私は、さらに仕事の場でも沢山の生徒たちと色々な場面で手をつながせてもらいました。どんな場面も忘れられない大切な一コマなのですが、仕事の最後の年に高校生の男子と手をつないでいる写真が、我が家に飾ってあります。お別れの時にクラスのみんなが一言書いて、送ってくれた文の表紙です。

photo・レイ君と手を繋ぐ

その写真を見ると思い出すことは山のようにあります。きっと、たった1年だけれど沢山の出来事があった、あの世界に入っていく扉のような写真になっているのでしょう。


レイ君と過ごした時間は楽しくも苦しく、私はいつもレイ君が何を考えているのか教えてもらおうと後を追いかけていたような気がします。その一コマ一コマは大切な私の人生の一コマとして心の奥にしまってありますが、ここではしまったままにして、写真を見てみます。

これは学習発表会の日の下校間際の1枚です。「最後に二人で写真を撮ろうね」と話していたのはどういう成り行きだったか覚えていません。ただ、行事の日は沢山の出来事が起こり、主人公の生徒や担任、保護者それぞれが濃密な時間を過ごしているものですから、脇役の私などはクラスには近寄らず、離れて過ごし、最後の下校の時にようやく「さよなら」を言いに行ったのです。

その時、レイ君が私のところにやってきて「写真」と。びっくりしました。嬉しかったです、レイ君が約束を忘れていなかったことに。クラス担任に何枚か撮ってもらって、レイ君は握っていた私の手を放しました。そうです。近寄ってきたレイ君が、私の手を握ったのです。いつでもレイ君が離れたい時に離れられるように、私は握られるがままになっていました。


子どもたちが自分で判断して行動するとき、隣にいる大人(学校では教師)がすることは信頼して見守ることです。ちょっとした支えが必要なことももちろんありますが、その時は尚更子どもが判断して「ここまで」と、自分で決めることが大切なのでしょう。


photo・指を握って!
(写真掲載の了解を得ています)

我が家に遊びにきた1歳10ヶ月の男の子が、動物園に出掛けたときのことです。小さなモノレールに乗って数分の旅をしました。まだ小さくて椅子に座ると床に足が届かない彼は、動くモノレールの中では不安だったと思います。まだ会ったばかりの私に「ちょっと手を貸してね」と言うかのように、私の親指を握りました(※)。しっかり握って体のバランスを保ち、モノレールが止まったら、自分から放して、トコトコと歩き出しました。こんなに小さくても子どもはちゃんと自分で決めている、素敵な姿でした。




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