87 学ぶ形 2移動ベッドの上で


足が不自由で車椅子を使っている生徒は、養護学校にはたくさん在籍します。ヒロ君もその一人でした。車椅子でも作業がしやすく天板が円形にカットされた机などを使い、学習を進めます。

でも、ヒロ君は筋肉の病気で、自分の力で体幹を保つのが難しい生徒です。背もたれを傾けて、頭部も安定するようにしないと、車椅子に座っていられません。そしてその姿勢も長い時間は無理なのでした。

教室には畳を敷いてある部分があり、そこに横になって活動することもできますが、クラスの生徒みんなで頭を寄せ合って意見を交わしたり、実験したりするときに、畳の上では不便なことも多いのです。


色々な生徒がいますから、一緒に学習をするときは椅子に座ったり、車椅子に座ったりして、目線を高くする必要もありました。物を操作して数の学習をするときなどは、学年の異なる数人の生徒でグループを作り、学習を進めていました。その生徒の中には、畳の上で座った姿勢が苦しいという生徒もいました。余談ですが、私も、歳をとって膝が弱くなった今では、彼らの苦労がよくわかります。

机を二つ並べて、その上にヒロ君が横になって学習したこともあります。机を寄せて、その上に畳を1畳敷いて、ヒロ君の学習場面を作っていました。でも、一回ごとに車椅子から机の上、またその逆と、移動するのも実は大変でした。ヒロ君は痩せていて体重も少なかったのですが、それでも移動の度に抱きかかえて姿勢を整えて学習に臨むのは大変で、机の上に横になってみたけれど、この授業はもう少し移動した方が分かりやすいなどということもあったのです。

ヒロ君は筋肉の病気で、自分では姿勢を変えることができなかったので、転落の心配はないのですが、それでも一定の学習時間を過ごすにはどこか不安定ということもありました。とにかくその時々に合わせてなんとかやりやすいように、見やすいようにと考えながら、学習の場面を作っていました。


ちょうどその頃でした。保健室で使っているベッドが小さい型なので、買い換えるという話を聞いたのは。私は飛んで行って、要らなくなった小さいベッドを使わせて欲しいと頼みました。

我がクラスで使わなければ、そのベッドは廃却処分になったのかもしれませんが、ベッドはやってきました。ベッドの脚には車輪がついているので、そのまま移動できます。

photo・ベットで集会に参加
ベットで集会に参加

こうしてヒロ君は多くの学習をベッドの上で行うことになったのです。


そして、授業から授業へ、学校中をベッドで移動しました。車椅子は食事の時と登下校の時、郊外へ学習に出かけるときなどに限られ、ベッドは我が教室の必須アイテムになったのです。


photo・調理実習もベットで
調理実習もベットで

教室にベッドがあるようになると、ヒロ君以外にもそのベッドを活用する生徒が出てきました。並んで座ってゆっくりお話するという、ソファの役目もベッドにはあったのです。

畳の上に座ってしまうと、目線が低くなってしまうようなとき、ベッドの脇に腰掛けて、なんだか嬉しそうに話をするクラスの生徒たちの姿がありました。




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