79 子どもが飛び立つとき


寒さに向かう季節になると、今年のように酷暑と言われた異常な暑さですら懐かしくなってしまいます。人間って全くわがままなんだからと、苦笑しながら・・・。

10月というのに長野は朝晩めっきり冷え込んで、ストーブをつけてしまうほどです。

それでも中国の瀋陽よりは暖かいようです。中学2年生の孫が9月から瀋陽で暮らしていますが、朝5℃だったと便りに書いています。さすがに長野はまだ10℃を下ることはほとんどありません。


孫は縁あって、中国の国立バレエ団の附属バレエ学校に留学中です。来年1月までの短期期間ですが、まだ中学生ということもあり、親も、そして私たち祖父母も、心配は尽きません。あれこれ準備をし、様々な心配事を言い聞かせ、お金は大丈夫か、パスポートはしっかりしまったか・・・と、何度言ってもまだ足りないような気がしてしまうくらいです。

そして、孫は出発しました。夢に向かって。


孫が中国へ行く時に、私は荷物持ちとして同行しました。その日は大きな台風が日本に上陸し、直前まで飛行機が飛ぶかどうか心配しました。空港で手続きをしている間も次々に欠航便の案内が表示されていきますが、私たちの乗る便は20分遅れでなんとか飛びました。その後の便は、のきなみ欠航や大幅遅れになってしまったそうで、奇跡的だと喜びました。少し揺れましたが、追い風になったのか、思ったより早く瀋陽の空港に到着しました。

私は3日間滞在して、その間孫が滞在する寄宿舎に行って荷物の片付けを手伝ったり、レッスンのクラスを見学させてもらったりしました。

そして孫を一人残して、帰国しました。孫はさわやかな顔をしてこれから過ごす学校の中に戻って行きました。


その時の私の心の動きを正直に言うならば、このままここに残って支えてあげたいという思いが強くわき起こったのです。実際には難しいことでも、思いは自由ですから。

細かい荷物の整理をしてあげたい。苦手な中国の食べ物ばかりでなく美味しいものもたまには食べさせてあげたい。全く分からない中国語だけの世界で、日本語で話を聞いてあげたい・・・。数え上げればキリがないくらい、あれもこれもと思いが浮かんでは消えます。

中国のバレエ学校で

けれど、ふと『親(この場合は祖母)が子(孫)にしてあげられることはないんだ』と、す〜っと目の前が広がるような落ちついた心になりました。

今、この子は自分の羽で飛ぼうとしている。私にできることは、見守ることだけ。間違ってもその羽にぶら下がって彼女の錘りになってしまうことはしてはいけないのだと、うなずけたのでした。


仕事の中でも子どもたちが自ら飛躍しようとする時のエネルギーを感じたことはたくさんありました。よかれと思ってぶら下がってしまうこともあったと思います。見守るということがどれほどのエネルギーを必要とするか、私たちはいつも苦しい決断に迫られていたように思います。





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