75 クッキーパーティ


娘が小学校に入った頃のことです。お友だちを呼んで誕生会をするなどということが少しずつ聞かれるようになっていました。私は仕事にかこつけて、そのような雰囲気に気づかない振りをしていたかも知れません。でも娘に「あなたもお友だちを呼ばなくていいの?」と聞くと、「いいのよ〜」という返事が返ってきていたようにも思います。

そんなある年、ついに「ねぇお母さん、お家でパーティしてもいい?」という言葉を聞くことになりました。そのパーティは、娘の誕生日ではなく、12月、冬休みに入ってからのクリスマスパーティでした。仕事をしていた私も休める日です。

ドキッ、料理が苦手な私、さて何を用意したらいいのだろう?ケーキは必須?小学生の好きなメニューって何だろう?などと、頭の中を色々なレシピが駆け巡りました。

そんな親の思いを察したかのように、娘はのんびりとこう言いました。
「あのね、みんなでクッキーを作ってみたいの。だから、お母さん教えてね」
そしてさらに続けて、
「ケーキはみんなが自分の食べたいものを持ってくるから、飲み物だけ用意してね」。


その頃、我が家では娘と息子と一緒に時々クッキーを焼いていました。自分の好きな形にして焼くのがお楽しみだったのです。クッキーは料理が苦手な私にもなんとか美味しくできるので、時々みんなで作るのが楽しみでした。そんな娘の話につられたのか、自分たちもクッキーを焼いてみたいという友だちが集まって「クッキー焼きクリスマスパーティ」なるものを考えたようでした。


さて、当日やってきた小学生の女の子達はなんと楽しそうだったことでしょう。6畳の部屋を小麦粉で真っ白にしながら、ワイワイペチャクチャ、小鳥がさえずっているように賑やかにおしゃべりしながら、クッキーを作りました。

最初に「お母さんはやり方を教えてくれるだけでいいよ。困ったら助けてね」とのお達し。静かに見守りながら、さりげなく手助けをする・・・ああ、これって・・・仕事と同じじゃない。なんだか、私の心は温かくなりました。子ども達は、自分のやりたいことは一生懸命にやるのです。誰に強制された訳でもなく、けれど自分がやりたいと思ったことは、難しくても真剣に取り組みます。

部屋のちゃぶ台を囲んで一生懸命作ったそれぞれのクッキーを、台所にそっと持って行って、オーブンに並べます。焼き上がるまでの真剣な空気。真剣な顔。


すてきなお母さんたちは、おいしいクッキーをおやつに焼いてあげても、一緒にクッキーを作るのはまだ早いと思っているのでしょうか。確かに彼女たちのクッキー作りは、家の中を粉だらけにしてしまいます。

でも、あの笑顔を見てください。なんてすてきな笑顔でしょう。


私は娘によく言われます。「お母さんは、私の友だちの名前覚えていないでしょう」と。はいその通りです。名前は覚えていないけれど、あのパーティの、あの空間と、みんなのはじける笑顔は覚えています。そんなクッキーパーティを思いついた娘の笑顔も!


もちろん片付けは大変でしたけれどね。




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