46 指折り数えて


養護学校(現在は特別支援学校)の知的障害教育課程高等部で勤務していたときのことです。高等部の1年から3年の生徒を学力の様子で分けて、各教科のグループ構成をしていました。私が担当した数学のグループの担当教員は私一人でした。

数学の時間はもちろんですが、日々物を数えたりすることはあります。そんな時に、生徒たちの多くは両手を出して指を折って考えていました。足す方はともかく、引く方になると頭の中だけでは混乱するようです。そして彼らは、その辺りの計算が苦手だという意識を持っている生徒たちでした。

入学した小学生がタイルを使って学習しますが、やはり実物を動かして考えることは大切です。けれど、私の生徒たちは高等部の生徒、高校生というプライドもあります。小学1年生の教材をそのまま使う訳にはいきません(もちろん簡単には言い切れませんが)。


これまでの学習経験の中で苦手意識を持ってしまった生徒たちですが、学ぶことや好奇心が無い訳ではありません。今までに見たことがない物や、ちょっと意外な物などには抵抗無く興味を持って取り組みます。

写真・ひき棒1

それで、「みんなの苦手な引き算のお助け棒を作りましょう」と、提案しました。1から10までの数字を書いた紙と、それをしまい込む屋根付きの家。

見本を見ながら、生徒たちはピンクや黄色の画用紙で作りました。枠を印刷して、準備した物です。

切って、貼って、数字を書いて、家は出来上がりです。

次に、2枚の色の違う厚紙に1から10までの数字を書いて、裏返しても同じように左から数字が書いてあるように貼り合わせます。これでお助け棒は出来上がり。


みんな、これは一体何?と、首を傾げています。中には、自分で書いた数字の氾濫に頭が痛いと言っている生徒もいます。

そうです。1の家から10の家まで、家が10個もできちゃったからです。計算への苦手意識を持つ生徒たちの中には、数字がいくつも並んでいるとうまく読み取って処理できない人もいるのです。


私は「みんな、先生に問題出して」と、言いました。「10引くいくつの問題だよ」と。いつも必ず両手の指を使って計算する男子生徒がすぐ「10引く6」と、大きな声で言いました。

写真・ひき棒2

数字棒をみんなの前に出して、裏も表も10個あるよねと確認。「ここから6個引くんだから、6個はお家の中に入って見えなくなります」と言いながら、6の家を数字棒にかぶせました。

「さぁ、何個残っているんだろう、答えは・・・」と、数字棒を家がかぶさったまま裏返しました。すると、残っている数がよくわかります。

「4だ!」「引き算するから、ひき棒で〜す」と命名する生徒もいて、賑やかです。

こうして、問題を解きながら使っているうちに、指折り数える姿はなくなりました。そしてしばらくすると、ひき棒もいつの間にか役割を終えて、みんな10までの暗算ができるようになってしまいました。





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