4 パソコン


まだ臨時任用だった私は、一つの勤務が終わると、別のクラスに行くこともありました。


「知的障害教育課程」から「肢体不自由教育課程」に移ると、そこではまた違う学習が行われています。高校3年の女の子は当時まだ一般的ではなかったワープロの学習をしていました。私はテレビのような大きなワープロが並ぶ部屋に入り、びっくりしました。そのとき私はワープロが使えませんでした。

引き継ぎでは、生徒がワープロを立ち上げて文字入力の学習をして、またスイッチを切ることができるので、傍らで見守れば良いとのことでした。手の動きが不自由な彼女にとって、文字を書くよりキーを打つ方が簡単な作業なのでした。


1日目は感心して眺めていました。学習が終わる時間になると彼女は確かにスイッチを切って、ワープロを終了させました。1時間かけて打ちこんだ「あいうえお、かきくけこ・・・」は、瞬時に消えました。


「次の授業時間は何を打つの」と聞くと、変なこと聞く人と言うように私の顔を見て、「同じ練習だよ」と言います。

「書いた字を保存しておかないの」と聞くと、そこまではまだ操作できないとのことです。


その日の放課後、私はワープロができる教員に頼んで、操作を教えてもらいました。何より保存の仕方をしっかり覚えることにしました。そして、印刷する方法も。

機械は大きなものでしたが、その都度フロッピーを差し込んで操作をしていました。学習用の保存フロッピーを用意してもらって次の学習に臨みました。


そして、彼女に提案したのです。あいうえおを打つのはお休みして、手紙を書きませんかと。まだまだキーボードのひらがなを1文字ずつ探して打っているので、なかなか進みませんが、保存しておけば、次の学習の時間に続きを打つことができます。

彼女は大喜びで挑戦しました。


私が勤務する前に教えてくれていた担任の先生に宛てて、ゆっくり確実に言いたいことを積み重ねて行きました。

担任の先生は3ヶ月あまりの研修に行っているので、代わりに私が勤務しています。


毎日の様子が少しずつ文字になり、私の勤務が終わるより早く手紙は書き上がりました。 印刷した紙を丁寧に折り、封筒に入れ・・・子ども達の顔が輝くと言うのはこのような時でしょう。

私たちは二人で近くのポストまでその手紙を投函しに行きました。


ワープロで書く学習を続けていたら、いつの間にか毎日数ページの日記を書いてくるようになっていました。毎日話したい事がたくさんあるのだそうです。


そして、その後勤務校が変わった私にも手紙をくれるようになりました。





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