31 鳩はどこに


そうそう、善光寺と言えば全国的な観光地、いえ、最近では外国からもたくさんの人が訪れる観光地になりました。我が家は、長野駅から善光寺さんを通り抜けた辺りにあります。我が家から長野の繁華街というか、商店などへ行くためには善光寺さんの境内を通っていくのが一番近道です。ということで、長野に引っ越しをしてきてから善光寺さんは毎日と言っていいくらい通ります。広い境内には森も池も、花の庭もあり、本堂、お守りなどの授与所、山門、経蔵、宝物殿などがあり、我が家の孫たちは長野に来ると善光寺さんを歩きます。彼らにとってはちょっとしたテーマパークのようなものかもしれません。信仰で訪れるのではないですが、敬虔な気配を感じる空間でもあり、そんな感じもいいのかもしれません。


さて、善光寺さんを毎日のように通っていると、面白い出来事にぶつかります。

山門に「善光寺」と書かれた大きな額があって、そこには小鳥のモチーフが5個隠されています。この額の『鳩文字』は有名で、いつ通ってもたくさんの参拝者がガイドさんから説明を受けています。

写真・善光寺山門の鳩文字の額

でもまれに静かなときもあります。その日もあまり人がいなく、山門前の広場は静かでした。市街地へ向かって山門をくぐり抜けた私は、一人のおばあちゃんを見つけました。どうしておばあちゃんと分かったかというと、すぐ脇にかわいい女の子がいたからです。4、5歳でしょうか。

お孫さんと一緒に善光寺さんを歩いていたおばあちゃんは、立ち止まって鳩字の額を見上げたところでした。そのおばあちゃんは、善光寺さんの鳩字の額についてよく知っているようです。金色に輝く『善光寺』という文字は、実際は大きいのですが、山門自体がとても大きいので、下から見上げるとさしもの大きな額も小さく見えます。


おばあちゃんは、隣の小さな女の子に「あそこに鳥が見えるかい?」と聞いています。でもおばあちゃんは、孫の方を見ないで、金色の額の方を見あげています。一生懸命見ているといいことがあるかのように。

お孫さんの女の子は首をぐっとあげました。そして首を回し屋根の上を一生懸命見ています。おばあちゃんが見ている方向とは全く違う屋根の上に、ちょうど首を出した鳩を見つけました。嬉しそうに「あっ、いたいた、ひとつ、ふたつ、あ、いっぱい」と指差しながら叫びました。

おばあちゃんは、孫を見ず、額ばかり見ているので、孫がどこを見て言っているかわかりません。そして、「えらいねぇ、よく見つけたね」と、うなずくのです。

私は、なんだか離れがたくて一部始終を見ていました。お孫さんは屋根の上から顔を出したり、また隠れたりする鳩をじーっと見ています。

なんて微笑ましく、とんちんかんな図でしょう。

写真・善光寺山門の鳩文字の額と鳩

こんなことが日々起こっていて、私は元気をもらっています。そして同時に、自分がしてきた『教育』というものを今更ながら振り返ります。

私もおばあちゃんと同じようにとんちんかんだったかもしれません。見ているところが違うのに、独りよがりに子どもたちの行動を決めていたことがなかったなんて言えません。それでも「えらいねぇ」の一言がすくいになったでしょうか。





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