2 しゅくだい


「みえこせんせ しくだい くなさい」

勤務を終えて、急いで家に向かって歩いていると携帯電話にメールが届きました。 前任校の卒業生からでした。高等部の3年間担任したあと、一緒に卒業して、私は今の学校に転勤しました。


13人の生徒に、毎日国語と算数のプリントを作って宿題として渡していました。また、日記帳を毎日書いて来ることを宿題としている生徒もいました。 私は宿題というものをあまり好きではありません。それなのになぜ、と問われれば、彼らがほしがるからとでも言いましょうか。


そしてもちろん、そこにはある思いもあります。 数になじみ、文字になじみ、できたという思いを持ってほしい。 自分の気持ちを表現することに臆病にならないでほしい。


ですから当然、生徒のその時の姿に合わせて、宿題の内容はそれぞれ違います。とは言うものの、10人以上の生徒達一人一人に全く違うプリントを毎日用意することは私にはできませんでした。同じような内容で大丈夫と思える生徒達には、数人コピーしたものを用意させてもらいました。それでも5、6種類のプリントを毎日用意するのはかなり苦しく、休日に作り置きしてなんとかしのいだものです。


メールをくれた女の子は、3年生になるまで日記だけは毎日書いてきましたが、「宿題いりません」ときっぱり言っていました。

ところが3年になってしばらくして突然、友達の国語のプリントを覗き込んで「私にも宿題作ってください」と、これまたきっぱり言いました。
彼女は文字を書くことはかなり苦手だったので、他の生徒と同じものではすぐ嫌になってしまうと思い、彼女用のプリントを作ることにしました。それから毎日欠かさず写し書きのプリントをやってきました。


そして卒業。これまでやってきた宿題を欲しいというので、お祝いと言うのは疑問ですが・・・、作ってきた原本を束ねてプレゼントしました。


その後何年も彼女は家で自分の意志でプリント学習を続け、無くなるとメールをしてくるのです。いいえ、お母さんに聞くところによると1枚の原本を何回もコピーして書いているそうです。それどころか、旅行に行くときにさえ、そのプリントを携えて行くそうです。あまりに同じプリントばかり書いていて飽きてくると、新しい課題を作ってくださいとメールで知らせてきます。


だんだんメールの文字も確かになり、最近届いたものは、
「美枝子先生しゆくだいおねがいします」とあり、最後にはかわいい鉛筆とノートの絵文字が加えられていました。
そして「今、何しているの おやすみなさいzzz」





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