19 地球は回る 2


よそのクラスの生徒と、卒業式の練習をさぼってしまったのです。担任の先生が聞いたら怒るだろうなぁ。もう卒業しちゃってかれこれ20数年、時効になったかな・・・。


私は教室で一人、心に引っかかっていた教材を作っていました。高等部1年の我がクラスの男の子、太陽系の惑星を太陽に近い順に全部言えます。でもその彼は、太陽が地球の周りを回っていると思い込んでいることを最近知りました。1年の残り少ない理科の時間、彼のプライドを守りながら地球と太陽の関係をもう一度考えるチャンスを作りたいと思っていたのです。

もう少しで彼らは2年生に進級です。その日は卒業式の練習があり、高等部の生徒は体育館の練習に参加することになっていました。私のクラスの生徒は欠席が多く、登校した生徒はもうひとりの担任と一緒に行ったので、私はつかの間の空き時間になんとか教材を完成させようと思っていました。


発泡スチロールの地球儀を作り、夜と昼が見て分かるような仕組みを付けようと、黒ボール紙をあれこれやって苦労しているところへ、杉山君が入ってきました。

「先生、何してるの?」 「えーとね、教材作り」。
「見てていい?」
「先生はいいけど、集会に行かなくていいの?」
・ ・・黙って、杉山君は隣に座りました。しばらく見ていて、
「これ、地球でしょ。ここは夜でしょ」。
それからまたしばらくして、
「これ、どうしたいの?」。

私は地球が太陽の周りを回ることで影ができ、しかも地球自身も回るから影のできるところが動いていくということを表したいのだと、制作途中の地球儀を回しながら話しました。

絵・地球と月の立体模型図

「ふうん、面白そう」と見ていた杉山君が、
「先生、こここうしたら?」と、竹ヒゴを通す穴をスパッと指し示してくれたのです。


思わず、「ワー、なるほど。杉山君、頭いいねぇ」と、言ってしまったのでした。

そのあと、二人でああだこうだと言いながら地球を転がし、みんなが集会をやっている時間に一つの教材ができあがりました。


この杉山君、時々私のクラスにさぼりに来ていました。そして、私はなにかしら新しい視点をもらっていたのです。ずっとずっと昔の一コマ・・・時効にしてください。


理科の時間、生徒たちは出来上がった地球儀と大きな赤いバルーン(太陽のつもり)を前に、どのように動いたらいいか話し合いました。太陽がとても大きいことを知っている彼らはまず太陽のバルーンを、動くことが苦手な生徒に支えてもらい、地球儀の竹ヒゴを持ってその周りを別の生徒が歩き始めました。黒い影の紙をちゃんと太陽の反対側に回して歩きます。「あ、日本がずっと昼だ!」気がつきました。そして、今度は地球も回しながらゆっくり歩きます。日本に昼と夜がやってきました。





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