18 地球は回る 1


卒業した杉山君が遊びにきました。就職したところでなかなかうまくいかず苦労しているという話を進路指導の教員から聞いていました。でも、気持ちを切り替えて、この4月から行き始めたところでは楽しくやっているようです。


杉山君が高等部に在学していたときは、私が担当していたクラスとは教育課程も違い、学年も違い、私は一緒に授業をしたことがありません。でも、彼はなぜか私のクラスに時々遊びにきていました。

「しばらく見なかったね」「3ヶ月勤めることができたら来ようと思っていたんです。今日が3ヶ月目の給料日なんです」。
「今日の予定は?」「進路の先生に挨拶してきたから、学校の中を少し歩いてみて、昼前に帰ろうと思っているんです」。
「今日は、授業参観やっているクラスが多いよ」「あ、そうですか。・・・じゃ校内を回るのは無理ですかね」。

そんな会話のあと、「このクラスは授業参観が別の日になって、掃除と進路についての特活をやることになっているから、先輩として話をしてくれたり、掃除を手伝ってくれたりすると嬉しいな」と私が言うと、杉山君は気持ちよく承諾してくれました。

クラスの男子3人は「こんにちは」と挨拶しながらも、眩しそうに杉山君を見ています。就職して毎日働いている先輩は貫録があるようです。


懐かしい顔を見つけて教室をのぞく教師たちに、「先輩にお願いして、少し時間をもらったんです。先輩の経験を話してくれたり、掃除を手伝ってくれたりしているんです」と、私は説明しました。

それを聞いていた杉山君は、教師が去ったとたんに気をつけの姿勢になり、「そういうふうに言ってもらえると、僕ほんとうに助かります」と、頭を下げました。そのお辞儀の仕方はていねいで、苦労はあったけれど、自分の力にできたんだなと感じました。

それから杉山君は、「僕、掃除の仕方については自身があるんです」と言いながら、てきぱきと掃除を始めました。

クラスの男子たちも杉山君に教えられながら掃除を始めました。自信があると言っただけに箒の使い方がうまく、細かいところの埃もきれいに取っていきます。日ごろペチャクチャふざけている男子3人も、そんな先輩の姿に尊敬のまなざしを送っていました。


クラスの中がきれいになった時、杉山君が「そう言えば、先生と一緒によく何かしましたね」と言いました。 「地球儀作るのを手伝ってくれたことがあったね。あれ、まだあるよ」と、私が言うと、 「まだあるんですか?見たいなぁ」。


私が引っ張り出してきた地球儀を手にし、クルクル回してみたり、かざしてみたりしながら「懐かしいなぁ」と言うので、「でもこれを作るとき、集会さぼっちゃったんだよね」と、思わず私は苦笑いしてしまいました。

写真・地球と月の立体模型

すると、杉山君は地球儀を顔の前に出し、 「でも先生・・・」いたずら小僧のような顔になりました。
そして、「集会出るより、こっちの方がずっと勉強になってたりして・・・」と、ニヤッと笑いました。





  • サブメニュー3のイメージ画像 次のページ 4-19「地球は回る 2」へ

  • サブメニュー3のイメージ画像 Gallery3特別支援教育へ戻る

  • サブメニューホームのイメージ画像 ホームへ戻る