79 瑪瑙山 1748m(長野県) 
    2019年7月17日

地図・瑪瑙山


長梅雨と言うのだろうか。ざんざん降っているのではないが、雲が重い。毎日湿っぽい空気が漂い、乾燥しがちな長野でも、珍しく蒸し蒸しする。

青空が広がるのはわずかの間で、すぐに黒い雲が駆け足でやってくる。なかなか山へ出かけられなくて、気持ちがささくれる。

その日の朝は、久しぶりの青空だった。溜め込んだ大物洗濯を干し終わり、庭でどんどん収穫できるので気になっていた、キューリの佃煮も鍋に仕込み、時計を見ると8時だった。

こんなふうに晴れるのは久しぶり、山に行きたいね。明日はまた雨らしいよ。夫と話しながらどこへ行こうかと頭の中のデータをチェック。遠くには雲がかかっているから、見晴らしは期待できないね。もう時間が遅いから、遠くの山やハードなコースは無理だね。

あれこれ話して、やっぱり慣れた道がいいかな・・・と、戸隠スキー場の奥の瑪瑙山に登ってみることにした。

スキーリフト最高地点からわずかに滑ったところにスキーを置いて、急な雪の斜面をザクザク登ると、瑪瑙山。戸隠スキー場を訪れた時にはいつも登っていた。と言っても、ほとんどリフトで。山頂に立つと、目の前に戸隠連峰、高妻山の白い岩山が聳えるのは圧巻。晴れれば、北アルプスが見渡せる。

1997年3月 瑪瑙山からの展望(数枚の写真を連結)

スキーのシーズンオフには、飯縄山への登山道の一つとして歩かれている。のんびり出発の私たちは、飯縄山は今度にして、途中の瑪瑙山まで行ってくることにしよう。夏の花を楽しみながらの楽ちん登山。お菓子をいっぱい持って、おにぎりを持って、出発。


戸隠のスキー場、越水ゲレンデ駐車場に着く頃には、雲が大きく空に広がり、青空は隠れてしまった。やっぱり梅雨なんだね、仕方ないか。登山靴を履いて歩き出す。とりつきが分かりにくく、ゲレンデの草原に踏み込む。草原には踏み跡があるような気がして、ずんずん進む。周りにはウツボグサ、ノアザミの紫が美しい。カラマツソウ、ヤマブキショウマの純白、ハナニガナの黄色も鮮やかだ。名前がわからないイネ科の草やヨツバヒヨドリなどの大型の植物が茂っている。その花を求めてたくさんの蝶が飛び交っている。

花とチョウ

大草原の見事な蝶たちに大喜び、あっちを向いたり、こっちを見たりして、写真を撮りながらどんどん登る。

足元は湿地状態のところも多く、モウセンゴケが白い蕾を持ち上げている。草を分けながら歩いているうちに、露でズボンの裾がびしょびしょになってきた。

しばらく登ると、道らしきものは全く無くなった。草をかき分け、かき分け、進む。視界を遮るほど、草丈が高くないので、先を見上げ、下を見下ろししながらゆっくり進んでいく。実は面白い。知らない山、初めての山だったら、たとえ地図があってもこの状態では進まなかったかもしれない。冬、何度も滑り降りたコースのゲレンデだから、どこかに安心感がある。

草原をゆく

しかし、モミジイチゴが一面に生えている斜面には参った。服もズボンも突き抜けて棘が攻撃してくる。今年芽吹いた小さなものから、私の肩まであるような大きなものまで、次々に攻撃してくる。根元から足で分けながら進むのだが、避けたと思うと次のがしっかり枝を張っているので、なかなか手強い。格闘に疲れて、ゲレンデ脇の岩場で少し休憩。

再び草をこぎこぎ、ようやく稜線に飛び出す。しかし稜線上もまばらではあったが、似たような背の高い草の原で、ちょうど雲が切れて広がった青空からさしてくる日差しが強い。暑い。それでも時おり吹きぬける風は涼しく、相変わらず棘いっぱいのモミジイチゴと格闘しながら、さらに上の稜線に出た。

山上の池

標高が高くなったので、草丈は低くなり、いくらか歩きやすい。目の前になかなか立派な池がある。水芭蕉の葉が巨大になって茂っている。木の枝にはモリアオガエルの卵がぶら下がり、池にも白い塊が浮いている。ここでふ化したのだろう。そしてふと池のほとりを見回すと、立派な木の道標が。今日初めて見る道標は上が瑪瑙山、下がキャンプ場と書いてあった。

立派な道標

ちゃんと道があるんだね」「でも、下りはキャンプ場に行ってしまうよ。遠いなぁ」などと話しながら少し登ると、また道標。今度は左へ森の中を登っていく、瑪瑙山への道。ところが、右を見ると、もう一つ道標があった。越水ゲレンデ駐車場への道が、森の中に下っている。こんな立派な道があるんだ、一体どこで見逃したんだろう。帰りはこの道を歩こうね。

まず左、山頂へ。森の中の道は、藪こぎとは打って変わって歩きやすかった。長雨のせいか、ぬかるんだところもあったが、なんのその。苔むした森は涼しく、足元にポツポツとのぞいているギンリョウソウを数えながら進む。

瑪瑙山1748mの山頂で

あっという間に最後の稜線に飛び出した。あいにく雲が低く、見晴らしは良くないが、懐かしいゲレンデが見下ろせる。今は寂しい、リフトの駅が冬を待っている。最高点のリフト駅には立派な屋根がついている。夏道は、リフトの手前から登りに入る。ひと登りで、瑪瑙山頂上に着いた。雲は少し遠慮してくれて、目の前には飯縄山の山頂が見える。何度も登った、山頂だ。時々漂うように雲が覆い、また現れる。

誰もいない山頂で、おにぎりを食べることにした。ぬかるみと、草の露でぐしょぐしょに濡れた靴や靴下を脱ぎ、石の上に干す。裸足の足を投げ出して、気持ち良い昼食。ところが嬉しい青空は、厳しい暑さをも連れてきた。山頂には高い木がないので、もろに日差しを受ける。雨用に持ってきた傘をさしながら、おにぎりをパクつく夫は、漫画の一コマのようでおかしい。

暑い!

しばらく山上の二人気分を味わっていたが、再び青空が隠れてきたのを潮に下ることにした。帰りは、見つけた道標を頼りに登山道を歩く。深いブナやカンバの森が続く、なかなか立派な登山道だ。払ってある笹がまだ新しい。最近手入れをしたのだろう、ありがたい。

森の中の登山道

ただひたすら下りながら、「上りは間違えたけど、面白かったね。この道を往復で歩くのはつまらないよね」とうなずきあう。「負け惜しみじゃないよ」と、笑いながら・・・。



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