63 黒斑山 2404m(長野県・群馬県) 
         2018年10月29日(月曜日)


秋もたけなわ、そろそろ雪の知らせも聞かれるようになった。高い山に行くのは難しくなってくる。できれば電車で行ける山がいいな・・・と言いながら、考える。

電車の駅から歩ける山は、それほど多くない。まして長野駅から出発して日帰りで往復できる山となると・・・。春まで行けなくなりそうな2千メートル以上の山に行けるうちに行っておきたいし・・・。

「前掛山まで行ってこようか」と言う夫に、私はびっくり。しばらく警戒レベルが強くて登れなかった浅間山だが、今は規制が緩んでいる。15年ほど前に山頂を踏んだのもカラマツの黄葉が美しい秋だった。あの時は浅間山の大きな斜面の途中で特有の火山臭にまいったよね。

「行きたい気持ちはあるけれど、日帰りなら黒斑山までだね」と私。秋の日は釣瓶落とし・・・、自分たちの体力を自覚して言う。

というわけで、黒斑山を目指すことになった。秋の澄んだ空気の中、雄大な浅間山を眺めてこようと、早起きをした。


チェリーパークラインから

6時10分、おにぎりを持って出発。上信越自動車道を湯ノ丸インターで下り、しばらく浅間サンラインを走る。車坂峠までのチェリーパークラインは、急なカーブが多く傾斜もきつい登りが続く。標高2千メートル近くまで一気に登ろうというのだから・・・。ここをバスが走るというから大変だ。峠にあるスキー場は『アサマ2000パーク』という、まさしく名の通り。私たちは滑ったことがないけれど、息子が以前来たことがあるそうだ。雪はガリガリに凍っているんだろうな。

登るにつれ、山は黄金色に輝いてきた。カラマツが今を盛りと山肌を染めている。いや、すこ〜し遅めか。ハラハラ、ハラハラと、風もないのに舞い降りてくる葉が日を反射して光る。車はありがたい、黄金のトンネルをどんどん登って、車坂峠に着いた。


高峰山、三方ヶ峰、東篭ノ登山、水ノ塔山

霜柱、赤い実はゴゼンタチバナ

さて、車坂に着くと足ごしらえをして、表コースを行く。ここからは表コース、中コースがあり、どちらもトーミの頭まで続いている。15年ほど前に浅間山を登った時は多分表コースを行ったと思う。今回も少し長いけれど、表コースを行くことにした。歩き始めるとすぐ後ろが開ける。浅間山を囲む古い火山群という三方ヶ峰、東篭ノ登山、水ノ塔山がずらりと並ぶ風景は圧巻だ。今年春に登った山々だ。東篭ノ登山、水ノ塔山の間の赤ゾレが痛々しい。さらに左には高峰山がゆったりと横たわっている。

ツガザクラ     シラタマノキ

足元は一面に高い霜柱。手が凍える。山にはもう完全に冬が来ている。それでも、まだコケモモの実が枝先に残っている。山の恵を少し味見させてもらった。酸っぱい味は体を元気にする。登山道の脇一面に広がるシラタマノキの葉の間に時々白い実が光る。霜に覆われた世界に残る秋の名残を見つけながら道を進む。ゆっくり歩くことが楽しい。

もっとなだらかな道を歩いた気がするけれど・・・と首を傾げながら、一気に下り、登り返す。シラビソだろうか、緑の森を歩き、南が開けるところに出た。雲が多く、思っていたより視界は霞んでいる。山並みが続くずっと向こうにきれいな三角の頂が見える、富士山だ。もう白くなっているのが分かる。

霜の芸術


再び森の中に入り、急な坂道を上る。沢山の人が歩くから道が崩れている。ていねいに敷かれた丸太の階段も崩れて傾いている。足元に気をつけながら霜柱の光る道を行くと赤いシェルターが立っている。いざという時の避難小屋だ。急な雷の時も逃げ込めるらしい。そこからはすぐ槍ケ鞘の頂。ゴツゴツした岩が垂直に切り立っている、恐ろしい絶景。しかし雲がものすごい勢いで流れ、目の前にドーンとそびえている浅間山は上半分が見えない。

富士山が見えた

ここからは尾根伝いにトーミの頭へ、そしてその先の黒斑山まで行く。崩れた崖の上に続く稜線はさらに蛇骨岳、仙人岳、そしてJバンドへと続いている。

トーミの頭への急な登りはガレ場のようになっているが、日が当たって霜が解け、滑りやすい。気をつけて行こう。

槍ケ鞘のシェルター

岩が切り立った見晴らしのよい登山道なので、夫に先に行ってもらい、下りの途中からカメラを構えてみた。ところが、雄大な風景の中で人間は豆粒のようなもの。赤い服を着ているからかろうじて見えるものの・・・。点になった夫がこっちを振り向くのをカメラに収め、私も後を追った。

トーミの頭への登り

風が強い。トーミの頭では油断すると吹き飛ばされそうだ。ゆっくりしたいところだけれど、一番先端では立っているのが怖い。浅間山の山頂は隠れているけれど、剣ヶ峰、牙山のごつい山容の向こうには遠く妙義山や、軽井沢方面の町が見おろせる。上空だけ雲が濃く、流れているようだ。

下の湯の平は葉の海、浅間山へはここから崖を一気に下る。もちろん帰りは登ることになる。前に登っている時、崖の途中にカモシカが現れ、ポーズをとるように岩の上にじっと立っていたことを思い出す。おかしなもので同じところにまたいないかなと見てしまう。

トーミの頭


トーミの頭から黒斑山までは早かった。崖っぷちではなく、樹林帯の中に入って登る。所々崖の上に立つ展望場所が開いていて、目の前に浅間山がそびえている・・・のだが、今日は上半分を雲が洗っている。消えそうになっては新たな雲が吹き寄せ、なかなか晴れない。あっというまに黒斑山に着いた。

男性が一人岩に座って浅間山を眺めている。まずは記念写真と思ってカメラを出していると、若い男性二人が登って来た。お願いして、二人並んで、シャッターを押してもらう。浅間山はまだ雲をかぶっているが、二人一緒の写真はなかなか撮れないからよしとしよう。

10時30分、お昼には早いけれど、雲が晴れるのを待ちながらおにぎりを食べることにした。先に座っていた男性は2時間座っていたと言う。若い人と来て、彼は前掛山まで行ったので待っているそうだ。私たちより年配らしい男性は、自分は足が弱くなったので、行かせたけれど、風がとても強いので心配だと話しながらトーミの頭の方へ戻って行った。

余談だけれど、この人には車坂に降り着くあたりで出会った。若い人と話しながら元気に降りていった。


湯の平を見おろす

さて、私たちはおにぎりタイム。今年のミョウガがうまく漬かったので、おなじみのミョウガ味噌漬けおにぎり。今年の夏は日照りが続きミョウガは不作だった。9月に入って雨が続いたおかげで少し大きくなったが、例年より少ない収穫だった。

ミョウガを収穫して味噌に漬け、朝刻んで下ごしらえをするのは私。握るのは夫。協力して作る?特製おにぎりは最高。

眺めていても浅間山はなかなか顔を出さない。浅間山の山頂にかかった雲はそのまま東へ流れて行くのか、仙人岳からJバンドに続く崩れ痕はよく見える。こちらは黒っぽく溶岩の縞を浮かせて白い崖なので、白ゾレと言うそうだ。

山頂から仙人岳、Jバンド、遠く北軽井沢

100万年前から活動しているという東篭ノ登山、水ノ塔山の間の崖は火山ガスで変色して赤くなっているので赤ゾレ。今私たちが座っている黒斑山は10万年くらい前から2万5千年くらい前まで活動していた火山で、なんと2800mもの高さまで成長したらしい。その崩壊した痕跡が白ゾレの崖なのだそう。

浅間山は現在も噴煙を上げているし、小規模ながら時々噴火している。関東に住んでいた頃に噴火の音を聞いたこともある。立ち入り禁止を繰り返す目の前の雄大な景色を眺めながら、人間の小ささを実感する。

しばらく眺めていたけれど浅間山は顔を出さないので、降りることにした。おり始めて少ししたら突然ふっと雲が切れた。一瞬のお目見え。見ている間に再び雲に覆われる。

浅間山の山頂が一瞬見えた

前掛山への登山道を見おろしながらトーミの頭へ登り返す。帰りは中コースを行ってみよう。分岐を入るとすぐに深い森の空気に包まれる。太い倒木、えぐられた登山道、一面の苔、北八ヶ岳の登山道を歩いているような、表コースとは全く異なる景観だ。

緩やかにひたすら下って行くと、少しずつ森が明るくなってくる。カラマツの落ち葉が雪のようにハラハラ降ってくると、車坂峠はもうそこ。

↑ カラマツの黄葉とナナカマドの赤い実

峠のビジターセンターで、珍しいキャベツ味のソフトクリームと、美味しいコーヒーをゆっくりいただいて、しばらく山の余韻に浸った。


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