37 志賀山 2035m、裏志賀山 2037m(長野県)
   2013年8月22日(水曜日)

地図・志賀山周辺


志賀高原といえば、いくつものスキーコースが続く一大エリアだ。このエリアにはいくつものスキー場があるのだが、エリア内を走る道路沿いは自然のたたずまいを壊さない工夫があり、高層ビルの無粋な姿を見ることも無い。温泉やスキー場の宿泊施設はカラー統一され背景の自然とよく合っていて、ヨーロッパの古い町並みにも似た落ち着きのある空間を作っている。山ノ内町の有志が大切に守ってきたそうだ。

これまで北は奥志賀高原から、南は横手山まで、いくつものスキー場のゲレンデを滑ったが、登山は岩菅山に登ったきりだったので、長野に引っ越したらまず志賀高原の中枢である志賀山に登ろうと話していた。(その後、焼額山、東館山、竜王山、笠岳などに登っている:後記)


写真・前山湿原
前山湿原

5月に引っ越して来て、夏には仕事仲間や家族が新居見物に来てくれた。お盆が過ぎて一息ついたので、早速志賀山を目指すことにした。

長野冬季オリンピックの時に整備され、走りやすくなった志賀草津道路を行く。奥志賀高原への道を左に分け、熊の湯を過ぎて硯川に着く。バス停もある硯川からは、短いが前山リフトが運行していて、夏もハイカーが沢山利用するらしい。私たちも早速リフトに乗って前山に着く。前山の標高は1796m、ちょうど雲が切れて目の前に笠岳が大きく見えてきた。

写真・渋池
渋池


湿原にはイワショウブの白い花が咲き乱れていて、花穂が風に揺れる様はすずやかだ。私たちは笠岳に背を向け、湿原の中を奥へ進む。しばらく行くと浮き島のある渋池に着く。左にヒョウタン池に下る道が見えている。ヒョウタン池まで運動靴で歩いたのはもうずいぶん前だ。池のほとりにミズバショウが咲いていて嬉しかったのを覚えている。そんなことを思い出しながら、今回はまっすぐ進む。静かに広がる渋池のほとりを進み、針葉樹林のうっそうとした森の中をしばらく進むと志賀山への登山口と、四十八池に行く道との分岐点に着く。

写真・ひょうたん池
ひょうたん池 1995.6.11

写真・雪が残る道
雪が残る道 6月

ここまでの道は森の中の平坦な道、ここからはいよいよ登りになる。志賀山へは少し下って小さな流れを越えてから登りになる。苔むした岩や、倒木が重なっていて面白い。そして、岩の影に蛇を見つけた。茶色くて体長80㎝くらいだったが、私にもわかるアオダイショウ、シマヘビ、ヤマカガシ、マムシではなかった。ジムグリかなぁと思うけれど、確実とは言えない。子どもが小さい頃は毎年アオダイショウが玄関前に現れたり、息子がつかまえて来たりして、蛇はそれほど珍しいものではなかったが、最近はほとんど見なくなった。私は山歩きをするから、自然の中にいる時間が多い方だと思うが、それでも蛇に出会うことはずいぶん減った。

写真・苔むした木
苔むした木

写真・面白い岩
面白い岩

余談だが、小学校低学年だった息子は『この蛇飼いたい』と言って、だっこして来た。かなり大きなアオダイショウだったと記憶している。息子は蛇の頭を後ろから押さえ、ぐるりとうねる体を左手で抱えるようにしてだっこしていたので、私は驚いた。蛇の頭を後ろから押さえてぶら下げると、蛇は自分の体の重みで骨折してしまうこともあるという。息子は正しい抱え方をしていたのだ。ちなみに生餌をあげることも難しく、その蛇はまた山に返してあげた。


写真・蛇
蛇さん

写真・五葉松のポイント
五葉松のポイント

地図を見ると志賀山までは35分ほどとあるが、私たちは楽しい形の木を見ては立ち止まり、苔むした岩を見ては写真を撮りと、寄り道ばかりしていたので45分ほどかかって山頂に着いた。途中石作りのケルンがあって、山頂かと思ったが、『五葉松』のポイントだった。そこからはすぐ2035mの山頂。狭い山頂は木々の中にあって、見晴らしはあまり良くない。先に来ていた夫婦は、遠くから泊まりがけで来たと話していた。病気をして、快復記念に出かけてきたそうで、登れたことがとても嬉しいと、楽しそうに話す姿に私たちも元気をもらった。

写真・志賀山山頂
志賀山山頂

志賀山から一回下り、裏志賀山に登る。針葉樹林の中に志賀神社が祀られている。山頂の看板も無く、人もいない。2037mの裏志賀山が、志賀山よりわずかに高い。山頂からの展望は無いが、山頂のすぐ脇に見晴らしが良いところがあり、足元に大沼池が見おろせる。コバルトブルーの水が神秘的だ。見おろせるところに木製の壊れかけたベンチが置いてあるが、かなり深い森に囲まれているのであまりゆっくりしたくなる空間ではない。私たちは未練も無く山頂をあとにした。

写真・裏志賀山から大沼池
裏志賀山から見る大沼池

大きな岩がゴロゴロしている急な登山道を一気に下りる。花や木の実を楽しみながら下りて、平坦な登山道の終わりにつく。ここはもう四十八池湿原の渕にあたり、木道が敷いてある。そして志賀神社の鳥居が立っていた。


下る道からは魅力的な湿原の木道が見おろせたが、私たちは鳥居をくぐったあと、四十八池を右手に望みながら大沼池に向かう道に進んだ。

写真・赤い実
ゴゼンタチバナ(左)と
アカモノ(右)の実

湿原から大沼池まではかなり下り坂が続く。しばらく下ると木の枝越しに大沼池の水面が見えてくる。きれいなブルーの水面が見えてからもなかなか池には着かない。左奥に弁天堂を見送ってもう一息でようやく池のほとりに到着だ。立派なレイクハウスが建ち、広々とした池のほとりにはたくさん木のベンチが設置してあり、休憩するには気持ちよいところだ。

写真・シシウド(白) トリカブト(紫)
シシウド(白) トリカブト(紫)

写真・キツリフネ(黄) ヤナギラン(赤)
キツリフネ(黄) ヤナギラン(赤)

近くの草むらにはトリカブトの紫、ヤナギランの赤、シシウドの白・・・大形の花が色とりどりに咲き乱れている。キツリフネも沢山花をぶら下げている。花の中を歩いてから池のほとりにあるレイクハウスをのぞいてみた。志賀山、裏志賀山の山頂には人が少なかったが、大沼池のほとりには人の姿もチラホラ見え、レイクハウスに休んでいる人もいる。ここではネマガリダケの筍とサバの水煮缶を合わせた郷土食のみそ汁を売っていたので、いただくことにした。

私は初めての味だが、長野育ちの夫には懐かしい味。筍のエグミもなく、サバ臭くもなく、なかなか美味しいものだった。筍がたっぷり入っていて、贅沢な気分になった。

写真・タケノコ味噌汁
タケノコみそ汁、美味!


大沼池は志賀高原では最も大きな池で、透明度が高いそうだ。私たちが登った裏志賀山と反対の赤石沢から酸性度の強い水が流れ込むので、魚が住めないという。PH5というとかなり強い酸性だ。エメラルドグリーンの美しい水面だが、どことなく寂しい印象なのは生き物の息吹が無いからだろうか・・・。見る場所によって少しずつ色が変わる神秘的な池だ。

写真・大沼池から裏志賀山
大沼池から裏志賀山を見る

花々を楽しみ、池のほとりでしばらく遊んでから、帰路に着くことにした。大沼池からはこのまま進むと池尻を通って逆池から奥志賀方面への県道に出る道もあるが、私たちは来た道を戻る。


登り始めると、かなり下って来たことが分かる。池のほとりでゆっくり休んだので、元気に登り返し、四十八池湿原に着く。イワショウブの白い花がポチポチと咲いている。モウセンゴケの赤い葉がきれいだ。

写真・大沼池のほとり
大沼池のほとり

このような湿原は高層湿原と言われる。湿地に生えるミズゴケなどの枯れたものが長い年月のうちに積み重なって泥炭になった。この堆積物に生育するミズゴケなどが湿原の水位より高く盛り上がって成長するので、高層湿原という。泥炭の重なりで成り立っている湿原には土壌が無いので、植物が育つために必要な無機養分がとても乏しい。そのため、そのような環境に育つ特殊な植物だけがみられることになる。

写真・四十八池湿原のモウセンゴケ
赤いモウセンゴケ(四十八池)

一口に長い年月というが、それは人間の一生などというものとは異なる物差しで考えるような、気が遠くなるような時間だ。悠久の時間をかけて自然が作り出してくれたものを大切にしなくては・・・と、心深くうなずいた。

しかし、私は最近まで『高層湿原』とは標高の高いところにある湿原のことかと思っていたから、あまり大きなことは言えない。もちろんミズゴケが堆積して泥炭になって・・・長い時を経てできた湿原ということは知っていたのだけれど・・・。

写真・四十八池湿原
四十八池湿原


ワタスゲが風に揺らぐ中に敷かれた木道を、ゆっくりゆっくり歩く。通り過ぎてしまうのがもったいないような、水の中に沈む木の葉一枚一枚にあいさつしたいような・・・、この時間が宝物だと思える。


写真・苔がいっぱい
苔がいっぱい

四十八池からは、朝たどった志賀山への登山道分岐を過ぎ、前山まで平坦な道だ。針葉樹林の深い森の中には苔がみっしりと生えている。あまりフカフカして気持ち良さそうだったので、座って写真を撮ったら、水分がたっぷりでズボンが濡れてしまった。夫に笑われ「帰り道のハプニングだ」と苦笑い。


写真・下山路から笠岳
前山下山路からの笠岳

前山からはリフトに乗らず、歩いて下りる。冬にはゲレンデになる道を、大きく右に曲がり込むと、目の前に笠岳が現れた。西に傾いた日を浴びて美しい笠の三角を眺めながら、硯川の駐車場までゆっくり歩いた。





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