24 大峰山(おおみねやま) (長野県)828m
       四季:2013年5月〜2017年4月

地図・旭山


我が家のすぐ裏の地附山から峰続きに少し奥に行くと大峰山になる。地附山はいくつものコースが整備されているが、大峰山への道は自然のままという風情だ。もちろん登山路はしっかりしているが、落ち葉の堆積や倒木が道を覆っているところもあり、なかなか楽しい。

善光寺平から見上げると山頂に城の屋根が白く光を反射している。だが、これは1962年に長野市が建設した模擬天守閣。蝶の博物館として一時開業していたらしいが、今は中に入れない。大きな蝶の形の看板が木の陰に隠れて残っている。

写真・大峰山城蝶の看板
蝶の看板


写真・城山公園から見た大峰山
城山公園から見た大峰山
円内は善光寺から

私たちは引っ越してきてすぐ地附山を歩き、峰続きに登山路が開いているのを知って、次は大峰山にも足を伸ばしてみた。その後季節を変えて時々歩いている。地附山と合わせて歩くことも多いが、大峰山だけ登ってくることもある。


写真・天守閣の脇に残る雪
天守閣の脇に残る雪

春休みを利用して遊びに来た孫たちと登ったのは、2015年4月2日だったが、山頂にたっぷり残った雪を見つけて大喜び、ビニール袋につめて走って家に帰ったのは大笑いだけれど、思い出に残ることだろう。ほとんど水になったけれど、冷凍室に入れて嬉しそうだった。

写真・オオミスミソウ
オオミスミソウ

今年(2017年)は雪が多かったせいか、4月14日に訪ねた時にまだ山頂には雪が残っていた。そしてオオミスミソウが満開。とても嬉しい出会いだ。


長野から戸隠へ続くバードラインの七曲がりは大峰山の南から西を巻くように登っていくが、その途中の霊山寺の境内から墓地の真ん中を通らせてもらって、登山道は始まる。ある時、歴史好きの孫が川中島の合戦について調べていて、霊山寺に川中島合戦の首塚があることを知った。孫と一緒に訪ねたけれど、首塚の周りには一面に白いスミレが咲いていて、歴史に沈んだ武将たちの魂を慰めているようだった。

写真・高い崖の下の岩井堂観世音
高い崖の下の岩井堂観世音


霊山寺を抜けると、10分も歩かないうちに大きな岩の下に出る。20メートルほどはあろうかという垂直の岩壁の左下に穴が掘られ、岩井堂観世音が祀られている。

この岩場は登攀訓練の場としても知られているらしく、数人のグループが体にロープを巻いて練習しているところによく出会う。長野県警山岳救助隊隊員が訓練をしているところに出会ったこともある。

写真・謙信物見岩からの展望
謙信物見岩からの展望 Photo by Toi Yamaguchi


岩の右を巻いて登っていくとすぐ、霊山寺の上を通って善光寺雲上殿まで続く道(私たちはこの道をよく歩く)との分岐になり、左に進むと数分で謙信の物見岩だ。謙信がここから見おろしたと言うだけあってなかなかのビューポイントだ。物見岩は下から見あげても、木立の間に白く光っている。崖の途中に茂っているのは赤松が多いが、ネズミサシの木も多く、尖った葉に触るとなかなか痛い。

写真・ネズミサシ
ネズミサシ

物見岩からの眺めは気持ちよく、時間が無い時はここまで登って、のんびり眺めを楽しんで帰ってくることもある。


物見岩からしばらくは緩やかな谷沿いの道が続く。気持ち良い森で、初めて登った頃はアカマツの大木もたくさんあった。ところが松食い虫に荒らされて倒木が目立つようになり、大木がたくさん伐採された。私たちが登り初めてたった数年なのに、今では道のいたるところに虫を駆除する燻蒸のためビニールをかぶった松の山がある。

写真・松食い虫対策
松が・・・

松が倒れて森の空間が広がり、冬は枯れた茶色の中にソヨゴの緑の葉が目立つようになった。


しばらく歩くと、右に地附山への登山道を分け、沢が細くなったところで左へ渡り、今度は谷の反対斜面を登っていく。ここからはやや急な登りがジグザグに続く。

写真・松の倒木
倒木!

あれはいつだっただろうか、谷が細くなり対岸が迫ってきたところで、向こうに何か動くものが見えた。山道より下の傾斜が強いところ、「何っ?」と思うのと対岸の動きが一緒だった。ドドドッと一瞬にして走り去っていったのはイノシシの群れ。あまりに一瞬だったので、手に持っていたカメラを構える間もないことを残念に思ったのだが、後からじわ〜っと湧いてきたのは、「こっちに走ってこなくて良かった」という思い。あの勢いで走って来たら・・・とても怖い。

写真・ツチグリ、オトシブミ
ツチグリ  オトシブミ

写真・新緑の森:ホウノキを持って
森:ホウノキの葉を持って

イノシシに遭遇したのは一回きり。いつもは鳥のさえずりが気持ちよいところだ。この辺りで下を見ると、ツチグリが転がっていることが多い。キノコの仲間なのにヒトデのような面白い形だ。落ちていると言えば、オトシブミもよく見る。春の山は生き物たちが命の喜びを謳歌しているよう。大峰山に咲くたくさんの花を、虫たちだけではなく私たちも楽しむ。写真を撮っては歩き、しゃがんではまた撮影するといった風にのんびりと歩いて行く。(新緑の森:写真2015.5.12)

写真・イカリソウ、フデリンドウ
イカリソウ(赤)フデリンドウ(青)

初めて登った2013年には赤いイカリソウが何株もあったが、その後減って、昨年辺りからここでは見つけることが出来ない。森のあちこちにショウジョウバカマが見られ、こちらは今でも春一番に森に彩りを添えている。そして晴れている日には、足元に目を止めると小さな、小さなフデリンドウが宝石のように輝いている。


ここまで来れば、ひと登りで山頂だ。オオミスミソウ、エンレイソウ、トキワイカリソウなどがそれぞれの季節に迎えてくれる。昨年(2016年)4月8日に登った時エンレイソウがたくさん芽を出していた。まだ葉を開ききらない姿はかわいいが、花も見たくて15日に再び登った。光を浴びてたくさんの花が開いていた。エンレイソウの花は決して派手ではないが、柔らかな大きな葉の若草色は茶枯れた早春の山肌を活気づけている。

写真・トキワイカリソウ、ショウジョウバカマ、エンレイソウ
上:トキワイカリソウ
下:ショウジョウバカマ エンレイソウ


最後の急坂を登ると木の向こうに城が現れる。初めて登った時(2013年)は、目の前に現れた城にびっくり。毎日のように善光寺辺りから見上げていたが、下から見た時には城が見えず、私はそこに城があると思っていなかった。私が近眼だということもあるかも知れないが、最近は善光寺さんから見上げて屋根の形を見ることができるから、近眼だけのせいではないようだ。当時はもっと松が茂っていたのだろうか。上杉、武田など戦国時代の武士とはイメージが違う天守閣は、赤い欄干が不似合いで、遊園地の休憩所のような感じだ。

写真・天守閣
大峰城    城の横    4月孫と

天守閣の裏に回ると、ダンコウバイなどの木の茂みの下に三角点がある。天守閣が無ければ見晴らしが良かったのだろうか。今は隠れんぼをしているようにひっそりと茂みの下にあり、見晴らしは何もない。

三角点のある頂の後ろ側は深く削られているが、これは昔の堀の跡だそうだ。さらに北に向かって何層かの堀の跡が見られるらしいが、私たちはそこまで足を伸ばしていない。

写真・三角点
城の裏の三角点

写真・トチノキ
トチノキ

山頂の天守閣の周りは開けていて、桜やシャクナゲの大木があり、4月下旬から5月にはヤマツツジも合わせて花の響宴になる。

どうやらここには車でも来ることができるようだ。一段下には駐車場があり、トイレや四阿もある。天守閣が蝶の博物館だった頃は賑わったのだろうか、今はいつ登ってもあまり人に会うこともない。草の勢いがよく、兵どもの夢の跡という言葉がぴったりだが、さてこの兵とは? 博物館を建てた人はどんな未来像を見たのだろうか?


写真・ニシキウツギ、オオツクバネウツギ
ニシキウツギ? オオツクバネウツギ

一角に大きなトチノキがあり、花の頃に来るとツンツンと空に向かって白い花穂がいくつも立っていて立派だ。森の中には様々な花が姿を見せてくれているが、木の花の名前はまだまだ分からないものだらけ。「きれいだ」と言っては写真を撮ってきて、図鑑のページをめくりながら頭を悩ましている。春の大峰山は、花の宝庫なのだ。

写真・ヒメハギ
ヒメハギ


夏に訪ねたときには彩り豊かな春の花は終わっていたが、面白い植物を発見した。ギンリョウソウや、ミヤマウズラ。ギンリョウソウは葉緑素を持たないのだが、植物の仲間なのだ。雪の多い湿った東北の山などでは群れになってたくさんのギンリョウソウが首を伸ばしているのを見ることができる。長野は乾燥しやすい気候で、雪もあまりたくさん積もらないから、ここでギンリョウソウを見つけたときはちょっと意外だった。別名幽霊草と言うだけあって、透明がかった白一色の、頭を下げた姿はちょっと不気味かも知れない。でも、ギンリョウソウは中をのぞくときれいな紫色で、貴婦人のようだと私は密かに思っている。枯れていくときは黒く濁っていくので、あまり見たくないけれど・・・。

写真・ギンリョウソウや、ミヤマウズラ
ギンリョウソウ  ミヤマウズラ


長野は涼しいといっても、さすがに真夏は暑い。標高の低い山は暑いし、虫が多いし、つい敬遠してしまう。でも長野では9月になればもう秋の気配が感じられる。


春には様々な花が森に彩りを添えたが、秋にはたくさんのキノコが顔を出す。小さな物から手のひらほどの大きさのものまで、実に様々な姿をしている。毒キノコにあたるのはいやだから採ってこようとは思わないが、せめてよく見るキノコの名前くらいは調べてみようかと図鑑を買ってみたのだが・・・。これがちっともわからない。ホコリタケやタマシロオニタケなどは特徴があるのでわかりやすいけれど、茶色の傘のキノコは区別がつかない。

写真・5月、9月の森
5月の森  9月の森

写真・秋の楽しみ

三浦半島の山を歩いていたときはシイタケやムラサキシメジ、キクラゲなどを採ってきて夕餉の楽しみにしたこともあるのだが、長野の里山にはあまりにたくさんの似たような茸があるので、よく分かっていたつもりのそれらすら自信がなくなってしまう。大峰山でも両手両足の指でも足りないくらいの種類のキノコを見る。

だから、今は見て楽しむことに徹している。


9月の末頃(写真2013.9.28)にはヤマナシの実が落ちていることもあり、こっちはかじってみて梨の香味を感じたりする。トチの実も落ちているが、数個拾っても栃餅にはならないので、これも見て楽しむだけ。


写真・黄葉の森
黄葉の森

この頃は山の恵みはいっぱいだが、黄葉にはまだ早い。11月になって寒さの準備を始める頃、大峰山は黄色に染まってくる。(黄葉の写真2016.11.4)

そしてまた、物みな眠る冬がやって来る。


写真・松の切り株、中は空洞
切り株の中は空洞

これまでは登った道を引き返して、時には地附山に回ったりして下山したのだが、今年4月初めて山頂から歌が丘に下りてみた。山頂直下は急な下りだが、その後は歩きやすい道が続いている。こちらも松くい虫の被害は大きく、大木が倒れたり、伐採されたりしていた。夫は芯が空洞になってしまった松の切り株をのぞき込んでいたが、そんな切り株がたくさんあって被害の大きさを感じさせられた。

それでもこのコースはいたるところにシュンランが咲いていて、他のコースではまだ蕾もあったのに、満開、満開。地味なシュンランだが、落ち葉に隠れるように咲いている姿はどこか高貴な雰囲気をまとっている。

写真・シュンラン
シュンラン

シュンランを見ると盗掘の被害について思わずにいられない。自然の中で豊かだった植物(動物も)が人間の目先の楽しみだけのために絶滅に向かう姿を、毅然と立って、突きつけてくるような気がするのだ。



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