23 旭山(あさひやま) 785m(長野県)
       2017年4月5日(水曜日)

地図・旭山


4月になってようやく山を歩こうかという気分になった。この冬は雪がいつまでも去らず、だらだらと舞い落ちてくる陽気だった。私は昨年3月に右膝の靭帯を痛めてから治りきらず、これは上手に付き合えということだなと諦めている。それでもこの冬は雪の積もった裏山を歩こうと意欲だけは子どものように旺盛だった。

ところが、正月辺りから夫の体調が芳しくなく、山もスキーもなしの、十数年ぶりの閉じこもった冬になってしまった。体調が今ひとつと言っても寝込むほどでもなく、鼻が・・・背中が・・・と、あちこちが不機嫌になるらしい。それは気の病とハッパをかける私の言葉がまた重荷になったかもしれない。

4月の声を聞いて日の暖かさが感じられると体も軽くなるようで、1日、2日と裏の地附山に登ったり麓をバードウォッチングしたりして、足慣らしをした。


写真・旭山
城山公園からの旭山

5日、夫は朝から「どこかへ行こう」と言う。まだ近くの山は花も咲いていないし、ちょっと高い山は雪が残っているし・・・。夫は「旭山かな」と決めたようで、行こうと積極的だ。

長野市内からぐるりと見回すと一番近くを取り囲む山々の一つとなる旭山は、県庁の西に尖った三角形の山頂が見えて目立つ。山腹には崩れ落ちた崖が茶色く縦に筋を描き、峻険な姿に見える。ところが北の葛山などから見ると、後ろに長い尾根を引いていて違う山のような印象になる。


かつてはいくつかのルートがあったが、荒廃して危険なため立ち入り禁止となっていて、山腹の朝日山観音からの短縮コースのみ入山できる。

私たちは山靴と飲み物を持って、車で観音堂に向かった。細い曲がりくねった道だが、かなり上の方まで集落が続いている。曲がり角などには『朝日山観音堂→』の看板が出ていて分かりやすい。途中に車を停める場所があれば、ゆっくりおしゃべりを楽しみながら歩いて登りたい林道だ。

写真・朝日山観音
朝日山観音にお参りして・・・

観音堂には5、6台の駐車場があり、停めるのは私たちだけ。観音様に「車を停めさせて頂きます」とあいさつして、歩き始める。

林道を少し行くと右に分かれる。大きな看板があって広い道だ。周囲にはリンゴ畑が広がる。かなり急傾斜だから、農家の人の苦労がしのばれる。荒れ地になってしまっている所もある。この辺りの斜面には一面にオオイヌノフグリが開いていて、遠くから見ると地面が青い。久しぶりの陽光に大喜びしているのは、私たちだけではないようだ。所々に赤いヒメオドリコソウが色を添えている。


写真・一面のオオイヌノフグリ
オオイヌノフグリ ピンクはヒメオドリコソウ

ほんの一足で、右に山道が入っていく。昨年の落ち葉が積もって、ふかふかしている道をゆっくり登っていく。南斜面は暖かい日の光に溢れていたが、森の中はまだ冬のなごりを残している。


ドングリが一面に落ちこぼれて、大地に根を伸ばしている。昨年は豊作だったらしい。この中の幾本が大きく育っていくのだろう。松ぼっくりもたくさん落ちていて、動物たちの食事となったらしいエビのしっぽも見られる。

写真・エビのしっぽ
エビのしっぽ(動物が食べた痕)

山と言うよりは丘陵に近い森の中、私たちはあっちに目をやり、こっちの花を撮影しと、のんびり進んでいく。残念ながら今日は遠くが霞んでいて、山の遠望は楽しめない。足元のシュンランの蕾を見つけたり、スミレの蕾を見つけたり、だんだん暖かくなってきたのを喜ぶ昆虫や蝶を目で追いかけたりしながら、あっという間に山頂に着いた。


写真・山頂

旭山の山頂は長野盆地を見おろすにちょうど良い立地で、山城として活用されて来た所らしい。大きな看板が立っていて、説明が書いてある。戦国時代武田方の居城だったそうだ。すぐ隣の葛山が上杉の城だったことを思うと、なんと入り乱れて戦っていたのだろう。ここは上杉方によっていったん破壊された後、謙信によって再興されたとある。

山名は旭山なのに、麓の観音は朝日観音と呼ぶのはなぜだろうと思っていたが、古くは朝日山と呼ばれたと書いてあったので納得。


写真・山頂2
山城だった広い山頂

城だっただけに山頂は広い。ぐるりと回って木立の間から周囲を見回す。まだ雪をいただいた白馬岳方面もわずかに見える。大きいのは飯縄山、戸隠連峰、その奥に真っ白な美しい三角形の高妻山。

 山頂の中央にある石で描かれた円は何だろう。砦の中心部だったのだろうか。植え込まれたらしき水仙が青々とした葉を伸ばし、黄色い蕾が今にもパッと開きそうに膨らんでいる。カンゾウの新芽も南側一面に首を伸ばし若草色に日を反射している。まだまだちょこんと三角に顔を出した芽も多い。


他のルートへの下山口には大きく立ち入り禁止のテープが貼ってある。私たちは東の展望台の方へ足を伸ばし、霞んでいる長野市を見おろした。善光寺の奥、木の枝が重なり合っている向こうに我が家が見える。すぐ目の下には裾花川が緩く蛇行しながら流れていく。あまりに近過ぎて一部しか見えないが、山裾をぐるりと回るように流れる川だ。

盆地の向こうの菅平も、淡く空に溶けているが、根子岳の斜面に残る雪面は鏡のようにキラキラ光っている。

写真・シータテハ
シータテハ


太陽が高くなるに連れて気温も上がってきた。茶色い羽の蛾のような昆虫がひらひらと舞っている。日当りの良い所では羽を休めるようにゆっくり止まっている。蛾だろうと思っていたが、家に帰って調べたら、シータテハという蝶だった。成虫で冬を越すのだそうで、早春の山に見られるのだとか。このか細い体で冬をどうやって過ごすのだろう・・・。

写真・ダンコウバイ
ダンコウバイ

旭山を作る、白っぽい流紋岩質の凝灰岩がゴロゴロしているところで遊びながら、下りていく。ここは火山性の山なのだ。そう言えば、裾花川のほとりから見上げると、真っ白い絶壁が立ちはだかっている。鷹も住むのだそうだが、見たことは無い。

登りにはまだ開いていなかったダンコウバイが日の光を浴びてどんどん開いているようだ。道の両側の森を柔らかく黄色に染めている枝を楽しみながら山を下りた。



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