170 セツブンソウ自生地と鷲尾山 520m(長野県)

2021年3月16日(火)


photo セツブンソウ群生
セツブンソウ群生

長野県の北部にセツブンソウの自生地が二つある。ここは長野県に自生するセツブンソウの北限になるそうだ。戸倉の自生地には何回か訪れてみたが、杉山の山麓、倉科のセツブンソウ自生地に初めて出かけた。インターネットで過去の記録を見て、もう少し遅い時期かと予想していたが、すでに咲いているという情報を聞き、急いで行ってみることにした。初めての道は、特に山道は情報がないと不安になる。いざというときは下に車を置いて歩いていけばいいよと言うものの、その里の方が車を置く場所が見つからないことも多い。

map 千曲市倉科

photo 蓋がついてる柱
蓋がついてる

幸い、緩やかにカーブしていく道はセツブンソウ自生地まで続き、その先少し登ったところにUターンできる広さもあった。車を林道脇に置いて、自生地を目指す。森のカラマツは無造作に切られ森の中に転がっている。入り口には土地の人が守ってきた自生地についての説明看板が立ててあった。階段を少し登ると、写真で見た大きなセツブンソウの絵が彫られた柱が立っていた。「これだ」と近づいて喜ぶ。雨よけの蓋もついている。柱は見た。さて、本物は。

photo 切り倒した丸太の間に群生
切り倒した丸太の間に群生

あたりが真っ白になる程、満開。でも時間が早いせいなのか、誰もいない。私たちはゆっくり花を見ながら斜面を登っていった。切り倒された幹がゴロゴロ転がっているのがなんとも興醒めだが、人間がこまめに植え整えた公園と違う自然の雰囲気はある、確かに。

photo 満開のセツブンソウ
満開のセツブンソウ

セツブンソウはキンポウゲ科の球根植物、石灰質を好む日本特産種の花。春一番に透き通るような白い花弁(本当は萼)を開く儚げな姿が人気で、盗掘にあったり、開発で自生する環境が破壊されたりして、今は絶滅危惧種に指定されている。発芽してから5年くらいかけて花が開くようになるというから、セツブンソウにとって好もしい環境が5年は継続しないと、絶えてしまうのだ。


photo セツブンソウ
セツブンソウ

photo セツブンソウ 花の構造
セツブンソウ 花の構造

花を見ながら、思ったより急な斜面を登っていくと林道に出た。あれ、少し下ったカーブのところにどこかで見た車が・・・「なんだ、こっちからくればすぐだったね」。「でも初めてだからね」。笑いながらさらに上まで林道を歩いてみた。囲ってない斜面にもセツブンソウが開いている。アズマイチゲはまだ俯いているが、ネコノメソウも、蕗の薹も春の花たちが落ち葉の下から顔を出している。

photo 春の花,イチヤクソウは鷲尾山,ネコノメソウ,アズマイチゲ,フキ)
春の花(イチヤクソウは鷲尾山で)

photo セツブンソウ,満開、斜面が真っ白
満開、斜面が真っ白

photo 八重咲き・倉科セツブンソウ自生地で
倉科セツブンソウ自生地で

しばらく歩いて戻ることにした。この後、近くの鷲尾山に登ってみようということになったから。夫は車を下の入り口前に動かし、私は再び急斜面を降りながらセツブンソウを見ることにした。ゆっくり歩いていたら、八重咲きの花を見つけた。戸倉でも見つけたが、ここ倉科にも咲いていた。

入り口に出ると車が一台やってきた。慣れた感じで路肩に停めると、男性が大きなカメラを持って降りてくる。「もう(花は)終わりですか」と聞かれ「いえ、満開ですよ」と応えると、嬉しそうに中に入っていった。


photo 倉科の里から鷲尾山(角内は杏)
倉科の里から鷲尾山(角内は杏)

photo 登山口は大日堂園地
登山口は大日堂園地

私たちは道を戻り、倉科の里と書いてある大きな岩がある駐車場に車を停めた。家を出たのが8時半、セツブンソウを見てここに着いたのが10時20分。近いと言えるだろう。駐車場に植えられたアンズの蕾はもう赤い。今年も開花は早そうだ。

photo 大日堂から右奥の山道へ
大日堂から右奥の山道へ

5分ほど歩いたところにある大日堂園地が登山口。歌碑や立派な看板があるのでわかりやすい。ここから急勾配を登っていく。こんもりした木々の上に大日堂が見えてくる。行ってきますと挨拶して、横の登山道に入る。動物よけの柵を越えて登り始めると、すぐかなりの急坂になる。カシワの木が多い。木に残っている茶色の葉も目立つけれど、足元に積み重なった葉も大きくて光っている。一冬越えたのにこのパリパリ感はすごい。ただ、滑りやすいので要注意。しばらく登ると、大善寺跡という広いところに出た。あんずの里の方に見晴らしが開け、ベンチも置いてある。近くの人が展望を楽しみに登るのだろうか。

photo カシワの葉と実
カシワの葉と実

カシワの木は大きな茶枯れた葉をつけているが、一方で青々とした葉を茂らせている林があった。シラカシだそう。なかなか見分けがつかない。教えられればそうですかというものの、また別の森で会って見分けがつくかどうか・・・。

photo 大善寺跡で
大善寺跡で

それにしても急坂だ。侍たちはこんな急坂を駆け上ったのだろうか。この奥の鞍骨城跡(※)もとても急だったことを思い出した。所々にロープが備えてあって、滑りそうなときは掴まれば安心だ。今日は晴れているからいいけれど、雨になったら滑るだろうねと話しながら気をつけて登る。  (※46 斎場山、天城山、鞍骨山

photo シラカシの森を登る
シラカシの森を登る

いくつかのロープ場を過ぎて、上の方に石垣が見えてきた。あそこだ。ヨイショと一登りで山頂、鷲尾城跡に到着。広い。ここは中世(15〜16世紀)に建設されたという山城。平たい石を重ねたように見える石垣の外壁は4メートルほどの高さがあるそうで、この板状の石の積み方は小口積みというそうだ。東側には高さ3メートルの土塁が築かれている。南から西にかけて広く平坦面がおかれている。こんなふうに高い石垣で本郭を築くという、近世城郭のような山城は他に例がないのだそうだ。由来はあまり詳しく知らされていないけれど、倉科氏によって築かれたと伝えられているという。

photo ロープも使って
ロープも使って

photo 山頂の石垣
山頂の石垣

photo 鷲尾城跡 520m
鷲尾城跡 520m

photo ヒオドシチョウと
ヒオドシチョウと


薄い雲が覆っているけれど、風がないので暖かい。土類の傍に転がっている大きな石に腰を下ろし、おやつタイムとする。のんびり座っていると小鳥がたくさんやってきた。シジュウカラ、ヤマガラ、エナガ、ここでもお馴染みの鳥たちが多い。鳥を眺めていたら夫が「ここにも・・・」と呼ぶ。夫の手の甲にハエみたいな虫が止まっているではないか。「イエバエより大きいけど、これもハエかね」「汗を吸いにきたのかな」二人で見つめていたら、スッと飛び立ったが、また同じ場所に着地。ハエが手をすり足を擦り・・・じゃなくて口を動かしているね。などと見つめ過ぎたか、今度は飛び去ってしまった。オレンジ色の蝶も追いかけっこをしている。成虫で冬を越すというヒオドシチョウだ。

photo 土塁の前でおやつ、後方将軍塚古墳
土塁の前でおやつ、後方将軍塚古墳

周囲には木が育っているので、見晴らしはあまり良くない。葉を落としている今だから、かろうじて下の里や、目の前の有明山、冠着山などが見えている。遠くは飯縄山、戸隠山が雪をかぶっている。時々、下から新幹線の音が響いてくると、鉄ちゃんの夫はすぐ「お!」と、耳を澄ます。登る途中からも見えたけれど、カメラを構えるには木の枝が邪魔になる。


photo 粘菌のさまざまな姿
粘菌のさまざまな姿

photo カシワの森の急斜面を降る
カシワの森の急斜面を降る

鳥や昆虫と遊びながらしばらく優雅な山頂を二人じめし、さてそろそろ帰ろうか。滑らないように気をつけていこう。カシワの葉っぱの下に隠れている小石や、枝や、木の実に気をつけて所々ロープにも掴まらせてもらって。 登る時にも見つけたが、枯れ木に粘菌がくっついている。その姿は一様ではないし、ちょっと不気味な模様に見える。一見キノコのようなものもあれば、ブツブツとカビやコケのようなものもある。まだまだ絶対と言えるほど見分けに自信はないが、それでもずいぶんいろいろ見てきたから、その独特な面白い形を見つけられるようになってきた。


無事駐車場に戻り、車に乗って走り出そうとしたら、フロントガラスにポツリポツリと雨粒が当たった。びっくり。「よかったね。降る前に降りてきて」と、話しながら帰途についた。



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