116 両手を伸ばして大休憩 村上山 1746m(群馬県)

2020年5月28日(木)


この情報時代にいったい何年前の本を拠り所にしていたのだろう。私のことだ。我ながら呆れる。


浅間北麓に独立峰のように立つ、村上山の山頂付近に小さな湿原があるという紹介を読んで、いつか行ってみたいと思っていた。カラマツ林の中を1時間ちょっと登れば良いというアクセスも魅力的だ。ただ、長野からは山を越えていかなければならない。何回か、「行こうか」と言っては躊躇してきた。

カラマツの新緑が美しい季節になったので、ついに湿原に会いに出かけることにした。村上山という人の名のような山、どうしてこんな名前なのだろうと夫と話していたが、戦国時代に武田軍の狼煙台だったこの山の、指揮官が村上氏だったからという説明に納得。やっぱり村上さんの山だったんだ。


台風でえぐれた河岸

台風被害復旧工事中

家を出たのは朝の6時半を回った頃。須坂市からぐんぐん山道を登り、菅平高原を目指す。魅力的な根子岳、四阿山を通り越して、今度はぐんぐん降る。ダム湖の菅平湖を過ぎると再び登り、鳥居峠を目指す。峠を越えると群馬県だ。私たちは田代湖の手前で右に折れ、地蔵峠に向かうのだが、直進は通行止めとなっていた。右折してからの道も道路が崩れ、何か所も工事中だった。昨年10月の台風で崩れたらしい。崖が崩れてきて道路に覆いかぶさっていたり、川に削られて1車線なくなったりしている。豪雨の勢いを目の当たりにする思いだ。

村上山

しばらく進むと休暇村嬬恋鹿沢はすぐ。広い駐車場に車を停める。日帰り入浴は可能との案内があり、駐車場には車が何台も停まっていた。目の前に村上山が緑濃い姿で立っている。斜面の下の方は耕され、『野草園』の看板が立ててある。まだ茶枯れているが、小川が流れ、散歩道が上の方まで続いているので、帰りに寄ってみようと話しながら靴を履き替えた。


カラマツと笹

休暇村の大きな建物の左奥に階段があり、そこを登ると登山口。手入れの行き届いた広い道を行くと、カラマツの林に入っていく。一面にカラマツ落ち葉が敷かれた山道は足に優しい。残念ながら森の斜面は笹に覆われてしまっている。だが、登山道には小さなイチゲの葉っぱがたくさん、緑の実を一個ずつつけている。「これヒメイチゲじゃない」と大きな声で言う私に、「あなたがわからないものは、僕にはわかりません」とニヤニヤしながら言う夫。「残念、花が見たかったなぁ」「上に行けば咲いているんじゃない」「実が大きくなっているからもう遅いよ」。話しながら登っていく。やはりヒメイチゲの花には会えなかった。

村上山のカラマツの森は国有林で、『列状間伐モデル林』と言うのだそうだ。計画的に伐採をして下層植生が発達するようにしているんだって。確かに一部、ムシカリ、ナナカマドなど他の木の枝の広がりを見たけれど、この一面の笹はなんとかならないのだろうか。

スミレ

カラマツの落ち葉が絨毯のように厚く積もっている道を、私たちは時間をかけて登っていった。スミレが目を楽しませてくれる。日本には60種類もあって、変種が10種類もあるとかいう、スミレの特定は難しい。タチツボスミレの仲間にはムラカミタチツボスミレというものもあるそうだから、ぴったりだけれど・・・。ムラカミは新潟県村上市に因んだ名だそうで、距(花の後ろに飛び出している部分)が紫なんだって。村上山にたくさん咲いている薄紫のスミレは距の部分は白っぽくて、やはりタチツボスミレかな。

花と蝶

踏みそうになるほど葉を出しているマイズルソウは、まだかたい蕾だった。ツバメオモトの純白の花、タケシマランのとんがった花を見つけて歩くうちにイワカガミの葉が多くなってきた。森の姿も変わり、カラマツの間にダケカンバやシラカバが増えてきた。小さな若葉は光を跳ね返して輝いている。

浅間山

大きなダケカンバ

急に視界が開けて、目の前に大きな浅間山。雄大な浅間山の姿を見ると元気が出る。再び森の道を登ると、木造の四阿が見えてきた。そしてその前に小さな看板があった。緩やかな起伏の広がりは、まばらな木々と一面の笹原、湿原が乾いてしまったのは、もう7、8年前のこと。調べればもちろんわかったのだろうけれど、古い本(2001年刊)を頼りにやってきた。自分の目で今の状態を見たいという気持ちもどこかにあったと思う。ここがかつて湿原だったとは全くわからない姿に驚いた。もう少し名残があるものかと思っていたのだが・・・。

湿原の跡


さて、山頂はすぐそこ。一歩先に行った夫が「お〜っ」と喜びの声をあげる。北東の斜面が一気に落ちているので、大パノラマが広がっている。目の前に大きな四阿山、昨年登った土鍋山、横手山、本白根山と上信越の峰々が続き、浅間隠山、鼻曲山、大きな浅間山、黒斑山とずらりと山が並んでいる。四阿山の左奥には小さいけれど真っ白な火打山、焼山まで見える。しばらくは座るのも忘れて、あっちを見たりこっちを見たり展望を楽しんでいた。

村上山山頂(三角点)

ようやく少し落ち着いて、腰を下ろし、早いおにぎりタイムとすることにした。風もない今日の山頂は、ほかほかと爽やかな空気に包まれている。絶え間なく鳥の声が聞こえ、蝶が追いかけっこをしている。

photo:山頂からの大展望
村上山山頂からの展望・クリックで拡大

山頂でおにぎり

それから1時間近く、私たちは山頂の時間を楽しんだ。空気はどんどん澄んでいくようで、いつまでもいたい感じだ。ふと見ると、四阿山の上空に刷毛で払ったような筋雲が、空をキャンバスにゆうゆうと広がっている。なんと大きな世界だろう。思わず両手を広げて、自分も大きくなりたくなってしまうではないか。おーい雲よ、おーい空よ!

おーい雲よ



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