106 道なき道をいく 大峯山 841m(長野県)   

2020年3月23日(月)

map:大峯山


朝の用を済ませて空を見ると、青空が広がってきた。車で45分ほどのところにある森の杏(千曲市森にある『あんずの里』)を見に行こうかと夫が言う。『あんずの里』の奥にはいく筋かの沢があって、滝が見られると聞いているから、そのあたりを散策してこようというのだ。林道は冬の閉鎖がまだ解けていないかもしれないし、杏はまだ咲いていないかもしれないけれど、気持ち良い里の道を歩くだけでもいいと言う。確かに面白そうだねと言いながら、山好きな私は、「大峯山に登るのもいいんじゃない」と口走る。

あんずの里を見下ろす

あんずの里の奥には鏡台山や五里ヶ峯などの奥深い山が連なり、その尾根の端にある山の一つが大峯山。地図で見ると麓からすぐ。尾根にとりついて最初の頂き、標高841.4m、ちょっと裏山へという感覚で行ってこようと考えたのだ。これが大きな誤算だったことは行ってみて初めてわかること。


家を出たのは10時になろうという時刻、道路渋滞は終わっているので、国道18号線をいくことにした。出勤などの時間帯によっては混雑するが、この時間ならそれほど混まないだろうという予想通り、森までは早かった。道路地図を見ながら、さらに先へ進み、倉科地区の入り口を右折、もう咲き出した杏の並木道を進んで観龍寺の下に到着。ここまではわかりやすい道だった。駐車場には車はなく、我が家の愛車だけ。咲き始めた杏の大木の下で靴を履き替え、観龍寺を目指して緩やかに登る。

観龍寺

観龍寺は信濃三十三観音霊場第六番札所なのだそうだが、現在は無住職らしい。多くの人に踏まれてきた石の階段を登ると、そこは別世界だった。小さな藁葺き屋根のお堂が静かに立っているが、その屋根は今にも崩れてきそうだ。奥まったところに建っていたため、戦火から逃れられたと書いてあるが、このままでは自然の威力で朽ちてしまうのではないか。境内には白人らしい外国の男女が二人。このお堂を見上げていた。


四阿はあったけれど

さて、お参りをしていよいよ山登り。長野の里山を紹介した本を頼りに寺の裏の道を行く。しばらく歩くと案内板があり、その後ろには四阿が見えるが、伸びてきた潅木で道は隠れている。ここは夕日山。ここから林道らしき道をゆるく登っていく。車の轍の跡は残っているが、一面に潅木が生え、私たちの背丈ほどにもなっている。ススキの枯れた株もあり、今この季節だから良いけれど、草木が勢いづいてくると、歩くのが困難になりそうな道だ。

少し歩くと林道夕日山線にぶつかる。この林道も真ん中に潅木が生えていて、車でも通るのは大変そうだ。私たちは林道を横切りアカマツの急斜面にとりつく。落ち葉が積もって足が埋もれるくらいだ。オレンジ色の蝶がたくさん舞っている。ヒオドシチョウ、そしてテングチョウ、どちらも山道で見かけることが多い蝶だ。足元には綺麗な黄緑色のウスタビガの繭もたくさん転がっている。もうお役目を果たしたのだろう。

森で出会った様々な形

面白いものいっぱい

北アルプスを眺める

道は急勾配で周りの木につかまりながら登る。落葉樹の大木が増え、森は混淆林になる。踏み跡はほとんどない。どこが道なのかわからないが、まっすぐ急斜面なのでただひたすら上に向かって足を運ぶ。忘れた頃に木の幹にピンクのリボンが結えられているのを発見するから、多分大丈夫だろう。喘ぎながら登っていくと送電線の鉄塔に着く。この周囲がかなりの藪で、通り抜ける隙間もないという有様。トゲの多いノイバラやキイチゴにぶつかるとえらい目に合う。潅木をかき分けて鉄塔にたどり着く。滑り落ちるような急斜面と藪をかき分けてたどり着いたそこは見晴らしが良い。座って北アルプスや、戸隠の山を眺めながらクラッカーをかじる、小休憩。

有明山(手前左)と森の町

木につかまりながら登る

鉄塔から少し登るとさらに眺望は広がり森の町が見下ろせる。先日孫と登った有明山(※)もすぐそこ。しばらく眺望を楽しんだ後はまた樹林帯に入る。油断するとズルッと滑る、急傾斜。雨の時には川になりそうな深い筋が一本真っ直ぐに続いているが、ここは昔の人の歩いた跡だろうか。今は倒木と枯れ葉に埋もれている。 アカマツの幹や、ヤマツツジらしい低木の幹につかまりながらよじ登り、ようやく細い踏み跡らしき道に合流した。左は県山城跡に続き、右へわずかに登るとすぐ山頂。

(※山歩き・花の旅103孫と歩いた冬の森 有明山)

このわずかな登りは緩やかで、ホコリタケの乾燥したのがあったので写真をとった。私がしゃがんで写真を撮っていると、バサっと大きな音と「うおっ」という夫の大きな声。一瞬熊か?と思ったけれど、それにしては危機感を感じない。聞いたら大きな鳥がすぐ近くから飛び立ったという。キジかヤマドリか、あっという間だったのでわからないという。

山頂は森の中

ついに山頂に立つ。ここには『大峰山』と書かれた消えかけた文字の看板があったが、国土地理院の地図や、里山紹介には『大峯山』とあるので、そちらを使わせてもらおう。山頂は森の中なので見晴らしはない。けれど木の間を縫うようにくる風が強い。三角点にタッチし、記念撮影をする間にも冷たい風が強く吹き抜け、汗をかいた夫は大急ぎで濡れたシャツを着替えるが、長居は無用。

道はどこかな

下りは夕日山林道コースがわかりやすいと案内にあったので、そちらを行くことにする。ところが、間違いようのない尾根という文字に惑わされ、尾根をまっすぐ鏡台山登山口まで進んでしまった。ここはとてもゆったりとした気持ち良い道だったので、時間がある時に歩けば楽しそうだが、下り道ではない。

藪をかき分け道探し

引き返して地図を見直し、ソヨゴの森を通り抜けアカマツの急斜面に踏み込む。またもや踏み跡もない斜面だ。そして目の下が見えないほどの急斜面。時にはお尻滑りに近い姿勢で、ひたすら木の枝や幹を頼りにズリズリ滑り落ちていく。確かに狭い尾根だった。ようやく鉄塔にたどり着いたが、ここがまたすごい藪。ぐるりと藪をかき分けて道を探すが踏み跡はない。だが、アカマツの狭い尾根をまっすぐ降りれば林道に行き着くだろうと、再びずり落ち作戦。こうなればもう楽しむしかない。滑るように落ちながら二人きりの森を満喫。

林道見つけた

ついに林道に到着。登山口には看板があると書いてあったけれど、何も見つからない。崖を斜めに細い道がついているだけ。登りにこっちの道を選んだら、見落としてしまったかもしれないねと話す。

道を探したり、間違って尾根道を往復したり、ルートファインディングの面白さを味わうことができたが、滝を見に行くのはまた今度。せめて乾杯のスパークリングワインをと、帰り道で購入してから、家に向かった。



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